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バレンタイン短編 part.1

短いです

間に合わないので明日part.2あげます


シュティルとルーナフェルトが旅を始めて少し経った頃の話です。

宿のおばさんに台所を借りて私は焼き菓子を作っていた。そう、焼き菓子を。ちょうど出来た時にきたルーナフェルト様がそれを見て一言。


「何、それ……」


「お菓子です。可愛くないですか?」


「……どう見ても魔物なんだけど」


酷い。どう見ても可愛い……いや、これはルーナフェルト様の言う通りかな。普通の焼き菓子を作ったはずなんだけど変な風に膨らんでるし、所々真っ黒に焦げてて可愛くはないし、魔物みたい。


おかしいなぁ、小さい頃に家の料理人と一緒にやったのと同じようにしたのに、全く違うものができた。


「ルーナフェルト様にあげますね。私は次にできたのを食べるので」


「廃棄廃棄。こんなどぎつい緑の菓子なんて見たこと……はあるけど食べられるわけないよ」


「えぇ〜食べられますよ、ホラ…………お”え”っ」


なんだこれものすっごく酷い味だ食べられたもんじゃないな廃棄廃棄。


勢いよくゴミ箱に齧ったお菓子を投げ捨てる。全部だね、全部緑だから。なんでだろう、好きな果物を混ぜたんだけどそれが駄目だったのかな。緑色になったら可愛いかな、ってその果物の緑の皮を絞って出てきた汁を入れたんだよね。


「ほらね。またどうせ変なの入れたんでしょ?だから料理はしちゃダメ、って言ったのに」


水を私に差し出しながら緑のお菓子をどんどん捨てていくルーナフェルト様。躊躇いがない。


「なんでですか。おかしいです、皮を使う料理はあるのに……。絞ったのがいけなかったのかな。じゃあ今度は刻んで入れてみよう」


「だーめ。理由はそれだけじゃないよ、絶対。料理はしちゃダメ。いい?失敗して材料無駄になるでしょ?その分食べられなくなるんだよ。お菓子が食べたいなら作るから。それとも買ってこようか?」


「むむ……」


それは嫌だな。私が失敗して食べられなくなるより、失敗しないルーナフェルト様にやってもらって食べた方がいい。


台所を借りれるなんてそうそう無いし、宿に泊まることだってない。ほとんど車中泊。屋根があるだけマシかな。ルーナフェルト様の作るものは美味しい。こんな機会次いつあるかわからないから作ってもらおう。


「作ってください。材料は余ってるので。私は何か飾るものを……」


「で、なんで塩と砂糖を手に取るのかな。飾り?塩が?」


「混ぜてまぶします」


「お小遣いあげるから外行ってて」





◼️◼️






「ぜんっぜん違いますね。どうしてだろう」


ルーナフェルト様の作ったお菓子を食べながら考える。


材料はほんとんど変わらない。だけど見た目も味も全く違う。どうしてだろう。


「適切な分量と材料を使ったからだよ。たったのそれだけ。誰でもできる」


「誰でもできることを君はなんでできないのかなぁ、みたいな顔して言うのやめてもらえますか」


人には得手不得手があるんだ仕方ない。


「大丈夫、別に料理ができなくても生きてはいけるんだから。じゃ、僕ちょっと出掛けてくるから」


笑顔でそんなことを言うとルーナフェルト様は出て行ってしまった。買い物か、転移して別のどこかで用事を終わらせてくるんだろうな。私がいるから車でゆっくりしてるけど、ルーナフェルト様1人なら身1つで全て終わらせられると思う。


それでも邪魔なんてまだ言われたことない。だから気にしない。


料理くらいできるようになって役に立ちたいな、とは思ったけど。ルーナフェルト様もああ言ってるし、大丈夫かな。


……とはいえ。


作れるようになりたいという思いは取れない。ちょっとくらいできたらよくない?自分でも食べられるし。


「うーん……適切な分量と材料、か」


何かいいと思って入れるのがよくないってことかな。あと、多ければいいって思って適当にしちゃうこと。


難しい。


「お嬢ちゃん、終わった?あら、上手くできてるじゃない!」


お菓子を見ていたら、宿のおばさんが台所にやってきた。


「出来ませんでした。これは私の作ったものじゃないんです」


「そうなの?あ、連れのお兄さん?凄いわねぇ!彼この前、魔力で壊れてきた壁とか屋根とか直してくれて。軽い結界まで張ってくれたのよ!なんでもできるのね」


珍しい。ルーナフェルト様が他人のことで何かするなんて。


私も他人か。


「いつも頼りっきりなのでこれくらいは、と思ったんですけど。無理でした。ちなみに私の作ったのはそこのゴミ箱の中にルーナフェルト様が捨てました」


自分で食べられるようになったら嬉しいから、なんて言わない。言えない。


私に作ってくれたやつだし、今全部食べちゃおうかな?それともおばさんと食べようか?


「あら酷い。女の子が作ったものくらい、食べてあげないとダメよねぇ?どれどれ……」


「あっ、やっ」


やだやだ、見ないでもらいたい!あんなの見られたら恥ずかしい!緑の怪物!


「…………あら酷い」

どう見ても10代前半の女の子が20歳くらいの男の人を様付けして呼んでるってだいぶやばいですよね。よく考えたら。


荒廃した世界でもこうして変わらない生活を続けている人もいました。

世界の現状を見ないように、変わらないと信じたいからなのか、それとも世界がこうして変わってしまったからこそなのか。

それは当事者たちにしかわかりません。

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