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不幸な王様

 俺は何故、こんな小汚い所に背中を預けているんだ。


 内装は結局外装と変わらないボロ小屋だったじゃねえか。普通ならここの店主を痛めつけ修正してやる所だが、自分で泊まると言ってしまったからには曲げる訳にもいかない。威厳と言うのがある。


 ここはルームサービスとか無いのかよ、腹が減って仕様が無い。


 ……無いし。


 客に腹は減らすは全体的にボロ臭いわで存在価値の無い物件だな。王になったらこういう意味の無い物をは間引くべきだな。仕事を増やさないでくれ。


 もういいや、とっとと寝て明日の朝から侵略をしてやる。この汚い布団は人生最後の妥協だな。


 …………。


 ……………………。


 …………


 ……。


 寝れねぇ。


 何このうっすい紙みたいな布団。こんな風も通せない程スカスカな物で眠れって言うのか? 馬鹿いうな、こんな中途半端な物で寝るくらいなら床で寝た方がマシだ。


 店主に言うしかねぇな、めんどうくせぇ……。いや、こんなの俺がやる必要も無い、どっちかにやらせよう。


「おいアザレア、店主にありったけの布団をこの部屋に持って来いと伝えろ」


 全部の布団をかき集めたところでどうせゴミなるだけだろうけどな。百から百一になるならさせるだけさせる、努力を怠り進化を止めた生き物に価値は無い。


 ……ん? ……アザレア? ……いないのかよ。つっかえねぇ。スノードロップもいないし、何の為にいるんだあいつら。王の隣にいれるだけでもありがたいと思えよアホ共。


――――――――。


 二階建てにするなよな、階段降りる手間が発生するだろうがよ。 


 階段降りれば音がするし、耐久度低そうだし、光に当てればほこりが見えるし、虫飛んでるし、マットめくれてるし、本棚スカスカだし、馬鹿なのかこの店は。知らずとはいえ国のトップが泊まりに来ているのに歓迎も無しと来た。オーラでわかるだろがいオーラで。


 窓の方も見れば隅の方にゴミあるし、掃除が行き届いて無さす……、……?


「は? 何やってんだあいつら」


 俺を放って、何二人で外で会話してんだよ。俺がこんなに困ってる隙に、知らず聞かずで自分の思い通りに動いてるって言うのか?


 おいおいおいおいおいおいおいおい。それは駄目だぜいけないぜ。側近としての自覚が、いささか足りないんじゃないのかお二人さん。


 ……ちっ。ほら勝手な事をするから、うっかり壁を破壊してしまったじゃねえか。ほこりが舞って鬱陶しいから嫌なのによぉ。ここも直しとけよ店主。


 まぁいい、このままあいつらを問い詰めよう。


「二人で楽しそうだなぁ? おい」


「あら、あなた様。どういたしましたの?」


「どういたしましただぁ? 俺が困ってるって時に、何暢気に和気藹々とおしゃべりをしているんだぁ?」


「あらごめんなさい、わたくしともあろう者が意識が低かったですわ」


「そうだろ? 自覚して反省しろ。……スノードロップ、お前は?」


「…………」


 まただんまりか? こいつは耳が聞こえているのか怪しい節が多々ある所が難だが、まさか無視をしている訳でも無いだろうに。こっちをみているのならば耳も聞こえている筈だ。だとすれば、答える気が無い、という事になるが。はたしてね。


「うっ……!」


「答えるまで、体は動かせないと思え」

 

 顔以外の筋肉を弱体化した。


 数分で戻るとはいえ、戻って直ぐにもう一度弱体化し続ければ半永久的に動けなくなる。それは誰だって耐え難い苦痛があるものだ。俺だって嫌だ。


「こんな事を続けていれば、王様なんて直ぐに下落する……!」


「だとしたら何だ?」


「人間を……! 国民を何だと思っているの……! あなたは自分の国を自分の都合で消して……!」


「だから? 今は謝罪を求めているんだよ。理解出来ていないのか?」


「今言いましたわよ、わたくし達の話していた事は、あなた様の振る舞いに関することですわ」


「謝罪を求めている、と言ったんだが。お前らが何を話していたかなんてさらさら興味も無い、俺を放置して二人で外に出ていた事を追求してんだよ」


「……く……ぅ……っ!!」


「スノーさん、ここは謝ったほうが良いですわよ。悪いのはわたくし達なのですから」


「どうして!? その思考回路は何なの……!? 悪いのはあい……っ!

 ……………いや、そうね……。私達が……、悪いわね……。ご……、っ……、ごめんなさい……」


 やっと頭を下げた。体を動けなくして、他人にレールを引いて貰ってでしか謝る事が出来ない。そういう奴なんだろうな。


 プラドだけが先行して謝る場面を見極める事が出来てない、もしかして感性が子供ままで止まっているのか? だとしたらスノードロップも修正対称だ。


「最初からそうすればいい、罰は免じてやろう。……アザレア、そいつをおぶって来い」


 また手間を増やしやがった事は、俺が優しいから許してやる。使えない部下を持つと大変と聞いて、馬鹿ではないかと思ったがそれは間違っていなかった。書物はこいつらよりは役に立つようだ。


 そもそも側近が離れたら、それは側近では無くなるだろ。少し考えれば思い至る結論を逃し、道を外れた行動をしている事を自覚してくれないとさすがに怒るぞ。


 まぁ、そんな修正力があればこんな事にはならないだろうが。


 …………はぁ……、何だこの感情は。 この心の底から煮えたぎる様な、何かに当り散らしたくなる様なこの気持ちは。俺が三人いればこんな思いもしなくて済むだろうに。…………無い物をを嘆いても、仕方が無いのは自分でもわかっている。だから、今ある物を矯正していくしか無いんだ。


 まだこれから店主も正さねばならないと言うのに。


 使えない奴に囲まれて、俺はなんて不幸な人間なんだ。


 全く、先が思いやられる。

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