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効果抜群のダイエット薬屋

作者: カテチャ

 優奈は自分の靴箱の前にただぼうっと立っている。開けられた優奈の靴箱の中に、自分の靴が入らず、どこかへ消えてしまった。中にあったのは横からバランス良く三行と折られた、手紙のような紙だ。中を覗き込んでいる優奈の顔には、何の不思議もなく、まるでこんな出来事に既に慣れているようだ。無表情のままで、冷静に右手を動かして、紙を取った。

 紙を開くと、中に鉛筆で、「さあ〜、今回はどこにあるだろうね。見つからなければ、素足で帰りな。」と四段として書き分けられた縦書きの一言と、紙の一番左下に描かれた、真ん丸い顔に、手で下瞼を下へ引っ張って、口から舌を出す、不細工な意地悪の絵だ。

 すると、優奈は手で何回も紙を強く引き破っていて、遂に何かを探り出そうと、何分間の間で全体的にその場で探りまくる。だが、無駄だった。優奈は何も見つからなかった。得たのは、両手を二つの膝に置いて、上半身を支えながら、激しい呼吸しかない。無表情の顔のほかに、真っ先に見詰める鋭い目線が増える。

 優奈は高校一年生だ。あまりにもその百六十センチメートルの身長に相応しくない、八十キロの体重で、友達はもとより、周りに味方でさえいない。何度もサラダしか食べないダイエットを試みて、時には絶食にも至るが、その体重には少しの影響を及ぼすこともできなかった。その体重のせいで、いつも女の子たちに「ブス」、「デブ」などのようなひどい言葉を裏で言われたりして、「俺に話をかけるな」のような言葉が男の子の口から数え切れずに出てきて、相手にされなかったりする。クラスでたった一人は優奈をいじめない。同じく太っていて菫という女の子だ。

 或る日のことだった。教室の椅子に座っている優奈は廊下に歩くクラスメイトの二人の女の子の談話が聞こえた。

 「あいつ、胸でけーな。」

 その中の一人の女の子が中に座っている優奈に目を逸らしながら、ふざけてこう言った。

 「バカ言うな。デブに胸なんかあんのか!」

 もう一人の女の子も首を傾けて優奈を見て、首を戻すと、その女の子をまともにこう指摘した。そして、二人は歩きながら、大笑いを始める。

 それを聞いた優奈は、後ろのドアから廊下へ目線を送る。後ろのドアにその二人の女の子の姿が消えるまで、見張っていて、さらに、前のドアのところへ目を逸らして、二人の姿を目線で待つ。前のドアのところに移ってくる姿が現れると、優奈は前のドアを通して、鋭く目線で二人を見張る。二人の姿が消えても、前のドアのところにじっと見張る。片手の爪で自分の太股に強く押し付けて、赤い爪痕も残そうにあるほどで、ひたすらにそういう動きで自分の不満を表す。

 家に帰ってお母さんに見られると、「不意にできちゃった」と誤魔化す。こうして優奈は毎回家に帰ると、晩ご飯も食べずに、ただ自分を部屋に閉じ込めるようになって、朝になると、いろいろな言い訳を口にして、結局はお母さんに叱られて学校に行くことが日常的だ。もちろん、帰りもいつも一人だ。

 今回も、靴が見つからず、素足で帰ったのだ。お母さんの話を聞こうともせず、ひたすらに自分を部屋に閉じ込める。朝になると、またいろいろな言い訳を探すけれども、やはり学校に行くことになった。しかし、放課後の帰りで不思議なことが起こる。

 例のように、優奈は帰りの道で歩いている。登校するのも、放課後の帰りのも、この道を通して、家に帰る。久し振りに夕焼けが現れて、空に赤く定着している。しかし、見たことのない、新しい店ができたのに気づいた優奈は、足を止めた。その店は、新しく作られたというより、見窄らしく修繕されたと言った方が適切だ。壁の色は真っ黒と塗るつもりだったかもしれまないが、何箇所は黒ではなく、褐色が滲んできそうだ。そして、出入り口のドアは朽ちた樹木で作られたように、二つの扉の色が違う、片面では、真っ黒となっているが、相対な片面では、色付けのされていないような原色の褐色となっている。上に扁額が掛かっていて、「効果抜群のダイエット薬屋」という文字が真っ赤に書かれている。扉の一番上には一つの鈴がついている。これは、扉を開けると、鈴が鳴って店主に知らせるシステムに違いない。しかし、最も妙なところがある。その店は窓が二つ設置されてあるのに、ガラスがない代わりに、二つの窓は全て、有意に中に縦から何本の木の板がぴったりと、開かないように嵌められていて、さらに、釘でしっかりと挿されていて、光が当たらないようにしてある。その釘たちのうちに、何本の棘が外までも出ている。

