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殺気に混じって感じる、抜けた感情

 スノードロップは、多分本気だ。弱体化の弱点を解っていて、それでいて視界に入らない遠距離から攻撃してくる。


 正直アザレアの病気が無ければどうなっていたかわかったものではない。さすが平等と公平をかざして生きるエゴの化身だ、場を掻き乱すのには特化している。


「ところで、どうして攻撃してくるのですかね? 意味がわかりませんわ」


「こうやってやって見せれば、俺が手を引くとでも思っているんだろう」


「尚更意味不明ですわ」


「ただの殺し合いだよ」


「あぁ! それなら納得ですわ!」


 ……殺し合い、してるだよな俺。あいつと。


「あなた様、ミサイル来ましたわよ?」


「半分は俺がどうにかする。半分はお前がどうにかしろ」


「了解ですわ!」


 嫌になる戦い方をしてくる。まさかあのポンコツロボットがこんな好き放題出来る様なポテンシャルを持っていたとは。こんな事ならとっとと破壊しておくべきだった。


 落としても落としても飛んでくる爆発物。俺は推進力を弱くして下に落として、アザレアは真正面から破壊して。それを続けても続けても飛んでくる殺意の塊。これで死んでくれといわんばかりの物量を容赦なく浴びせてくるのは、恨みがあるからなのだろうか。


「あなた様! 上ですわ!」


「あ……? ……どこにあんなの作る技術があったんだよ、劣等種の癖して……」


 大きい、とても大きい、何故こんなに同じ手ばっかりと言いたくなる様な、いわばごり押し。


 人が十人縦に並んでもまだ足りないような、非情な大きさのミサイルが、ゆらりと影を作っていた。


「あ、あれ城の地下に置いてあったミサイルですわね」


「地下? ……って事はあの豚野郎の置き土産か。毒撒くわ爆発にさせるわ、迷惑極まりない奴だな」


「さすがにあれは、わたくしではどうしようもありませんわよ」


「どうにかするんだよ、推力は俺が弱めればいい。お前はそのまま上に投げ飛ばせ!」


 ただの質量兵器と化している巨大な塊が迫ってくる。右に避けようが左に避けようが結局爆発に巻き込まれるのなら、上に飛ばすしかない。


 どうやったって、それが最善の方法。……だと思ったが、他に方法を思いついてしまったのだから、やるしかないだろう。


「よいしょ。このまま上に投げるんですわよね?」


「いや……、飛んできた方向に投げろ」


「あっちですの?」


「そうだ」


「えい! ですわ!」


 まるで石でも投げるかの様に、体の数倍の大きさのミサイルを軽々投げ飛ばした。俺の力が相乗しての事なのだが、随分怪力に見えるのはあいつが異常だと言う事を知っているからだろうか。


 ミサイルはそのまま飛んで来た時に発した煙を辿って、ぐんぐんと飛距離を伸ばして行く。いずれ視界に入らなくなった所で、消息が途絶えた。


「……爆発しない……?」


「あっちの動きも止まりましたわね」


「何かしらに接触したら起爆する筈だ。……あいつらが止めたってのか?」


「そういう技術は教えていませんけれど」


「そうだとしても、爆発していないのは事実だ。そう言うのをやって見せたって事だろう」


「どんどん成長しますのね、スノーさん」


「あぁ言うのをする度に、人から掛け離れて行くと言う事を理解していないんだ、あいつは。……アザレア! こんなのいつまでやっていてもきりが無い! 本体を叩け!」


「でもそれじゃああなた様が狙われてしまいますわ」


「いいから行くんだよ!」


「あっ」


 瞬きをしている内に、アザレアの拳が目の前に移動していた。


「これでも、言った方が良いですの?」


「……メイド風情が、ふざけているのか」


 アザレアの手には、銃弾が握られていた。俺に向かって飛んで来た弾を、今さっき一秒前に飛んで来た弾を、とっさに素手で掴んでいた。その場所は脳の真ん中、当たればどんな生物でも死に絶えるであろう急所。


 正確で、確実に狙って来ていた。


「とりあえずあのふざけたロボットはぶっ壊す、俺が王である事を、主従関係を叩き込む」


「……油断しましたわ」


「どうしても俺を殺したいようだが、やられる覚悟が無いからこうやって何度も防がれているんだ。やられる覚悟をもってすれば、特攻でも何でも出来ると言う物だ」


「あなた様」


「あ?」


「私達は負けましたわ」


「…………お前、誰だ?」


 アザレアは人の三倍四倍はある腕に、体全体を掴まれていた。ただつかまれているのなら別に驚きはしない、ただ人の数倍でかい手が存在していたと、心の常識を改めるだめだ。しかし、その右側面から赤く発光する細長い物体が、首元に突きつけられていたのだから、戸惑いもする。


