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変幻

作者: 栄藍ユイオ

 通気性の良い窓からは、季節の風と共に太陽の光が僕を刺した。その眩さから隠れるようにように薄いブランケットを顔に被せ、二度寝の態勢を取る。ブランケットを被るまでは良いが、暑さが僕を襲う。顔に掛かったブランケットは熱を帯び、呼吸を困難にする。

 

 

 カーテンがあったらどれだけ良いのだろうか。涼しい風だけを取り入れ、それ以外のものは遮断出来る。これは革命的だと思う。じゃあ買いに行けばいいのか。そう簡単な話ではない。真夏の朝の僕は、溶け出したアイスクリームのように原形を留めておらず、形から創り直さないといけない。加えて僕は人間であって人間でない。一番の問題はここにあるのかもしれない。

 

 

 毎朝、カーテンを付けるべきだと思うところから一日が始まる。が、先に溶けた身体を人間の形にしなければいけない。その過程で雑念が入る。また明日すればいいと思う自分。今日は溶け過ぎて時間が掛かりすぎると思う自分。もうすぐ秋が来ると思う自分。それらの雑念を抱いて創るから、出来た身体は芋虫の形をしていた。

 

 

 芋虫。こうなってしまうと残念だが、カーテンを買いに行けない。芋虫だからカーテンが売っているお店まで急いでも二日は掛かるだろう。その間にバイトが始まってしまうし、友人との予定もある。それにカーテンを買いに行くのに、何日も掛けることが馬鹿馬鹿しいことにさえ思えてくる。利点があるとすれば葉を食べて、健康的なことだろうか。などと理屈もクソもない言い訳を出来るぐらいには、頭が動いているのだから早くカーテンを買いに行けよと自分に思う。が、今度は身体がガムのようになっていた。

 

 

 ガム。こうなってしまったら残念だが、カーテンを買いに行けない。ガムだからかベッドに身体が引っ付いてしまっている。これでは動きにくいし、ガムだから甘臭い。外に出たらハエや蝶が寄って来るかもしれない。寄って来るだけなら我慢は出来るが先述した通りガムであるため、ハエや蝶が体に引っ付いて取れなくなるかもしれない。その光景を想像しただけで悍ましくも思えるし、そんなリスクの報酬がカーテンなのは納得がいかない。利点があるとすれば、ベッドが引っ付いているので何処でも寝れることだろうか。そう考えつつも眩い光から逃げるようにブランケットに包まる僕は芋虫に近いのかもしれない。

 

 

 相変わらず、何もしないで溶ける身体を見つめていると、下の階から音がした。この音は朝ご飯を作っている音だ。ご飯を食べる為にベッドから出て下へ向かう。一階にある窓から入る太陽の光はとても神秘的で、美しさと気持ち良さが混じり合っていた。芋虫が蝶になる時はこんな気分なのだろうか。きっと、もっと良いものなのだろう。膜のない一呼吸は生への感謝を学ばせ、広げた羽は神々しく凛々しく、そして艶やかな美しさと風を纏い、触覚で風の声を聴き取る。一日を愛せるようになるだろうな。さて、今日は何をしようか。


 

 いや、カーテン買いに行け。


これは僕の日常であり、多分誰かの日常です。

やらなければいけないことを後回しにして、言い訳を頭の中で構成していく。

そんな深い意味はありませんが、これを書き終えた後、虚しくなったことをここに記します。

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