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04話「新たなメンバー」

「こちらが報酬となります」


今回の遠征で均等に4分割された報酬を各自は受け取る。


「一泊分って所か」


「アルさんは何処に泊まっているんだい?」


「今日、前の宿を出たばかりだ。宿は今から探す所だ」


「なら、オイラ達の泊っている宿はどうだい。値段もお手頃で寝泊まりする分にはおすすめ」


「そこを当たってみよう」


ノース達とは一旦分かれて紹介された宿へと向かう。


『いらっしゃい』


出迎えてくれたのは大柄の女受付だった。


「ここを勧められたんだが」


『誰かの紹介だね。通常は朝夕の食事付きで1銀貨。お湯はバケツ一杯で50銅だよ。更に初回サービスで半額だ。どうだい?』


「分かった」


チャラッ


ゴブリン討伐と薬草採取で稼いだ金額で何とか足りる。


『鍵は303号室だよ。無くさないように気を付けるんだよ。あと名前は?』


「アルだ」


『アルだね・・・もしや『紅の翼』にいるアルかい?』


「元だが、どうして」


『お前さんの泊っていた宿、あれは兄夫婦が経営する宿なんだよ。だからさ』


なんという偶然だろうか、出て来た宿と今度泊まる宿が繋がっていた。


『今日からご贔屓に。夕食は食べるかい?』


「冒険者ギルドで仲間を待たせているから今回は」


『分かったよ。明日の朝食からだね』


そういって奥へと姿を消した。


アルは少ない荷物を部屋に置いてギルドへと戻る。


既にノース達が食事を開始していた。


普段なら宿で夕食をする予定だったがアルとの交流と反省会の為にギルドで食べる流れとなっていた。


アルも席について、酒と食べ物を注文する。


「今回のクエストで3人の連携力は知れた」


「アルさんもオイラ達に合わせてくれたから普段より楽だったよ」


「1人、接近戦が出来る人が入ってくれるだけで戦術の幅が広がりましたね」


「うん。安心して回復魔法が使えたよ」


「後衛ばかりのアンバランスパーティーだったからな。ノースの索敵範囲が常人より広いから今までやって来れたんだろう」


「そうなのかい?」


「腕のいい斥候なら同じくらいの距離を索敵できるだろうが、お前達のランクだともっと短いだろう」


森の中だと木々が邪魔で敵の接近を許してしまう事がある。


だが、ノースの索敵能力は素晴らしく中級冒険者と同程度の索敵範囲を持っていた。


「ロードは森ではファイアーボールを使うのを控えた方がいいな。下手したら火事になる」


「すみません。僕は火の適性があってファイアーボールしか使えないんです。他の属性が使えれば良いのですが」


「火の適正・・・聞いたことがあるな」


魔法使いでも各属性の内1つ適性を持つ者が圧倒的に多く他属性の魔法は使えないとされている。複数の属性が適性を持っている方が珍しい。


リリスは風と火のダブルだった事を思い出すアル。


「なので気を付けながら魔法を使ってます」


「こればかりは仕方がないな。アクアは魔法有効範囲が課題だな」


「うぅ、ごめんなさい」


魔法有効範囲とは魔法の効果が発揮できる距離の事であり、これが短いと連携にも支障がでてくる事がある。


今までは後衛だけのパーティーだったから浮彫りにならなかった。


戦闘後なら問題ないが、戦闘中に後衛である神官が前衛の所まで近づいて回復する動きになると前衛も気を使う必要がある。


魔法有効範囲が広ければその心配は無くなる。


「あとは俺の前衛としての能力だな」


盾でガードも剣での攻撃も出来るが、MP消費が激しいのがアルの悪い欠点だ。


その為、連戦がし辛くなる。


「アルさんは凄いよ」


「僕も認めます。前衛をこなしながら回復も魔法も使えるんですから」


「私の回復が間に合わない時にアルさんが代わりにやってくれる時もありました」


アルという前衛が入る事でアクアの中で回復優先度が誰にするべきか判断ミスが目立った。


こればかりは経験がものを言う。


「もう一人、前衛がいれば安定するだろうが」


「募集を待つしかないね」


「反省会はこれ位にして食事を続けるか」


「「「はい」」」


この日はそれで終わり各々宿へと戻っていった。


・・・


「前衛が見つかった?」


翌日、ゴブリン退治を受けに4人でギルドに立ち寄ったら募集に1人手が上がったと報告を受ける。


「あちらに」


セリスが指し示す方向に全身鎧の冒険者が丸テーブルに座ってアル達を見ていた。


「よく話し合ってください」


「あぁ」