 優奈はずっと扁額のところに見詰めている。様々な方法でダイエットをしてきたが、薬を飲む方法はやったことのない優奈は、かばんのショルダーストラップを強く握って、扉へ身を寄せて、また、扉から離れて、しばらくはそうしまくっていた。

 その行動を繰り返されているうちに、夕焼けはあっさりと消え去って、どんなに目線を注いでいっても、その闇を見透かすことのできない薄暗い夜空に変わる。夜空には、闇に包まれていて隠されてしまった月と、うっすりときらめく三つの星が飾られている。

 優奈はそれに気づいて、しばらくの間で、立って夜空を見届ける。突然、三つの星の中の一つは、彗星のように夜空から徐々と蠢いて、遂に落ちてくる。落ちる星は隠された月の方から、闇を劈くように夜空から一気に通り過ぎて、月の一角は微かな光を輝き始めたが、何秒後には再び隠されたように戻った。それから、落ちる星は高層ビルに覆われて、姿が見えなくなる。

 この通路には、さっきから人が増えてきて、その星が落ちるのが見えて、人々は携帯電話のカメラを開いて、その一瞬を捉えようとしていたが、星の姿が見えなくなると、携帯電話をしまって、まるで起こらなかったことに看做して、通路を通り過ぎる。

 その後、通路の人が減る。ざっと見れば、七、八人しかいないほどだ。星が消えるとともに、優奈はまた扁額に目を逸らした。突然、鈴が急速に鳴って、薬屋から男性の嗄れる声が届いた。

 「君もきっと美しい星になれるのです。戸惑っているより、実際に入って見ればどうですか?」

 声が消えるが早いか、扉が開いて隙間を生み出される。優奈は再び扉の前へ身を寄せて、扉を押そうととするが、何かを考えているように動きを止めた。

 そして、さらに誘いが届いた。

 「さあ〜いらっしゃい〜」

 最後に、扉を押して、中に入った。

 やはり、窓のところに、何本の木の板がぴったりと、開かないように嵌められて、釘で抑えている。しかし、外見とは違って、中は二つの六畳の部屋が繋がったように随分と狭く感じる。薬屋というと、なんだか物足りなく、妙な感じがする。目の前には向こう側を囲むカウンターに、サングラスをかけた老人のような男性がその中に座っている。

 そのカウンターの正面は透明ガラスで、ガラスを見通すと、黒い瓶のような小さくて、どれを見ても同じの薬がきちんと整えている。左の壁の真ん中に大きな、美しい容貌を持って微笑む女性の肖像絵がかかっているのに対して、右の壁には仮面というか、まるで生きた女性の皮膚を切り抜けた顔が飾られている。

 その仮面たちは四つある、一つだけが老人の女性の顔で、他の三つは全部、若い女性の顔だ。仮面たちの目のところに穴が空いていて、誰かのもとで赤く塗られて、綺麗に壁に据えている。

 最後に一つは、男性の座るのところの隣に、何のつもりで作られたか知らないある小さい和式の扉のようなものがある。その扉は、横から開けるようだ。しかし、男性の姿で隠されている。その扉は、少なくとも犬くらいの体型でなければ入れない大きさだ。

 優奈は立ったままで、その仮面たちをずっと見ている。すると、男性は話す。

 「気になりますか?それらは、私の趣味です。」

 「その仮面のようなものですか?」

 「そうです。でも、それらは普通な仮面ですよ。」

 「かなり立派にできていますね。」

 「ありがとうございます。私にとっては仮面を作るのが一つの趣味です。」

 「生きた人間の顔に見えます。」

 「それは心を込めたものですから。」

 優奈は指で肖像絵を指して言う。

 「あの女性は美しいですね。」

 「あの女性は、初めてのお客様で、元々はすごく太っていました。ダイエット後、許可をもらえて描いたものです。彼女は今、星のように、どこかで輝いているのでしょう。ですから、こちらの薬のもとで君も星になれます。」

