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05話「職業判明」

「はぁああっ」


気合十分の声を出しながらメリッサは出会ったゴブリンに向けて剣を振るう。


ヒョイッ


ゲッゲゲッ


大振りで見え見えの剣をゴブリンは身軽を生かして避けて濁声で笑う。


「そいやぁ!」


何度振るっても剣はゴブリンに届かない。


「ノース」


「うん」


見かねたノースが弓でゴブリンを攻撃する。


ドッ


真横からの攻撃を察知する事が出来ず即死してゴブリンは倒れる。


「なぜだ!?」


唐突に終わった戦闘にメリッサは振り返る。


「ゴブリン相手に5分は掛かり過ぎだ」


1匹しかいない状態で5分も剣を振り続けて倒せないのは論外だ。


「私はまだやれる」


「意志の問題じゃない。技術の問題だ・・・」


自分に合った戦闘系職業武器を持てばゴブリンを倒すのは簡単になる。


だが、合わない武器を持っても大した攻撃にはならない。


ましてや武器に振り回されているのは明らか。


「木々の多いここでロングを振り回すのは難しいだろ」


メリッサの持っているのは剣の中でも刃渡りが長いロングソードだ。


重いし狭い場所では思うように振り回せない武器。


「しかし、私にはこれしか」


「あいにく予備はナイフしか持っていないんだ」


アルは後ろの腰に差しているナイフをメリッサに渡す。


「私にナイフを?」


「幾分かマシだろ」


「ぐっ・・・仕方がない」


自身のプライドと天秤に掛けたメリッサは現状打破できる可能性を見てロングソードを鞘に納めてナイフを装備する。


「もう一匹来たよ」


索敵を任せていたノースが新たなゴブリンを引き連れてきた。


「今度こそ!」


メリッサは気合を入れてゴブリンと対峙する。


ザシュッ


ギャギャッ


先ほどと違って小回りが効き軽いナイフでの攻撃はゴブリンに通った。


ッタッ!


キョロッ


「ん?」


ゴブリンがメリッサから見て左側に退避したが、メリッサが数テンポ遅れて反応した。


それをアルが見逃さなかった。


ギャガアッ


ドッ!


