別れたあの日
僕らは今、僕の部屋でコンビニから帰ってくる留美と僕を待っている。
「彼女の気持ち聞いたらどうするの?」
「気持ちによるかな」
玄関の音がして、帰ってきたということが分かると僕らは静かに見守る。
これが、僕の最後の思い出ツアーとなる。
彼らは帰ってきて、二人で飲もうと缶を開けて少し話すと、彼女は泣き始めた。
その時の僕は焦って何か辛いことでもあったのだろう、だから、宅飲みをしようと言い出したのだと思って
「何かあった?話聞くよ。」
そう言った僕から彼女が発言するまではかなりの間があったことを覚えている。
これは魔法で聞く最後の心の声
《渉、私はあなたのことがやっぱり好きで、こうやって二人で麻婆豆腐食べて、美味しいねって楽しく話して、グタグタしてたまには遠出して、星空なんか見たりして、私は渉との時間そのものが好きだった。
だから、この先もずっとずっと一緒にこうやって過ごしていくんだろうなって、いつか二人の間に子どもも出来たりして楽しく過ごす姿を私はずっと二人で初めて星空を見た日から考えてた。
けど、渉は違ったのかな。菜々子からも指輪もらうんじゃない?なんて言われて舞い上がって、でも、渉は私にプロポーズはしなかった。それが答えなんだよね、渉。
私じゃ結婚相手にならないってことなんだよね。渉、渉は幸せだったかな?
こんな問いを続けながら付き合うのは少し辛いんだ、ごめんね、待てなくて。
大好きだよ、さようなら》
「ごめんなさい。渉はいつも優しかった。でも、これから忙しくなるし、ここにずっといられるかも分からない。別れてほしい。」
彼女の心の声と生の声を聞いて、言葉が出なかった。
僕は今の彼女を追いかける資格があるんだろうか、もうこのまま会わない方がいいのではないか。
そう思っているうちに昔の僕は別れを承諾して彼女は部屋を出て行った。
ロザンヌと目を合わせて現実に戻ってきた。
「行きなさいよ」
「もう会う資格なんて」
「だから、そういうところだって分かんないの?あんな彼女の想い聞いてまだ分かんないの?」
ロザンヌは強い口調で告げた。
僕は留美に勇気を出して電話をかけるこにした。
心臓に鳴り響く呼び出し音は今までにないくらい大きく聞こえた。
「もしもし、渉?どうしたの?」
出てくれたことに嬉しくなって少し声が上ずってしまった。
「今から会えないか?」
彼女はすんなりと受け入れてくれた。
どうやら僕の部屋で話がしたいらしい。
僕は留美に渡せなかった指輪を持って駅に迎えにいこうと思ったが、待っててほしいと言われてロザンヌと待っていた。
しばらくすると、彼女は僕の部屋に入り少し緊張した顔でいつものように僕の正面に座った。
彼女は前とはまた違った美しさで僕を見つめる。
留美が彼女だったなんて未だに信じられない。圧倒されて言葉が出ないが一生懸命に言葉を紡ごうとしたその時、見えてしまった。
僕は、見てはいけないものを見たような気がした。
いや、見てはいけないものなんかではない。だがしかし、今の僕にとっては目にしたくないものが見えてしまったのだった。
次回最終回です!