「元王様。GM-3を覚えていらっしゃいますか?。」


「……片方は異常な大きさの手、もう片方はビームサーベルとかいう奴か? ……はっ、見ない内に随分とイメージチェンジをしたじゃねえか」


「褒めて頂きありがとうございます。」


「お前のご主人はどこかと聞いている」


「誤りを感知。その質問は以前に聞かれていません。よって「聞いている」と言う発言は誤っています。」


「……今までの俺なら確実にキレていたろうな」


「メイドも同意見です。」


 異様に風変わりはしている。子供から大人に成長した後かのように、まるで別人の姿をしていた。ただそれでも、その馬鹿な中身は以前と変わっていないらしく、今までのポンコツっぷりをフルに発揮しているのが手に取れる。


 その馬鹿さが裏目に出てしまっているのがやるせない。とうとう人の要素である「人間の形」であることすら捨ててしまっていた。これでは戦闘をするだけの機械だ。


 それでも、馬鹿は馬鹿なんだ。姿形を変えようと、中身には変わらない。


「俺の前に出て来たって事は、どうなるかわかっているんだろうな? 俺の力が恐ろしくて、怖くて怖くてしょうがなくて、遠くから攻撃していたんだろうが、そうやってのうのうと姿を現した以上俺の勝ちが決定した様なものだ」


「メイドに手を加えれば下に設置してある地雷が爆発します。」


「……爆発爆発って、お前らそれしか無いのかよ。……芸が無い」


「手を止めて頂いて感謝します。「足元に敷かれた地雷は弱体化ではどうする事も出来ない」と弱点リストに加えておきます。」


 ……この糞メイドロボ、一丁前に鎌なんてかけやがって。馬鹿なら馬鹿らしくお花と天気の会話でもしていればいいんだよ。……それをこいつは、弱点リストなんてふざけきったゴミを生み出しやがって……。ゴミからゴミを生み出すなんて相当優秀なロボットなんだろうが、生み出したところでゴミはゴミなんだよ。大人しく加熱処理でもされておけば良いんだ。


 スノードロップもスノードロップだ。わけわからない名前しやがって、仕舞いには姿さえ現さず味方に全部やらせる卑怯者だ。あの銃弾を撃ったのも、ミサイルを撃ち込んだのも、地雷を設置したのも、どうせ全部あのロボットがやったんだろ。それをあいつは影からこそこそとこっちの動向を伺うばかりで。……腹が立つ。


「……おいスノードロップ! お前も近くにいるんだろ! お前こう言ってたよなぁ! 私の故郷を馬鹿にしないで、ってなぁ! その故郷でミサイルを撃ち込んで! 森を燃やして! 挙句地面に地雷だぁ!? 仲間を傷付けるのを嫌っていたお前が! 仲間だった奴を好き勝手改造して! 仲間だった奴を、その改造した奴を使って傷付ける! 自覚してないかも知れないがなぁ! それがお前のやり方なんだよ! 実に面白いなぁ! 実に面白い趣向だなぁ! 皮肉なもんだよなぁ!


…………いや、お前の作戦には本当参ったよ。いつ言ったかは覚えていない俺の弱点を、弱体化の仕様を覚えていてこの作戦を立てたんだろ? この遠距離攻撃は確かに参った。正直ちょっと死を覚悟したくらいにはな……。……だがなぁ! そんな方法を持ってしてもお前は俺を殺せはしない! 相手を殺そうとする確固たる覚悟があれば! 自分を殺す覚悟があれば、相手を殺す事だって容易に出来た筈だ! それが出来なかった辺り、無かったんだよ! その覚悟が! そうやって自分の甘さに甘えて! トチ狂って! 自分の故郷を破壊する暴挙になるんだよ! お前の甘えがこうさせてんだよスノードロップ! お前は俺が……っ!」


「……もう止めて」


「……よう。目、赤いぞ」


 その角と赤い目は、怒りから来ている感情の表れ。こんな煽りで作戦を捨ててのこのこ出て来るなんて、救いようも無いアホなんだろう。


 覚悟も何も出来てない甘ったれだから、そうやって理念も尊厳も無い行動が出来る。何でもかんでも中途半端な劣等種。


 こんな奴の何が知りたくて俺はここに居るのか、さっぱりわからなくなってくる。それでも、何かを知りたくてここにいる。


 俺も、もしかしたらアホなのかも知れない。

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