私の話仲間
初短編です!
「ねえ君。それ好きなの?」
「えっ」
突然話しかけられた。彼は私の弁当を見てそう聞いたのだろう。
その私の弁当はとある戦隊のキャラ弁だ。何かは言えないけど。
「好きなの?」
「あ、え、えっと、好きです。」
しまった。
でももう言ってしまったものは取り消せない。
「へぇ~好きなんだー俺も好きだよ。それ。」
「え、本当ですか?」
「うん本当。幼稚園の頃からずっと好き。特にブルー。」
「私はレッドで あ、、、」
慌てて口をふさぐ。何普通に会話をしているんだ私は。
「いや、あの、、、」
「確かに。レッドもいいよねー。ね、ここ座っていい?」
「え、は、はい、どうぞ、、、。」
「どうも。君、名前何?」
こいつ、なんか軽い。
「あの、まずはあなたの名前を教えて下さい。」
「あ、ごめん。俺は西田凉。今日転校してきたんだ。君、知らなかったの?」
凉?
地味にイラっと来る。
「はい。知らなかったです。」
「ふーん、まあいいや。それで、名前は?」
「青木里紗。」
「えっ」
「何か?」
「いや、な、何も。それより、早く話そ。ね。」
「は?話す?何を。」
「え、もちろん戦隊のことでしょ。里紗、もしかしてわかんなかったの~?」
このイライラはもう地味どころじゃない。
「あの、私戦隊のことは誰とも話さないって決めてるんです。」
「え、なんで?俺みたいにこれ好きな人たくさんいるよーあ、もしかして女の子だからー?確かに女の
子は少ないかもなー」
「違うんです!あなたには関係ないでしょ!?とにかく、私はあなたと話す気ありません!」
「え、あ、ちょっと!」
私は教室を飛び出した。
「もう、なにあいつ、、、」
ものすごく腹が立ってくる。
でも、考えてみると私も少し強く言い過ぎたかもしれない。
いやいや、あいつが何にもわかってないのに突っ込んでくるから、、、
あーどうしよう、、、
考え込んでいるとチャイムがなった。
「教室戻んなきゃ、、、」
私は教室に戻った。
あぁ、ものすごく気まずい。なぜって、私の前にいるから。
それから、私と凉は放課後まで1回もお互いを見れなかった。
やっぱ、怒ってるよね、、、よし、ちゃんと謝ろう。ずっとこのままなのも嫌だし。
そして、私は教室から人がいなくなるまで待った。偶然なのか、凉は最後まで教室にいた。
よし、今だ!
「あ、あの!」
「あ、里紗、、、」
「さっきは、ごめんなさい。強く言い過ぎちゃって。それに、急に飛び出しちゃったし、、、
本当に、ごめんなさい!」
「いや、俺も話さないって言ってるのに、無理矢理話させようとして、、、ごめん。」
えっ、普通に、話してる?イライラ、しない?
凉は、もしかしたら優しいのかもしれない。話してもいいかもしれない。
「あの、私、話すよ。話したい。」
「え、本当?いいの?」
「うん。」
「じゃあ、話す前に俺、里紗に聞きたいことがあるんだけど、、、」
「え、何?」
「なんで、戦隊のことは誰とも話さないって決めてるの?」
「え、それは、、、」
どうしよう。
「あ、嫌ならいいんだ。無理に言わなくてもいいしー」
「ううん。話すよ。」
「え、あ、ありがとう。」
「私、小学生の時、仲間がいたの。」
「仲間?」
「うん。話仲間。で、その日もその子と話してたら結構お調子者の男子たちにそれを聞かれちゃってね。
あっという間にクラス中に広められたの。そのせいでいじめられたりもした。それで、その子と話すこ
とだけのために学校行ってるような感じだったかな。そしたらある日、いつも通りいじめられた。その
中に、いたの。話仲間が。」
「えっ」
「ものすごく悲しかった。ずっと仲間だと思ってたのに、急に裏切られて。」
「それで、その後は?」
「親に話して、転校したよ。だからそれきりその子とは会ってない。」
「そうだったんだ、、、それで、そ、その子の名前は?」
凉の声は少し震えていた。
「絶対に忘れない。生田凉のことは。裏切者。」
「・・・・・」
その瞬間、急に凉が立ち上がった。
「お、俺今日はもう帰るわ。話してくれてありがとう。」
「え、、、」
なんだろう。凉、すごく焦ってる。
その夜、私はある事を考えていた。それは、凉があのいじめっ子の中にいたかもしれないということ。
クラス中に私の秘密をばらした奴らの中に。凉が。
その夜は全然眠れなかった。
「おはよう。」
「あ、あ、里紗。お、おはよう。あの、、、」
「ん?」
「放課後、里紗に話したいことがあるんだ。教室で。」
「う、うん。わかった。」
何、だろう。
その日の放課後、私は教室に行った。
「遅れてごめん。話って何?」
「えっと、実は俺、小学生の時里紗と一緒にいたんだ。」
「え、、、いじめっ子の中に、いたの、、、?」
「ううん。違う。」
「じゃあ、何、、、?」
「生田凉。」
「え、、、?」
「裏切者の生田凉。それが、俺。」
「・・・・・」
信じられなかった。
「そんな、感じじゃなかったよね?」
「変えたんだ。キャラは。」
「苗字は?違う、じゃん。」
「親が離婚したんだ。」
「うそ、、、凉君、なの、、、?」
「うん。」
声が次第に震えていく。
「なんで、、、なんで私の事裏切ったの!ずっと、信じてたのに、、、友達だと、思ってた、のに、、、
なんで、なんで、、、」
涙が止まらなかった。
「ごめん。本当にごめん。裏切るつもりは、、、」
「そんなのが通じると思う!?私を裏切った事に変わりはないでしょ!?」
「ごめん、、、でも聞いて!」
凉の顔は、真剣だった。今までに見たことがない顔。
「わ、分かった。」
「ありがとう。あの日、いじめっ子達に言われたんだ。俺達のいう事聞いたら里紗の事はもういじめない
って。
「え、そうなの、、、?」
「それで、なにをすればいいのって聞いたら、俺達の輪に入れって言われた。言われた通りに輪の中に入
ったら、いつも通り里紗をいじめていた。最初は何が起こったのか分からなかった。」
「騙されたってこと、、、。」
「いじめっ子達にどういう事って聞いたら、騙される方が悪いんだって笑われた。」
「そう、だったんだ、、、」
「うん。本当にごめん。」
「私こそ、ひどいこと言ってごめん。もう、怒ってないよ。」
「え、ほんと?」
「うん!よし、一緒に帰ろ!」
「うん!」
「ふふっ」
自然と笑みがこぼれる。
楽しみだなぁ。早く話したい!
どうでしたか?感想もらえると嬉しいです。