花見
ホワイトデーのお返しデートがしっかり出来るか分からないということで、スパスパに行ったのだが3月の下旬になんとか花見デートを予定に組み込むことができた。
河川敷からゆっくり見れるところがいいと行って、あまり人が集まらない知る人ぞ知る、みたいな河川敷に行き、一緒に二人で作ったお弁当を食べた。確かに、有名どころに比べたら少し負けるかもしれないが、一つの木を二人で楽しむだけでも俺はすごい楽しかった。
俺はあの河川敷に来ていた。
今はもう夏なので、桜は咲いてないが今でもあの言葉を思い出す。
「浸ってないで、行くわよ。」
「あぁ、ごめん。」
やはり何度見ても桜というのは綺麗なものなんだな。今まで俺は花見というのがあまり得意でなかったのだが、彼女と付き合い始めて、いいもんだなと思ったのだ。
「うわ、やっぱり綺麗だね」
「ちゃんと見るのは俺、初めてかも」
「私もだよ」
改めて見る桜に僕たちは圧倒されていた。
「なんか心が浄化されてくね」
「別に留美は汚くないだろ」
「わかんないよ」
と微笑えみながらお弁当を食べていた。
「なかなかいい出来じゃない」
「ほとんど留美が作ってたよな、ごめん、でもすごく美味しい」
「ありがとう、今度はもっと頑張っちゃおう」
休みの日だったから人まぁまぁ多かったのだが、桜のせいなのかゆっくり二人だけの時間が流れているような気がした。
そうすると、突然留美が歌を詠んだ。
「春霞 たなびく山の 桜花 見れどもあかぬ 君にもあるかな」
僕はつい、口に含んだビールを吹き出しそうになってしまった。
「急にどうしたんだよ、恥ずかしくなっちゃっただろ、ま、まぁ嬉しいけど」
「渉ー照れてるんだ、かわいい」
「からかうな」
留美も少し酔っていたのだろか、珍しい。
「さぁここらで聞いとく?」
とロザンヌが尋ねてきたので、もちろん僕は
「うん、聞く」
と言った。
《なんか定期的に気持ちを伝えておかないと離れていっちゃいそうだしな、もう大人だし、好きってのもなんか違うかなってなかなか名案よ、私》
「彼女も嬉しそうじゃない」
「本当にあの時はびっくりしたんだよ」
楽しい時間はあっという間で夜桜を楽しんだ後、明日も朝から仕事だ、ということでいつもより少し早めに解散した。
もう少しずつ衰えているの分からないが、外でずっといると体力の消耗が早い。男の僕がそうなんだ、きっと留美はもっと消耗してるはず。
駅まで向かいながら、年を取ったね、などと話していた。
「夜桜も綺麗だったね」
「そうだな、花見もなかなかいいもんだ」
「私もそう思った、じゃあまたね」
僕はここで別れたくなかったのか、改札に向かう留美を走って呼び止めた。
「留美」
「どうしたの、渉」
そして、息を整えて
「明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほううらめしき 朝ぼらけかな」
「俺の家に泊まってけって言いたいのかな?」
と彼女はにんまりと笑って聞いてきた。
素直に言えない僕は恥ずかしくなってしまった。
「じゃあ、行きますよ、あなたのお家に」
「なんか、ごめん」
「嬉しかったから許す」
と言って僕たちは一緒に家まで歩くことにしたのだった。
《渉もなかなかかわいいとこあるじゃん、そういう素直じゃないところも好きなんだけどね》
「まぁ今日はこんなところかしら」
「そうだな」
「最近、私、あなたと留美さんの惚気を聞かされてる気分になるのだけど」
「そんなことないから」
「まぁいいわ、またね」
と僕は家路につく。
彼女の詠んだ歌
(春霞がたなびいている山の桜はいくら見ても飽きないようにいくらあなたに逢っても飽きることはない)
僕の詠んだ歌
(夜が明けてやがて日が暮れてあなたに会うことが出来ると知っているけれどあなたとお別れしなければいけない朝が恨めしい)




