歓迎
「いやぁ、参りました。まさか少しの暇を持て余したばかりに町に赴いたのが失敗でした」
おっさんはただのおっさんでは無く、上位のおっさん。王のおっさんだった。
道に迷って腹にナイフを刺されて、やっと辿り着いた城は俺達を歓迎してくれた。傷の手当をして、風呂に入り、正直俺の思った以上に手厚い好意を受けた。
身分の高い者に悪い奴はいない。持論である。
「いやぁ本当に助かりましたぞ。なんとお礼を言ったら良いかもうわかりませんな! はっはっは!」
「お前本当に王だったんだな、ただのみすぼしいだけの奴かと思ったら」
「そう言うあなたも王様と聞きましたな。差し支えなければどこの国の王か教えて頂けますかな?」
「サンバークだ。もう今は無いけどな」
「サンバーク……? ふむ、申し訳無いですが聞き覚え無いですな」
「は……? 何で俺の国しらねぇの? 馬鹿にしてんの?」
「いえいえとんでもない! それは幾重に完全に私の勉強不足ですな。私の無知を心広く許してほしい」
ほう、さすが王ともあれば他の奴とはおもむきが違うな。自分の無知を回りのせいにせず、自ら自覚出来るとこはさすが器の違いというとこか。
俺の国の奴等もこれぐらいの心意気があれば死なずに済んだものを。
「わたくし発言してもよろしいです?」
割って入って来たのはアザレア。
「えぇ、えぇ、ご遠慮無く」
「では失礼して。とても大きなお城ですが、何故殆ど人がいないのです?」
「あぁ、その事ですか。私は信頼できるものしか置かない主義なだけですよ」
わかる。俺も同じ気持ちで掃除をさせていた。もっとも俺と違う点は、信頼出来るやつがいなかった事だけどな。
「なるほど、感謝致しますわ」
「それでは本題に入りましょうか。お礼については決めていただけましたかな?」
「あぁ、もちろん決めている」
最初からな。ずっと決めていた。
「して、何ですかな?」
「この国を寄越せ」
「はっはっは! ご冗談がお上手ですね! ……いえいえ、失礼しました。あなた方は面白い方ですね、どうか食事を用意させますのでご一緒にいかがですかな?」
「あぁ、それがお前の最後の食事としてやろう」
「感謝の極みですぞ、旅の御一行殿」
少し待ったら人が入って来た。メイド服を着てさらりとした立ち姿。まず一礼し、それを合図に後方に付けた複数のメイドが続々と料理を運んでくる。
肉。魚。野菜にスープ。色とりどり多種多様のフルコース。
「お客様、首元を失礼致します」
首に前掛けを付けるサービス付き。良いアイディアだ、俺の国でもやらせればよかった。
メイドは「失礼致しました」とまた一礼して、ドアを静かに閉めた。
「さぁさぁ! それでは邪魔者もいなくなった所で頂きましょう! 私を助けてくださった恩人達に、かんぱーい!!」
音頭を取った。五月蝿いから止めろ。
しかし中々に上手そうな料理がそこかしこにあるな。この肉のエッジが際立って、さぞかし良い肉を使っているんだろう。素材が良ければ大体美味くなるからな、ここにある料理は絶対美味い事は食わなくてもわかる。
さて、では頂くか。
「……お待ち下さい、あなた様。スノーさんも」
美味い事が確定している最高の素材を使用した料理達を目の前にして、アザレアが静止を求めた。
こいつは罰を与えられたいのか?
「何? ろくな事じゃ無かったらお前縛って川に流してやるからな?」
「…………すみません、失礼を承知で浮かぬ事お聞きしますが……。……これ、毒とか入ってませんわよね?」
「馬鹿な。私が毒を? 客人にである恩人に? ……ほう、笑えない冗談ですな」
……どうやらろくな事じゃなかったようだ。手足を縛って流そう。俺みたいに水面に浮かぶ事は出来ないだろうから直ぐあの世行きだな。それも自然淘汰だ、仕方が無い。
いつにしようか、今日寝静まった所に集団で襲い掛かって流そうか。……駄目だ。糞国民の事思い出してイライラして来た。
「アザレア。何を確信があって王がそんな卑劣な事をするものかよ。それは遠回しに俺も侮辱しているんだぞ?」
「ですが、これ多分毒入ってますわよ……?」
「はぁ……。お前仮に違ったらどうなるか、覚悟は出来てるよな? ……おいおっさん、毒なんか入れてないって言ってやれよ」
「…………私の国でしか製造していないし外に漏れてもいないはずだが、何故わかった?」
「匂いでそう判断し、予測しましたわ」
「そうか、私も面倒臭い奴に救われたものだ……」
「毒の製造は禁止されているはずですわ。それを王様自ら手を出すだなんて世も末ですわね」
「知った事か。国民を統制するので私も忙しいのだ」
あ……? え……? 何?
良くわからない内に話が進んでいっていってないか? 何を話している?
毒の製造がどうのこうのって、と言うことは本当に毒が入っていたって? ふざけてやがる。
……まぁ俺を貶めようとしたのはこの際不問にしてやるとして。
「……てめえら……、俺を外にして……、話を進めてんじゃねえよ!!」
俺を抜きに話を進める事は許せない。許さない。
「……いきなり大声を出すでない……、ん? ぬぅ!? 何だこれは……!」
「体に、力が入らないですわ……。……スノーさんは動け、……そうにも無いですわね」
「……えぇ、力を無作為に使うのを、いい加減やめて欲しいものね……っ」
「てめぇら膝まずいて良く聞け……、俺は王なんだよ……。俺が王なんだよ……。王抜きにして話しが進むわけねぇだろうがあぁ!!」
「き、貴様ら何者だ……!? 毒を見抜いたり、わけのわからん魔術をつかいおったり……!」
「愚問! 俺が今からこの国の王である!! お前の仕事はもう定時なんだよぉ!」
「貴様、この国を乗っとる気か……!? 」
「だとしたら何だ! お前は毒を飲ませようとした罪で極刑とする!」
「何の権限があって! ……こんなことをしてただで済まされると思うなよ旅の一行!」
「ぎゃあぎゃあうるせんだよ! ……そうだ、お前の退任式でもやるか?」
「何だと……? 貴様調子に乗るなよ……?」
「順当だよ」
折角辞任した本人がいるんだし、俺の就任式の肴にでもしてやるか。
何が良いかな、張り付けとかかな。鉄かごにいれて何日も放置するか? それとも派手に飛び降りさせるとか……、悩む。
「ていうか仮にもこの国の王が危険な状態と言うのに誰も助けにこねえじゃねえか。お前信望が無いんだな」
「…………一応言うが、あまり敵である私に時間を与えるのは得策とは言えないですぞ……うっ!」
「その懐に入れた手を出せ」
「……気付くのが、一足遅かったですな……」
おっさんが懐から取り出したは、何かしらのスイッチ。既に押されていた後だった。
警告音と同時に窓やドアのシャッターが全て降り、隙間風一つ起こらない密閉状態へと変わった。
こんな事したって逃げねえよ。こいつこそ逃げ場無くしてどうすんだ。どアホか。
「窒息でもさせる気か? お前も王なんだろ? そういう事はもう少し考えて行動してくれないと同じ身としてはずかし……」
「あなた様伏せて!! 頭を低く!!」
「あ?」
上を見上げると、頭上にあった巨大なシャンデリアが火を巻き上げながら多大な衝撃が発生。辺り一面を消し飛ばす勢いの爆発が起こった。