何度も切りつけてメリッサはゴブリンを倒す。


「やったぞ! 見たか!!」


初めてゴブリンを倒したかのような喜び様に他のメンバーは反応に困る。


「やはりスキル無しだと時間が掛かるか」


「このペースだとオイラ達の宿代も稼げないよ」


既に昼を過ぎている中でゴブリン数匹しか倒せていない。


5人が1晩泊まるには圧倒的に討伐数が足りない。


「メリッサは俺が見ておくから、お前達は離れた場所でやっててくれ」


「分かった」


「その方が効率がよさそうですね」


「危険の場合は直ぐに呼んでください」


ノース、アクア、ロードの3人が離れた場所で単独行動しているゴブリン狩りを開始する。


メリッサが1匹に苦戦しているのに対して3人はサクサクとゴブリンを倒していく。


「ハァハァハァ」


「休憩だ」


1時間も連続でナイフを振い続けているメリッサにもスタミナの限界がきた。


木陰に休ませてアルが近づいてくるゴブリンを淡々と倒していく。


時折、メリッサに見てもらう為に剣士スキルのスラッシュを発動する。


「そういえば、アル殿の職業を聞いていなかったな」


休憩を終えたメリッサが思い出したように問う。


「俺はモノマネ師だ」


「モノマネ師・・・聞いたことがあるが実際に会うのは初めてだ」


「偉そうに指示を出していたが失望したか?」


「いや・・・どの様な職業であろうと経験者のいう事はどれもタメになる」


貴族令嬢とは感じさせない程、淡泊な反応であった。


「モノマネ師だと他の職業のスキルを真似る事が出来るとか」


「あぁ」


「ただ、消耗が激しいと聞く」


「その通りだ。使用する魔力は倍、効果は半減という中途半端なスキルになる」


「実質4分の1という事か」


「あぁ」


アルは通常より早く魔力切れになる為に休憩の量も多い。


「その親は?」


「モノマネ師だと分かったら手のひら返しだ。俺より弟達の方を育て始めたよ」


「貴殿も辛い思いがあるのだな」


「・・・」


「何故と言う顔だな。貴殿の立ち振る舞いは貴族のソレだ。隠しているつもりでも見えている物だぞ」


「アイツ等には内緒にしろ」


「言わないさ。さてと、休憩は終わりにしよう」


「左には気を付けろよ」


「分かっている」


アルとメリッサの前衛コンビで休憩を挟みながらゴブリンを着々と倒していった。


ッタ


「そっちの調子はどう?」


離れていた場所で別のゴブリンを倒していたノース達が合流する。


「2人分の宿代分くらいだな」


「こっちも3人分って所かな」


安全を考慮して森の浅瀬部分を巡りながらゴブリンを倒していた為に大した稼ぎにはならなかった。


「では、失礼する」


換金を終えて5等分にされた報酬を受け取りメリッサが別れの挨拶を告げた。


「えぇ!? 食事は?」


「宿で食べる事にしているんだ」


「メリッサなりの理由があるんだろう」


「ちぇっ! 明日ね」


「明日」


メリッサはギルドを出て行き残った4人は泊まっている宿で食事を取る事とする。


「それで、どうだった?」


「駆け出し冒険者程度にはという所だな」


「厳しいね」


「スキル無しだとどうしてもな」


「ゴブリン退治でその評価ですとパーティーを組んでビックボアと戦うのは危険なのでは?」


「普通ならな・・・やはり気になるのは」


「職業不明ですか?」


「あぁ」


ロードの鋭い指摘にアルは頷く。


「たまにスキル発動の気配を感じるんだ」


何度も戦っている所を目の当たりにしていたアルはモノマネ師のスキルである模範が若干メリッサの動きに反応を示した。


「だが、今日ではつかめなかった」


自分のスキルならメリッサの職業を言い当てられるかと思った。


「でも、Dランク昇格試験が受けられるギリギリの日は1週間後だよ」


昇格試験というのだから試験官がいるのが当たり前である。


高ランクの冒険者が決まった期間のみ試験官として動く。


「1週間以内に別の冒険者が来るのを待つのか?」


その選択肢はあながち間違ってはいない。


もし、1週間以内に他のソロ冒険者ないしアルの様なパーティーから抜けた冒険者が来るとは限らない。


だが、一度パーティーが組めないと見放した冒険者が再び戻ってくる事は珍しい。


「パーティーリーダーはお前だ。じっくり考えてくれ。判断は任せる」


食事を終えたアルは一足先に部屋へと戻る。


残った3人が少し話し合いをする。


・・・


「今日も宜しく頼むぞ」


「あぁ」


アルがチラッとノースを見るが何か言うつもりは無い様子だ。


「今日は森の奥へ行って5人でパーティーとして動くか」


「それは大丈夫なの?」


「メリッサの耐久力はかなりの物だ。タンク代わりにはなるだろう」


全身鎧を着込むメリッサの防御力は5人中最強でありゴブリンに囲まれても問題ない程だったのは先日見ていた。


「いざとなったら俺もフォローに入る。それとギリギリの稼ぎは流石にな」


昨日は一晩泊まる程度しか稼げなかった。


「今日は薬草採取も加えましょう」


「賛成です」


「オイラが索敵するよ。下は任せたよ」


「あぁ」


「分かった」


ロードとアクアの2人で薬草採取をし、木の上からノースが索敵、下ではアルとメリッサが周囲を警戒するフォーメーションで薬草採取しつつゴブリン退治をする形をとる。


森の奥に行けば魔素と呼ばれる物質が濃くなり、モンスターの数が増えるが薬草などの群生地に当たる確率も増す。


「ゴブリン3、メリッサさん!」


木の上で索敵していたノースから即座に敵の位置が伝わる。


反対側を警戒していたアルが反転してフォローが入れるように移動を開始する。


アクアとロードも採取を中断して武器を抜く。


「はっ!」


ナイフ片手にメリッサは3匹のゴブリンと戦いを開始していた。


ギャギャギャッ


「動きが早くて僕の魔法では」


「オイラの弓もだ」


3匹のゴブリン達は常に動いてメリッサの体を壁にして立ち回っている。


「俺が加わる。周囲の警戒を怠るな」


アルも前線に入ろうと踏み込む。


キィンッ


ゴブリンの振り回すこん棒がメリッサのナイフを弾き飛ばした。


ガシッ


メリッサはロングソードを抜こうと柄を握った。


「これを使え!」


アルは左腕に固定しているスチールシールドを外してメリッサに投げた。


ギィンッ


勢い良く投げたスチールシールドは火花を散らしてメリッサの右手に掴まれる。


ギュッギュッ


左腕の篭手にベルトでシールドを固定する。


その間にもゴブリン達の攻撃は続くが全身鎧で物ともしない。


「邪魔だ!」


ギィンッ


メリッサはスチールシールドでゴブリンの振り回すこん棒をはじき返す。


ブワッ


久方ぶりにアルにスキル習得の感覚が流れ込んできた。


【パリィを覚えました】


脳裏に浮かび上がる世界の声と呼ばれる音声。


本人にしか聞こえない重要な情報だけが読み上げられる。


ガッ


無防備の首をメリッサは掴み上げて地面に叩きつける。


「まさか・・・メリッサ! その盾でゴブリンを叩き潰せ!」


「盾でか!? これは防御用の」


「いいから、俺の言う通りにしてくれ」


「分かった! ハァアッ」


左手の盾で残っているゴブリンの攻撃を弾いては盾のふちでゴブリンの喉元に叩きいれる。


ギャギャギャッ


最後の1匹がメリッサの背後から襲い掛かる。


「アイアンガードと言え」


「ア、アイアンガード!」


ガイィンッ


ゴブリンの振り回すこん棒がメリッサを包みこむ何かに弾き返される。


ザシュッ


バランスを崩した所にアルがスチールソードで首を撥ねる。


「わ、私は一体」


「スキルだ。今になって発動した」


アルは自身に流れ込んできたスキル習得の感覚に確信を得る。


「アルさん、今のは?」


「盾職が使う技を使っていたんだ。相手の攻撃をいなす”パリィ”、相手の攻撃をあらゆる方向から防御する"アイアンガード"」


「盾職・・・私が?」


「あぁ。メリッサは盾職だ」


思いがけない所でメリッサの職業が判明した。


「とりあえず、その盾は使ってくれ」


盾職が盾を装備しない訳にはいかない。


メリッサの職業が盾職だと判明した後、明らかに動きが変わった。


盾で防御してナイフで攻撃するコンボがゴブリンに入る。


狩るスピードも断然違った。


昨日とは違うメリッサの活躍で5人が余裕で泊まれる程のゴブリン討伐数に加えて薬草類も集まり街へと帰る。

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