初デート
そして、僕がやって来たのは〈ふわふわアクアリウム〉
彼女はペンギンが大好きだったこともあり、初デートは水族館の一択だった。
「早く中に入りなさいよ。」
「ロザンヌ、探したんだぞ。どこにいたんだい?」
困った顔をして僕が尋ねると、思い出したかのように説明を始めた。
「そうね。名前すらちゃんと伝えていなかったわ。私は魔法使いの、ミミー・ロザリーヌ。愛称でロザンヌになってるの。恋に悩む人を助けるためのアモーレ属性の魔法使いなの。なぜ今回、私が現れることになったかと言うとあなたが強い気持ちで自分から動いて彼女の気持ちを知ろうとした。その彼女にたいする愛情を魔法使いの女王から買われたってわけよ。ただこの前みたいに魔法を使っていくことになるんだけど、そのことを他言した場合あなたも私と同じでこのサイズの魔法使いになって二度と戻らなくなるから気を付けてね。そして、私が出来るのは当時の気持ちを教えることだけなの。後はあなた次第よ。」
つまり、手伝いはするけど結果は全く保証できないというわけか。
それでも、助かることには代わりはない。
僕は知るだけでほとんど満足なのだから。
「ちょっと待ってくれ、それと君が姿を現さなかったこととどう関係があるんだ。」
「話は最後まで聞きなさいよ。」
まだ終わってなかったんだ。
「私が姿を現わせるのは巡っていくツアーの場所のみ。途中で場所変更するなら前もって言ってくれないと私行けないからよろしくね。」
もうすでに順番決まってたんだ。
まぁ長い間でもあったし、色んなところに行かせてもらったからな。
「さぁ行くわよ。ちゃんと中まで入りなさいよ。」
一人で水族館か…勇気がいるな。
これも彼女のため。
待ってて。留美。
入った途端に過去に飛ばされたらしくまたもや急に意識が飛んで、僕は亀の水槽の前にいた。確か初デートの日、すごく混んでいたのでよく覚えてる。亀の水槽の前で僕は身を隠すことが出来た。
そして、聞こえてくる彼女の声を目を瞑って静かに感じていた。
《大好きなペンギンを大好きな人と見れるなんて本当に幸せだな。告白して良かった。渉、これからも一緒に水族館来ようね。》
彼女はあまり話すのが得意ではなく、いつも僕の話を聞いてくれていた。
だから、こういうこともあまり口には出さない方ではあったが僕は、彼女がとても幸せそうにペンギンを見ていたのをハッキリ覚えている。
ペンギンのことがよっぽど好きなんだなと幸せそうな君を眺めるのが僕も幸せだった。
そんな風に思ってくれていたなんて言葉にならないほど僕は感激していた。
それからストーカーのように3年前の僕たちをつけていたが、あまりにも幸せそうで声を聞く必要もないような気分でいた。
ロザンヌもそう感じたのか、魔法を使うことはなかった。
ロザンヌには彼女の声が聞こえているのだろう、きっと。
あの日の彼女は非常にハイテンションでイルカショーもあえて濡れるところに座って、二人で濡れて楽しく過ごしたのを覚えている。
《渉、濡れるの嫌がってなくて良かった。渉がいてくれたから私の今日はこんなにも楽しくなった。》
そして、再び来た彼女の声に僕はやはり最後まで幸せにしてやれなかったことに後悔することしか出来なかった。
こうして、今日の水族館ツアーは終わった。
流石に僕も仕事があるので、毎週土日にしか行くことは出来ないが時間をかけてでも知っていきたいと思っている。
その旨をロザンヌに伝えると
「君は本当に彼女のことが好きなんだね。」
と微笑んでいた。




