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灯火台の下は暗い

「「私は、この国の新たな王として椅子に座る事となったユリー・フレゥール・サンバーグである。まずこの名を心に留めて置いて欲しい。前任の王は皆を苦しめた、前任の王は皆を失望させた、前任は王足りえる器では無かった。以後前任の王に代わり、私がこの国指揮して行くのだ!」」


 王の宣言と同時に、底から湧き上がる様な快然に満ちた歓声が広い町の隅々にまで行き渡り飛散する。震え上がる空気から国民がどういう心境なのか読み取れた。


 新たな城。新たな国。新たな民。何もかも新鮮な新境地で、ここに残すは国立宣言。


 新しい門出を祝わない阿呆がいるものか。


「あなた様、やりましたわね! この景色を手に入れるまでの幾千万の努力をわたくしはこの目に焼き付け、一生消えることの無い灯火として薪をくべ続けますわ!」


「何言ってるかわからないけど、アザレア。お前の出した案は本当に優秀だった。遠くばかり見ていた俺に、足元を照らす切欠を与えた」


 ですわよ! と言う返事と言っていいのかよくわからない返しが返って来た。


「スノードロップ。お前がいなければそもそも辿り着けてすらいなかった」


「…………」


 …………。 と言う返事と言っていいのかよくわからない返しが返って来てすらいなかった。


「……どんどん口数が減っていってないかお前?」


「……そうでもない」


「いやそうなんだよ、明らかに減ってるだろ」


「そんな事より! わたくしの成果をもっと褒めて下さい! 頭を撫でながらペットを可愛がる執事の様に! ほらその男らしい手で!」


 つむじが目の前に現れるという体験を、今初めてした。何やら物凄い迫力があった。

 

「まだ、始まったばかりなんだ。それはもう少し先までおあずけだな」


「ああん、焦らしプレイですの? ……なるほど、そう言うのも良いですわね」


「今度は、本当に完璧な国を作る」


 アザレアの妙案があり、スノードロップの機転がありでこの国を手にすることに成功した。


 正しくには、奪取する事に成功した。


 その事をまず、語らねばなるまい。


――――二日前。


「わざわざそんな事をしなくても、奪えばいいのではないのですの?」


「は?」


 盗賊に襲われアザレアが奇っ怪な行動を見せた直ぐ後。


 近くの川で遊びたいと駄々をこねだしたので仕方が無く休憩をとる事にした。


「スノーさん行きますわよー! そーれ!」


「……止めて」


 水の音で聞こえなかったから聞き返した意味での は? だったのだが、それは難なく無視されてスノードロップに水をかけ出した。


 直立で顔に水を浴びている姿は何やら少し面白い。


「ほらほらー抵抗しないと濡れますわよ? それそれー!」


「ちょ……や……」


「どんどん行きますわよー! そーれ!」


「止めうっ……! 止めて……」


「どうしましたの? どうしましたの? これが川遊びの作法ですのよ?」


「……冷たいのよ!! 止めなさい!!」


 仲睦まじく、と思っていたらいきなり怒り出した。


「あ、あら……? お友達と言うのはこうするものと本に書いてあったのですが、何か違いました……?」


「……いえ、ごめんなさい、言い過ぎたわ」


「いえ、問題ないですけど……。まぁいいですわ! 先を急ぎ目的を果たしましょう! ……ええと、国を奪い自分の物にする事でしたっけ?」


「違う、何だそれは。地盤の良い土地を見つけて新しい国を作るこ…………」


 国を盗む……?


 国を、盗む。


 ……あぁ、なるほど。


 それは、ナイスだな。

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