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バレンタイン

バレンタインが近くなった僕は少しそわそわしていたようにも思う。彼女がいる状態で迎えるバレンタインというものは、いわばもらえる確約のようなものがあると言っても過言ではなかろう。しかしながら、それでいてもらえなかった時の寂しさを考えると悲しくなるので期待しないようにはしていたが、留美が「今日は渉の家でゆっくりしたい」とあえてこの2月14日に言われたものなら男なら誰だって期待してしまう。

確かあの日の留美は付き合って初めて手作りのものを食べることもあって、恥ずかしそうにチョコを差し出していた。普段見ない姿に自分だけが見ている優越感もたくさんあった。

手作りを会社で配っている様子もなかったけれど、あのキスの相手とはどうなったんだろうか。


「気になるわよね、キスの相手」


バレンタインの留美の心情よりもそちらの方が気になるのは当然のことだ。

もし、その相手が会社にいたとして浮気をしていたとすると留美は2年以上も浮気をしていたことになる。それはそれで謎案件となってしまうのだ。


「見に行ってみる?」


男は覚悟を決めなければならない時もある。


「でも、どうやって探しだすんだ。」


「とりあえず1日密着ね。」


僕たちは朝から透明な魔法のもと後をつけていた。

「渡すとしたら昼休みね」


昼休み人混みの中で追っていたら留美も姿を見失ってしまった。

結局探したけれど見つからなかった。


近くに行かないとロザンヌの魔法も使えないと落胆していると僕の見たことのある同僚の女子が話しながら歩いてきた。「ねーねーどっちと付き合ってると思う?」


「勝と湊でしょ。留美なら勝だと思うけどな。」


「やっぱりね。今も勝と抜けて行ったもんね。」


僕と彼女はまだ3ヶ月しか付き合ってないんだぞ。

一体どういうことなんだ。


「ねぇ渉。彼女の元カレのことは知ってるの?」


「いや、知らないな。」


「あなたと同じように隠していたけれど疑われていた。別れた後も仲良くしていた、という可能性が出ていたわね。」


僕は一体何をしにきたのだろう。

浮気相手を探しにきたのだろうか。


「あ、来たわよ。覚悟はいい?」


「あぁ。」


《もう付きまとわないでほしいって伝えたけれど、この前のキスは少なからず私にも責任がある。しかもキスのことは渉との約束があるから隠し通さないと。》


「何よ、約束って。」


僕と彼女で交わした約束。

それは、サシ飲みに行った時に起きてしまった出来事については絶対にお互いに隠し通すということ。

どうぞ、ご勝手にと言っているわけではない。

僕が聴きたくないだけ、ではなく。それを言ったことにより関係性が変わるのが嫌で、何度か起きてしまうのだとすれば僕の魅力不足だからその時はそれとなく別れてほしい。ということ。


つまり言うならば、僕たちが別れた原因はそこにあった可能性が高いことを僕はツアーに出かける前からわかっていた。

僕はあんな約束をしたのにもかかわらずこんなことをしている。


本当に情けないものだ。


良い方向に捉えるならば、勝は留美に飽きて他の女の所に行ってしばらくはまた普通通りだったが、何かが起こって別れるに至った。

と言うことくらいか。

旅は長くなりそうだ。

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