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それならば、こうすればいいんでしょう

「俺は……何をしていたんだ……?」


 気付いたら瓦礫の上で寝ていたとか笑えないから嘘だと言ってくれ。嘘か? 嘘なんだろ? 


 …………まぁ現実だよな、現実だわ。このほこりっぽさと薄暗さが入り混じる存在価値を根本から訂正しなければならない様なゴミ同然の場所を夢で見るほど俺も落ちぶれていない辺りは紛れも無い現実と言える。


 しかも暗いし。……明かりは上の穴から来る光だけか? やってられねえな、しかも何で天井穴開いてんだよ。


 そうだ、あいつらは? あいつらはどこ行った。


「スノードロップ! アザレア! どこだ!」


 …………。

 ……。

 ……嘘だろあいつら。まさかまたか? また王を放って好き放題してんのか?


 ほーう……やってくれたな、今度は謝る程度じゃ済まされねえぞ。首にヒモ括り付けて町の端から端まで引きずり回してやるからな。


 マジで糞の役にもたたねえよあいつら。あーあ、俺はなんて不幸なんだろうか、こんな所に押し込まれるわ王に対する敬意を払わねえ奴らばっかり味方に付くわ、不幸すぎる。


 しかしいないってのはどういう事だ、はぐれたにしては不自然だよな、こんな意味もわからない所で一人ってのは流石におかしい。……って事はやっぱり好き勝手に動いているのか。


 えっと……、あ、そうだ城の下に行こうとしていたんだったっけな。それで床を壊して……、あー……、床を壊して? 何でその床は壊れていないんだ? ……いや、違うな、違うわ。あの天井の穴がその壊した所だ、だから足場を無くしたからそのまま降ってきたって事か。ややこしいな。


 ……何か忘れている気もするが、まぁいいか。どうせどうでも良いことだ。


 て言うかだ、て言うか。


「くっさ!!」


 何だよこの悪臭! 四方から取り囲むようにして俺を抱く激臭は! 鼻につくなんてものじゃない、何か人体に悪影響を及ぼしかねない刺激臭は何なんだよ。取り敢えず臭いを弱めなければ確実に寿命が縮む。それだけは避けたい、生きる人間国宝としての体が警告を出している。


「……ふぅ、まぁマシにはなったな」


危なかった、俺の大切な体と命を削るとこだった。


 ……お、机の上に飲み物があるじゃねえか、喉が乾いてやってられねぇよ。


「くっさぁ!!?」


これだ! 臭いの発生源これじゃねぇか! くっさ!! うぉ……、おぅえっ!!


 絶対今寿命縮んだ! 俺の余生が殺された!! 何だよこれ化学兵器か!? テロ起こせるレベルで鼻が曲がる! 鼻の穴が増える! 塞がる! どっちだ!?


「こんなもの無くなれぇ!」


 遠投。持てる限りの力を振り絞っての投擲。


 瓶に入った多分緑色ぽい何かの液体は、円を描く様にして山なりに飛んでいき、地面に当たるとガラス片と共に飛び散った。様な音がした。


 嗅覚を弱体化していなければ不味かった、あんなもの存在してはいけない、実際殺人道具にも採用された事のある使い古したサイクロプスの腰巻きより臭かったかもしれない。生きていただけで奇跡である。


 ……すげー、余計な時間を過ごした気がするぞ。早くあの豚に罰を与えねばなるまい。与えねばこの国を手に入れる事など出来ないのだ。


「そ、そこで何をしている! 貴様は誰だ!」


 どこからか投げられ、多分俺に対し飛ばされた叫び。その声はどこか聞き覚えがあったが思い出せない、顔も回りの暗さから見えない。


 つまり誰だと言いたいのはこっち側である。


「相手から先に名乗らす気かぁ!? 自分から名乗るのが礼儀ってもんだろうが!」


「そんなものは持ち合わせておらんわ! 私は誰かと聞いている! メイドの連中か!?」


「これのどこがメイドに見えるんだよ声でわかるだろ低脳が! 理解出来てんかよてめぇ! お前が名乗ればこっちも名乗るんだよ!! 」


「メイドの者で無い!? だとしたら尚更入ってはならない存在ではないか! 今すぐにこっちに来なさい!!」


「てめぇが来いやぶち殺すぞ! 何度も言わせんな糞アホカスが!! ごたごた言う前にまず電気つけろや!!」


「付かないのだから仕様がないだろう! 誰かが天井を破るものだから断線しているのだ!」


「だったら何だよ! 断線してたら電気が付かないのか!? 気合いがたらねぇんだよ! 俺が気合い付けさしてやるからこっち来いや!」


「誰だかわからない相手に近づくほど馬鹿では無いわ! 天井を破ったのは貴様か!?」


「あぁやったんだよ! 俺が! だったら悪いか!? 天井なんぞ破ってなんぼだろうが! …………今、俺がやったと言ったか……?」


何故そんな事を……?


