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秘密の丘

僕と留美は付き合っていることを内緒にしていた。

男女のことというのは話題に上がりやすく、飲み会などで少し話したことが大きくなって話が戻ってくることが多いので二人ともそれが嫌で二人だけで楽しもう

と決めていたのだ。


とは言っても僕の家の近くはよく同僚が通るので極力二人では歩かないようにはしていたが、たまたま留美がものそごく酔っていた日があって外を二人で散歩したいと言い出したので人が通らなさそうなところを夜中に二人で歩いていたのだけど、僕の仲の良い同僚を見つけて焦って逃げてしまったら訳の分からない通りに出てしまってネットで検索しても元に戻れる自信もなかったのでフラフラ歩いているうちに朝が来ようとしていた。


留美も流石に酔いが覚めたらしく、せっかくだから日の出を見ようと高いところを二人で目指した。

僕たちはこの丘に来るまで今まで話したことの無いような深刻な話からどうでもいい話までたくさんしたけれどなぜか僕が覚えているのはどうでもいい話ばかり。それはきっとどうでもいい話をしているときに、こんなにどうでもいい話ができる二人ならきっとずっとやっていけると思ったからだ。

たまに出る彼女の心理学のウンチクもよく覚えていて、あんまりに自慢げに話すものだから可愛くて知らないふりをして聞いたものだ。僕はすごく楽しかったのだけど君は違うのかい、留美。


「あんたさ、暗いわよ。

女々しいというか頼りないというか、そんなんだから振られたんじゃないの。」


「分からないんだ、本当に。情けないけどね。」


「じゃあ今回は選ばせてあげる。どこからがいいかしら」


「じゃあ丘に着く1時間前から」


僕がこの時間を選んだのには明確な理由がある。ずっと楽しく話をしていたのだけれども一瞬曇る時があったのだ。その時の僕は歩き疲れたのかと思ったけれどもしかすると違ったのかもしれない。


「留美、疲れた?大丈夫?」


「うん、ありがとう。」


《本当に気がつくの早いな、渉は。この気が回るところにも惚れたんだよね、でもごめんね、酔ったのは他の男に飲まされたからなんて言えないし、言ったら傷つくよね。でも二人で飲みにいくって言うべきだったかな。》


なんだって、留美は確かにモテるし、公開してないと言うことはお誘いがあっても不思議では無いのだ。

でも二人で飲みにいくときはいつも言ってくれていた。ということは言ってないさし飲みは他にもあってそれは言えないようなことがあったってことにもなる。


「まだ聞きたい?」


「当たり前だ。そのためにいるんだ。」


《キスされたなんてもっと言えないし。でも渉、酔った勢いだって言ったら許してくれるかな。》


キス、ですか、留美さん。流石にそれはお仕置きレベルですよ。


《逆に怒ってお仕置きだ!なんて言ってくれるくらいの強引さがあってもいいのにな。》


「だってよ、渉。」


「僕は冷静な僕でい続けようと思ったんだ、彼女は本来僕とお付き合いするような人じゃないんだ。だから怖くてただただ優しくしていようとしたんだ。恋愛って難しいものだな。」


でも隠すような人と飲みに行ったのは間違いない。

今、急いで考えなくてもきっとわかるのだろう。と心の余裕があればきっと君のことを逃さずに済んだのかもしれないな。

そうして迎えた日の出も当たり前のように僕の記憶の中と同じ綺麗な日の出で、彼女は少し眠そうで寒いのに原っぱで彼女と一緒に寝っ転がって幸せそうな僕を見ていると何か言いたくなってしまうけれど、まだ言えることなど何もないということに気がつく。


そしていつもデートで幸せそうな彼女を見ると聞きたくなるんだ。


留美は本当に幸せだった?

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