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遠回りするべきではない

「で、その力はどこで身に付いたんで?」


「知らねえよ。早く探せ」


 犯罪者の言う事を聞く耳なんて俺は持っていない。


 お前が倉庫に武器が置いてあるからとか言ってついでに探し出したんだろうが、結局探しても見つからないのはどう説明する。それらを踏まえて無駄口を叩く暇は無い。


「私も驚きました。あの時、体に剣が貫通して血がいっぱい出たんです。激しい痛みにも襲われ、あぁ死ぬのかなって思った矢先にあら不思議、その痛みが綺麗さっぱり消えたんですもの」


「あぁ、そういえばお前刺されたといえば、痛みと出血は弱体化したとはいえ傷自体は塞がってないんだろ? 放っておくとそこから腐るんじゃねえの?」


「大丈夫ですよ、傷の治りは早いんでそこそこは塞がっています。……もしかして、心配してくれたんですか?」


「お前も治りが早いタイプか……、化物は回復したがりだな」


 こいつも、スノードロップも、人から離れているのは見た目だけでは無いらしい。剣で刺されたとなると、常人ならば完治するのに相当な期間を要する筈なのに、雑種は傷が出来るとなると、人並み離れたスピードで治癒していく中身までもが化物だ。

 

 ただそれでもスノードロップとの違いはある。獣臭さが見た目に良く出ている事。性格。名前。種族。


 だから何だと言う話だが。


「お前も、って? もしや他に誰かいたんですか?」


「いいから早く探せって、待ってるのも疲れるんだぞ。余計な口を開いている暇があるのなら今やっている作業を終わらせろ」


「僕のナイフちゃ~ん~。どこ行った~?」


 いつまでもどうでもいい武器を探している時間は無い。今はまだ、兵がうろついているらしいから足を伸ばしているが、それらが散れば下に下りなければならないと言うのに、見つかるまで犯罪者の武器を探している暇は無い。


 そもそも無くても良いだろ、あんな人を殺す程度の事しか出来ないしょっぱいナイフなんて。どうせ人を殺す事にしか使わないんだから。


「雑用の。下の兵は消えたか?」


「あ、私の事です?」


「そうだよ、俺の言った事を最優先にするんだ」


「ちょっと待ってて下さいね。……えぇっと……。……いえ、まだ何人かの音がします」


「……ちっ、いつまでも下でたむろしてんじゃねえよ、散って他の犯罪者でも見張っておけよ給料泥棒共めが」


「あれー? 呼んだかい?」


「てめえは呼んでねえよ犯罪者! 黙ってろ!」


 あなた酷いなー。と言いながら作業に戻って行った。まだ見つからないとは聞かない。どうせ見つからないだろうから。


 物事は諦めが肝心だ、その諦め時を逃すと、これから起こるであろう目の前に吊るされた幸先を逃す事になる。だから自分との折り合いを付けてこれから起こる為の幸に容量を空けておく、それが要領の言いやり方だ。それが王になる為の秘訣だ。それがあるから俺がいるのだ。


「あのあの! じゃあオウサマさんに質問です! ここの外ってどんな場所なんですか?」


「は……?」


「「海」って綺麗なんです? 「山」って高いんです? 「洞窟」って危険とロマンが満載なんです?」


「待て待て、何だお前、何だいきなり。世界の回り方には順序と順番って物があるだろう、回って無いんだよお前の質問は」


「ええっと、全部聞いた話なんですけど、「世界は綺麗が溢れている」って言ってました」


「……毒を撒いたり、初対面の人間を刺したりしてくる様な奴がいる世界が綺麗だって言いたいのか?」


「よくわかりませんが、それはとてもハツラツとした世界ですね」


「何言ってんだお前馬鹿じゃねえの本当にアホかよ」


 アホ過ぎて全く話にならない。外の世界がどうとか言っている場合か、こんな場所に押し込められ虫が泣く様な思いをしているのはお前だけじゃなく俺も同じだ。


 それとも外に出たくないのか? こんな臭い場所が良いって事か?


「お前はここを出たいのか? 出たくないのか?」


「勿論、出る事が出来るのなら出てみたいです。ずっと外の世界を見てみたいと思っていました。ですが……、出たところで私には行く場所が無いんです……」


「それならいい場所がある。衣食住付きの、俺の城で働く事の出来る権利をやろう」


「お城!? お城ってあの大きいお家の事!?」


「あぁ、俺の城は街中で一番でかい建物だ。そこで働けるとなると光栄だろ?」


「凄い! そんなところに置いて貰えるのですか!? うれしいです!!」


「おう、きびきび働けよ? ……ってそんな事はどうでもいい、そろそろ下の連中もいなくなったか?」


「えぇっと……、いえ、まだいますね」


「だろうな。……あーあ、めんどくせえ、いつまでこんな所に……」


「というより、人数が増えている様な……」


 ……増えている? 音が……?


 だったらそれは、誰かがここに上がってきているって事か……?


「何人上がってきている? 人数によっては口封じを……」


「いえ、そうではなく……、これは……。………………あ。  ここに私達がいることがばれています!」


「あぁ!?」


「ナイフあった! 僕のナイフあったよこれ!」


 一番望んでいない出来事が、刻一刻と歩み寄っている。

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