アル達はテーブルへと向かい座る。


「アンタが俺達のパーティーに入りたいのか?」


「その前に・・・昨日は助かった。ゴブリンと言えども多勢に無勢だった」


全身鎧の冒険者は姿勢を一度正して頭を下げる。


「礼を言われるとは思わなかったな」


「私はこれでも義理堅いと自負している。あの場では最善だったと思う」


「礼を受け取った。ノース達も良いな?」


コクリ


3人は頷く。


「さっそく、本題に入らせて貰うか・・・と、自己紹介からか?」


「そうだね。オイラがこのパーティーのリーダーのノース。見ての通り弓使いさ」


「・・・失礼だが、そちらの御仁がリーダーではないのか?」


アルを指さして全身鎧の冒険者が問う。


「残念ながら俺はこのパーティーに一時的に加わったに過ぎない」


「そういう事だよ。で、そっちが」


「僕は火の魔法使いのロードです」


「私は神官のアクアです」


「私はメリッサ・ボーゲンだ。訳あってEランク冒険者をしている」


「「「ボーゲン」」」


「隣町のボーゲン男爵家のご令嬢がなんで?」


「訳があるんだ」


「それは失礼した」


貴族、男爵家の人間が冒険者をしているというのは珍しい。


貴族に対してノース、アクア、ロードの3人は委縮している。


「あぁ、いや、別に普段通りに接してくれ。男爵家といっても私は四女で地位や権力は持っていない」


「で、でも。失礼を働いたら平民は」


「そんなに怯えないでくれ。今は冒険者のメリッサだ。私に失礼を働いても家の者が何かする事は無いし、させない。そこは分かってくれ」


3人の委縮にメリッサも慌てて弁解する。


「話は戻すが、昨日はスキルが無いと言っていなかったか?」


「あ、あぁ。私には攻撃スキルが無いんだ」


「よく、それで冒険者になろうとしたな」


「勘違いさせたな。前衛の職業ではあるんだが、攻撃スキルが分からないんだ」


「前衛の職業? どういう事だ?」


「5歳の時に受けた祝福の儀で職業名は分からなかったが前衛職業の赤色だけが確認が取れたんだ」


祝福の儀式、それは5歳となった人物が教会または神聖な場所で受ける儀式でその者の職業を神から与えられる。


そこで前衛、後衛、生産の職業が割り振られている。


烈火の如く怒涛の攻撃力を持つ前衛の赤色、


冷静沈着で離れた場所から観察する後衛の水色、


穏やかで自身の周囲を豊かにする生産の緑色と3色で職業が分かれている。


アルの場合は全てに通じるため3色全部持っている珍しい職業でもある。


「・・・つまり、前衛職であるのは分かっているがなんの前衛なのか分からないのか?」


「そうだ。私はあのボーゲンの血筋だ。剣に適性があると信じて鍛錬を続けていた」


「少なくても数年は剣の鍛錬をしているのか・・・さすがに剣士ではないと思うが」


「薄々は私や両親に兄弟たちも思っている。少しいたたまれなくなってしまってな」


「なるほど・・・。まぁ、あれだけゴブリン達と大立ち回り出来る体力と耐久力があれば」


今回のDランク昇格試験のターゲットであるビックボアの突進も受けきれるとアルは思う。


「アルさん、流石に攻撃スキルがないのは」


「僕もノースと同意見です」


「ゴブリン5匹に囲まれても大丈夫なのは凄いですけど」


3人は乗り気ではないとアルに告げる。


その声はメリッサにも伝わり落ち込む。


これまでメリッサは幾人もの新人冒険者に声を掛けたが攻撃スキルを持っていない前衛では相手にされなかった。


スキルとは必殺技であり、持っているかいないかではパーティーの生存率にも関わってくる。


自分の命を預けるに値する者でなければパーティーとして成り立たない。


それはモノマネ師であるアルも同じ気持ちを持っている。


「組むか、組まないかは後で幾らでも議論できるだろう。一時的にでも組んで力量をみて判断するのはどうだ?」


パァッ


表情は見えないがメリッサの雰囲気が明るくなった。


「ま、まぁ」


「アルさんがそう言うのでしたら」


「そうですね」


アルの年上としての信頼と3人を納得させる理由をつけメリッサを一時的にパーティーに加えて力量を計る事になる。


「メリッサさんの臨時パーティー加入手続きは完了しました。また、パーティー募集は降ろしておきます。さらにゴブリン退治のクエストお気をつけて」


5人目が揃って早速ゴブリン退治へと向かう一行。


森へと向かいながらメリッサは3人から質問を受けては淡々と答えていた。

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