 話を聞いた優奈は肖像絵のところへ向かい始めて、真っ正面に立って絵を見届ける。

 「そうなんです。君も、星のような、美しい女性になれますよ。」

 「こんな私ですか?」

 「そうです。なれます。星のようになれます。」

 すると、優奈はカウンターに足を運ぶ。

 「ところなんですが、なぜ夜なのに、サングラスをかけていますか?」

 「私は日差しと月光が苦手でね。病気です。窓も光が入ってこないようにしたのです。」

 「そんな病気なんて、聞いたこともありませんが。」

 「世の中には不思議なものは多すぎるのです。こちらの薬もそうですよ。」

 男性は言うや否や、立ち上がって、しゃがんでカウンターの薬を取った。手で持ちながら、優奈に伝え始める。

 「この薬のことです。」

 黒くて小さい瓶を見極めると、米のような大きさの薬が数え切れずに入っていて、見事に星の形でできている。

 「本当に効果がありますか?」

 「ものは見た目に限らず。これは確かに小さいですけれども、効果抜群ですよ。あの女性を見てください。それは確かに星になった女性なのです。」

 優奈はさらに見届けると、目には憧れが溢れてくるほどだ。そして、目を薬に逸らしたら、男性は聞く。

 「どうですか?試みをしてみませんか?」

 「いくらですか?」

 「いいえ〜いいえ〜試みでは、無料です。無料でこれを差し上げます。」

 男性は笑って言った。薬を持つ手を優奈に伸ばして、さらに言う。

 「さあ〜持って。一日、一錠を飲むことです。食後などの規定なんて一切ありません。飲んだ十分後は下痢が出るのは正常です。脂肪は下痢とともに出ますので、ご心配なく、飲んでください。もし信じないなら、体重計に乗って測ってみてください。」

 優奈は男性から薬を取って、中身をじっと見ている。

 「君もきっと、あの女性のようになるはずです。」

 「いただきます。ありがとうございます。」

 そして優奈は、辞儀をして、薬屋を出る。

 家に着いたら、部屋に引き篭もる。飲む前に体重計に乗っていたが、相変わらず八十キロだ。優奈は早速に薬を飲む。十分後、やはり想定内の下痢が出た。トイレを出てもう一度体重計に乗ると、まさか体重が減ってさっきの八十キロは今、七十七キロとなった。優奈の笑顔は珍しく現れた。

 それから十日後、まるで生まれ変わったようで、肉眼で見える程度で五十キロとなった。体だけではなく、顔も痩せてきて綺麗な女性となった。結果としては、周りのクラスメイトからの悪口や意地悪も消えて、男の子からも絡んできて、まるで星のようだが、優奈は前にいじめた人を相手にしなくて、たった一人の友達を作った。その友達は菫という名前で、唯一に優奈をいじめなかった女の子だ。菫の家も優奈のと同じ方向で、一緒に帰っている。