……あ、そうだ、俺がやったんだ、思い出した。


 確かアザレアを殴るのに熱中し過ぎて……、それで弱体化が周囲にまで広がったかして……、だから床が抜けたんだ。


 あぁ、それでこんな所で一人転がっていたのか。納得。


「聞いているのか不法侵入者! 今名乗り出るならば許してやると言っているのだ! この部屋は危ないんだ!」


「危ないだぁ!? 姿も見せないへっぴり腰が遠くから命令してんじゃねぇよ! 俺を誰だと思ってやがる!」


「……わ、わかった。一緒に姿を現そうではないか」


「何だ? お前一気に萎れたな」


「私だって命が惜しいのだ。武器を所持しておるなら捨ててくれ」


「あぁ、お前もな」


 まぁ、俺の武器は弱体化だから捨てようが無いけどな。


 相手が武器を棄てると言うのなら勝ち確定である。


「では、そちらに行くぞ」


そう言って、ゴツ、ゴツ、と言った重みのある足音を鳴らしながら近付いてくる。さっきの声からして男、しかも中年らしい若くない声。……どこかで……、聞いたことがあるような……、目標としていた奴の……。


「さぁ、これでいいだろう。一刻も早くここから……、ぬ……!? お前は!!」


「あ!? てめぇ! 豚野郎!」


やっと姿を表したそれは見覚えもありありの人物、というより一番の標的であったこの国の現王だった。


 聞き覚えもあるはずである、俺に毒を盛ったり爆発したりをやってくれた舐めた野郎の事を俺は忘れはしない。


「てめぇ、良く俺の前に姿を表せたな! 覚悟しろよ、歯を全部抜いて糞で作った義歯を埋め込んでやるからな!」


「そんな事を言っている場合か! まずはここから出るのだ! こんな所で争い事でも起きれば恐ろしい事に……!」


「知ったことかよ! 目の前に餌をおかれて! 止まる獣がいるものかよ!」


「本当なんだ! お前だって死にたくないだろう!? あの机の上にある瓶を見てくれ! あれはな……! ……あれ……、……瓶は、どこだ……?」


「あ? されなら捨てた、臭すぎてやってられなかったからな。あそこら辺に落ちてるぞ」


「何!? 貴様ふざけているのか! あれは城が何者かに侵略された時の! 決戦兵器だぞ!? 今すぐ啜ってでも全て回収してこい! 今ならまだ間に合う!」


「あの液体が決戦兵器? それこそふざけているのか、あんな少量の液体で何が出来るってんだ、馬鹿にするなよ」


「はっはっは! それを言うのも無理はない! あれは空気に触れればその空気が猛毒へと変わる! 毒に変わった空気が空気に触れてもまた毒に変わる! そこからなる連鎖の広がるスピードは、一日と要らず間に全世界の人が死滅するだろう! はっはっは!! あのコードネームオールデリートがどれほど危険かわかっただろう! こんな会話している間にもう手遅れだ! 人間は絶滅する!! 私も死ぬ!! はっはっは!!」


な、何だよこいつ……、いきなり笑いだしてアホかよ。


俺を脅すにしてももっとあるだろ、それを戯れ言でカモフラージュしやがって、二度爆発に巻き込んだりなんて芸の無い奴だ。人を馬鹿にした様なつまらない王だな。


「おい、お前の国と城貰うぞ」


「くれてやるわそんなもの! この部屋に入ったことをみなと共に悔いることだな旅のお方! ……いや、大量殺人者めが! ははははは!」


「うるせぇよボケが!!」


たるんだ醜い腹目掛けて蹴ってやった。勿論腹の肉を弱らせてから。


「うがぁ……っ!? ……あ……、あ……、お、お前のせいで人類が滅亡する……、お前のせいで私が死ぬ……、可哀想になぁ、町には生まれたての子供だっていたのだろうに……、それをお前は摘み取ったんだ! 死んで詫びろゴ……! ミが……。……う、……う……、うおぇえええええ!!」


「くっさ! 吐くなよこの程度で!」


「毒が……、回ってきたか……。お前も早く死んだ方が、楽になるぞ……?」


何を言っているんだこいつは、アホ丸出しでまるでお話にならない。


 そんなに死にたいのなら俺がころ…………? 何だ? この頭の痛みは……。芯の方から来ている様な鋭い痛さが……痛い痛い痛い痛い!! 何だこれ!!


「あなた様! ここにいましたか!」


「あ、アザレアか……、てめぇどこに行ってやがった……」


「それはこちらのセリフですわ! 早くここから出ましょう、何故か毒が周辺に舞っていますの」


「毒だ……? お前までふざけた事を言いやがって……、あんなもので人類が絶滅するわけ無いだろうが……」


「あんなものって……、やはり発生源はここのようですわね……。さぁお手を取って、急いで出ます」


「あぁ……」


 こんな所いつまでもいられるか、急いで出よう。真っ先に出た後で、こいつらに罰を与えれば良い。


 これでこの国は俺の物だ。

 

「あら? スノーさん? 何をしていらっしゃいますの?」


「こ、この人を……置いて行くつもり……? この人も一緒に……、でないと、死んでしまう……」


 気絶した肥満体のおっさんを担ぎ上げるようとしている劣等種、そんな事そしようとも傷だらけの体で持ち上がる様子も無く、ただプルプルとしているだけである。


「スノーさん! その方は仕様がありません! 今回の主犯ですのでもう置いて行きましょう!」


 気が合う。実に気が合う。普段なら俺もそういう考えで口に出す。しかし今回はそういう訳にもいかないのだ。


「馬鹿同士が何かやっているだけだ……、二人とも置いて俺達だけで行くぞ……」


「ですが……」


「俺が行けと言っている!! 命令だ! 走れ!!」


「…………んー!! あー! もう!!」


 アザレアは何かを決めた様に、天井の穴から脱出した。


 三人を抱えて。

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