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グリモアの一頁

林檎

作者: 守谷 雪

手にした果実は甘かった。


もう出会えない気さえした。


もし今それを齧ったとして、


あの日と同じ味はするかな。



あの日手にした真っ赤なリンゴ。


私は迷わず齧りついた。


いつかは醒める夢だとしても、


夢見る私は笑えてたかな。



毒リンゴでも、それでよかった。


醒めない夢を見ていたかった。


冷めてしまうと知っていたなら、


私はそれでも齧ったのかな。



あの日のリンゴを棚に戻した。


黙って棚に転がっていた。


あの日はあんなに甘かったのに、


今や他のと変わらない。


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