夜の藤
ゴールデンウィークの旅行ということでフラワーパークに来ているわけだが、ここ見所は夜の藤のシャワーだ。
下から照らされた藤がいくつも連なっていて、シャワーみたいになっている。それがいくつもあって藤トンネルが完成するのだ。
残念ながら人が多く綺麗に写真を撮るのは留美も難しく、立ち止まると怒られるのでトンネルでは写真ではなく、スマホの動画を撮ることにした。
「はーい、立ち止まらないでください」
いくら、警備員の人が叫ぼうとも中国人などの外国人も多く、立ち止まって写真を撮る人もかなりいた。
そんな時だった。
「あれ?留美だよね、てか深川くんも」
そう、ここから。
ここから全てが始まった。
そう、崩壊の全てが。
まぁ見に行っている僕ですらまだ気付けていなかったが。
「あぁ、なんでいるの?」
「そうだよ、菜々子フラワーパーク来るなんて言ってなかったじゃない」
そこに僕の知らない男と現れたのは、留美の同僚でもあり、僕の同僚でもある神奈川 菜々子だった。
「え、二人付き合ってるの?じゃないとこんなところ来ないよね。へぇ知らなかった」
「ちょっと、菜々子。誰にも言わないでよ」
「分かってるって」
怪しい、怪しすぎる。
いかにも口軽そうだし。
「深川、幸せにしてやんなよ」
と俺に一言言って、恋人であろう男とどこかへ去っていくのだった。
「さぁさぁ、魔法の時間ね」
「あぁ」
《あぁ、菜々子にバレちゃった。大丈夫かなぁ、みんなにバラされたら色々面倒だしな》
僕だって面倒なのは承知している。
でも、記憶が正しければそんなに聞かれた覚えはないので、誰が知ってて誰が知らないのかも僕には分からなかったのだけど。
本人はかなり聞かれたのかもしれないな。それが嫌だったのかな。
《でも、渉と付き合ってて恥ずかしいことなんてないし、気にすることないよね》
「ちょっと渉、何照れてるのよ」
「ロザンヌが聞かせたんだろ」
僕が彼氏ってことに誇りみたいなものを
持っていてくれたのかもしれない。
そう思うと嬉しくて仕方がなかった。
僕たちはそんな中、夜の藤を楽しんでいた。
「 そういえば、買い物は良かったの?」
「渉ってさ、私の買い物に付き合う時嫌な顔しないけど、嫌じゃないの?」
「あぁ、それは俺も買い物好きだからかもしれない。後、留美がいいと思うもの俺もいいと思うことが多くて」
「最近、何、デレちゃって」
「べ、別にそんなんじゃない。留美が好きな、だ、け」
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
過去の自分を見てこんなにも恥ずかしくなるなんて思いもしなかった。
留美、今すぐ会いたいよ。
友人に付き合っていることがバレただけで、コロコロとことが進んでいるなんて思いもしなかった。
この時の僕も、今の僕も。




