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ゴールデンウィーク

この年のゴールデンウィークから政府の計らいで10連休を獲得、とまではいかなかったが、例年よりは休みが多かったので栃木までちょっくら旅行に行こうと1泊2日で行ったのだった。


特急列車はなかなかいいもので、東京からだと段々と田舎に向かっているのが分かって穏やかな気持ちになる。


フラワーパークに向かったのだけど、さすがの連休で人が多くて困ったものだった。あの時混んでいてあまり見れなかった景色を見ながら進んでいく。

ついに、僕と留美が別れるまで一年を切った。このツアーを始めて、留美の気持ちを知るようになって別れたばかりのどうしようもないどん底から少しは救われたような気がする。もちろん安心し切っているわけでもないが、二人の時間は決して無駄じゃない、こんなツアーをしながら本当に彼女は嘘をついてるわけではなくなんとなく冷めてしまったとかそういう理由なんじゃないかって、実際に僕がツアーを始めてから彼女の異動の話は確定していて、次の9月でいなくなるらしい。

この時の僕は異動のチェックをしていたのにも関わらず、そこに湊の名前があったことに気付いてすらいなかった。


フラワーパークに着いたが、今はもうシーズンオフであまり人がいなかった。


ロザンヌが現れたけど、彼女は無言を貫いていた。


「どうしたんだ、ロザンヌ」


「いえ、なんでもないわ、もう時間がないわね」


「何の時間だ」


「自分の頭で考えなさい」


やはり僕はバカなのだろうか。ちっともロザンヌが言おうとしていることが分からない。


「じゃあ、行くわ」


最近のロザンヌは何か考えている様子だが、僕は彼女の考えてることがさっぱり分からなかった。


「うん、よろしく」


着いたら人に押され押され人混みだと言うことをすっかり忘れていた。

留美たちを見失わないようにしないといけない。


「いやぁそれにしてもすごいね、人が」


「まぁゴールデンウィークなんだし、仕方ないんじゃないかな」


「今年はゆっくり出来るし、良かったね、まさか泊まりで来れるとは思わなかったよ」


この頃の僕たちは、少し落ち着いてきたというか熱く燃え上がるようなこともなく、ただ冷め切っているわけでもなく、ちょうど安定していて、この前の花見でさらに仲を深めた感じはしたけれど特に危ない何かがあったわけではなかったのだ。

その時が訪れるまでは。


「そういえば、留美って花とか好きなんだったかな」

「じゃないと、こないよ」


「この前も持っていたよな、そのちゃんとしたカメラ」

「これはね、父親が使わない時に借りることにしてるの、特にお花とかはこういうちゃんとしたやつの方がいいんじゃないかと思ってね」



「じゃあいつか留美が作るフォトブック楽しみにしてるよ」

「なにそれー誕生日にほしいって言いたいの?」


僕は楽しくて楽しくて仕方がなかった。

お金もちょうど貯まってきて、この旅行は留美の誕生日祝いも兼ねていたので少し多めに出すつもりでいた。彼女もその心持ちを受け入れてくれて、あまり遠慮はしていない様子もあった、かといって傲慢なわけでもなくお礼はいつも言ってくれるんだ。

僕はそんな優しい留美と付き合えて本当に幸せだった。このツアーが終わればきっと、もう君を見ることはなくなる。過去の君だけど見れば見るほどやはり好きになる。聞けば聞くほど好きになる。未練タラタラで情けないけど、もう一度付き合いたいとかそんなことは望んでいない。

でも、でも、君の顔をもう見れなくなると思うと涙が溢れて止まらない。


「泣いてる暇があるなら聞く?」

「そうだな」


《渉と付き合い始めてからすごい幸せな誕生日を過ごせてる気がするな。渉の誕生日は記念日だし、ちょっと頑張っちゃおうかな》


「良かったわね」

「あぁ、ほんとうに」



こんなに幸せに浸ってていいんだろうか、もっと僕は考えるべきじゃないのだろうか。

なぜ、振られたのか。

それなのに全然見つからない理由と幸せそうな君の顔が思考を滞らせてしまうんだ。


そして、訪れる。

壊れ始めた、あの時が。


今から思えば、僕たちは弱かったのかもしれない。

そのくらいのことでこんなにも作り上げてきたものが少しずつ少しずつ崩れていくなんて。

それにお互いが気付けなかったなんて。

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