 その日の放課後の夕方で、二人はいつものように帰る。

 「菫。」

 「どうした?」

 「菫に話したいことがあるの。」

 「何?」

 「なぜ私がこんなに痩せてきたか、知りたい?」

 「知りたいよ。私もモテるようになりたい。」

 「実はこれだよ。」

 かばんから薬を出しながら、優奈は言った。

 「形がかわいいね。」

 「実際にこれは効果抜群のダイエット薬なのよ。痩せたのは、これのおかげだったよ。」

 「へえ〜どこで買ったの?」

 「買ったじゃないよ。そっちの薬屋で無料でもらったものだよ。」

 優奈は指で指そうとしたが、なぜか屋敷の姿が消えてしまって、服屋となっている。

 「そっち?そっちは服屋さんだよ。」

 「違うよ。前は薬屋さんだったよ。」

 優奈はさらに見届けたが、確かに服屋だ。

 「いつ消えちゃったんだろう。」

 「えっ、いつ消えちゃったって、そっちはそもそも服屋さんだよ。なんだか優奈の話、不思議でファンタジーだね。」

 「いや!ファンタジーじゃないよ。本当のことだよ!」

 「いいよ〜いいよ〜大丈夫、気にしないから。」

 「でも…」

 菫の話を聞いて優奈は不思議な顔をして、菫の顔をじっと見ていて、話をやめた。

 家に帰って部屋に着くと、薬を取って、何分間をかけてじっと見ていた。そしていつもと同じ、薬を飲む。今回も下痢が出て、三キロが痩せた。

 窓に寄せて、優奈は外を見る。

 月の横に、二つの星が夜空にうっすりときらめいている。その二つの星の中の一つは、あの日のように、夜空から徐々と蠢いて、夜空を通り過ぎて、遂に落ちてくる。今回も、高いビルに覆われて、姿が見えなくなった。美しい星は、敢えて言っても一瞬ですらなかった。

 それから三日後、やっとモデル体重のような四十一キロとなった優奈は、鏡の前に立って満足な顔で笑っているのが鏡に映っている。間も無く、薬を机に置いて、学校へ行く。学校から帰ってきて、今度は薬を飲まなかった。

 しかし翌日の朝、起きた途端にいつもと同じのように、結局は下痢が出た。体重計に乗ると、体重は三十八キロとなっている。部屋で歩き回っている優奈の顔には不安しかなく、机に置いてある薬が見えてきた。優奈は机のところへ走って薬を取り上げて、窓へ投げ出す。薬は空中で転回して、部屋の下の葉っぱの多い樹木のところに落ちて、蓋が開く。何錠の薬は瓶から流れてきて、樹木の根に静まった。

 優奈は今日、学校を休んだ。親の呼びを気にせず、一人で部屋に引き篭もっていた。昼ご飯や晩ご飯のときとなると、いつも食事を控えるが、なぜかげっぷが出ていても、さらに食べ続けて、体重計に乗ってみたら、変わりがない。

 お母さんが気になって、優奈の部屋の扉を叩いたが、どうも開けてもらえなかった。扉の外で優奈に事情を聞く。

 「どうしたのかしら?」

 「何でもない。放っといてくれない?」

 すると、お母さんは離れる。

 二日目、三日目も、下痢が出てしまった。挙句に、優奈は三十二キロとなってしまった。優奈は鏡の前に、自分を見ていて、手で顔を触る。優奈の頬っぺたは、脂肪はおろか、膨らみでさえ見えなくなって、でっぱりと凹んでしまった。その手も、軽く折っても折れてしまいそうな竹の細さだ。優奈の目から、涙が出てほっぺたにだんだんと流れてくる。泣きながら、窓のところへ行く。窓からは、下のもともとはかなりの葉っぱがつく樹木が枯れたように、全ての葉っぱが落ちてしまったのが見える。根のところには星の形の薬がまだ、静まっている。

 夜になっても、優奈は窓に寄せたままだ。夜空を見ると、一つの星が夜空にうっすりときらめいている。突如、星は夜空を通り過ぎて、遂に落ちてきてしまっている。また、高いビルに覆われて、姿が見えなくなった。その星も、一瞬の輝きですらなかった。それと同時に、優奈は倒れてしまった。

 外からお母さんの声が届く。

 「優奈、今日は外食よ。おいで。」

 扉を開けると、優奈がいなくて、着ていた服しかなかった。

 「どこに行ったのかしら。全く、また服を散らかしたんだから。」

 ・・・

 優奈は目覚めると、微かな電気の光が高い方の小さい扉の隙間から届いているが、周りは暗すぎて何も見えない状態だ。突然に、その扉から声が聞こえる。

 「君もきっと美しい星になれるのです。戸惑っているより、実際に入って見ればどうですか?」

 そして、さらに誘いが聞こえるようだ。

 「さあ〜いらっしゃい〜」

 女性の嗄れる声だ。

 「その仮面らは何だ?ババア。」

 その後、新たな女性の高まる声が聞こえてくる。

 「気になりますか?それらは、私の趣味です。」

 その嗄れる声がさらに聞こえる。優奈はどんな顔をしているのか、暗闇で全くわからない。

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