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姉(←大魔王)、妹(←超魔王)、長男(←オカン)  作者: くまのき
第十三章 ドライブ、きょうだい、異、
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120話 『兄と姉のパンツと妹とウサちゃんとオカマ』

「パンツで、頭を保護……すれば……ロボットさんの、『心』も……保護、出来る……よ」

「しかし、パンツを被るのはさすがに……何と言うか、その……」


 姉のパンツを頭に被れ、という妹からの提案に、テルミは戸惑う。

 そんな弟に、桜がニヤニヤしながら話しかけた。


「下着としてパンツじゃなくて、その上に履く毛糸のパンツよ? しかも美人な姉のパンツ。セーフセーフ!」

「実姉のパンツだからこそ、アウトな気がするのですが……」

「……でも、他に……方法は……無い」

「くぅ……」


 そう言われてしまったら、もう今回は仕方がない。

 テルミは意を決し、毛糸のパンツを頭に被った。

 髪の毛がスッポリと収まる。


「……口が、隠れるくらいまで……しっかり、被って……」

「は、はい」


 ズボっと、パンツが顔全体を覆い尽くした。



「……うっ……あ、あれ……?」



 ここで桜のパンツについて、再度説明しておかねばなるまい。


 桜は超能力で体臭操作をしているため、衣服に付いた汗等には不快な臭いが全くない。

 それどころか、『男達を強制的に興奮させてしまう』と言う淫靡で妖美な罠が仕掛けられているのだ。

 その罠は桜自身も気付いていないし、妹の莉羅も気付いていない、超能力の副作用。


 そして普段「女の子みた~い」などと言われているテルミも、れっきとした男の子。

 実姉の匂いとは言え、大魔王の魔力により生成された興奮剤には抗えない。



 テルミは腰が砕けたように、床にへたり込んでしまった。


「……にーちゃん?」

「ちょっとテルちゃん! どうしちゃったのよ!?」


 姉妹の心配する声に、テルミは何とか返事をする。


「い、いえ……大丈夫です……大丈夫」

「ちっとも大丈夫そうには見えないけど! あ~分かった。お姉様の香りが良すぎて、骨抜きにされちゃった? もーエッチー!」

「いえ……」


 桜は冗談で言ったのだが、限りなく正解に近い。

 しかし弟として、それを認めるわけにもいかない。


 テルミは歯を食いしばり、四つん這いで転送陣へと近づいた。

 息が荒く、顔が真っ赤だ。

 胸が痛い。色んな場所が痛い。


 そうして、どうにかこうにか転送陣の上に乗った。


「ど、どうぞ……ロボットさん……」

「ギギ……」


 色々あったが、ようやくテルミは元の宇宙へと帰還した。




 ◇




「おぁ~ん。ウサちゃぁん、コレかわいいぃぃん!」

「…………」

「ピンクでハート型のう~め~が~え~餅~」

「…………」


 福岡県の某神社。

 ロンギゼタの一人と一匹は、観光を楽しんでいた。


 彼らは実態を持たぬエネルギー体。宙を漂い旅行中。

 名所を巡ったり。地球人の暮らしを何となく見物したり。

 たまに『そういうのが見える人』と出会ったら、会話したり、頭の中にお邪魔して味覚共有により美味しいモノを頂いたり。


 そんな気ままな旅をしている。


「おーい……ロン……オカマさん……」

「…………」


 突然聞こえた少女の声に、ウサギのロンがぴくりと反応し、鼻をひくつかせた。

 オカマのロンギゼタ601も、気付いて辺りをきょろきょろと見回す。


「あらぁん。この声、リラリラじゃなぁいん! おひさ~。あぁぁん、どこいるのぉ~ん?」

「テレパシーで……話し、かけてる……の」


 東京から福岡への長距離テレパシーである。

 そして次の瞬間、


「はろー……」

「リラリラぁん! やっほ~」


 莉羅が、ウサギとオカマの目の前に現れた。

 桜の魔力を借り、神社まで瞬間移動して来たのだ。

 その後、莉羅に少し遅れて、足腰がガクガクになっているテルミも登場。


「あらぁん、テルるん。お~ひ~さ~……って顔色悪い……いや逆ぅん? 顔色良過ぎるのを通り越したせいでむしろ調子悪いカンジぃ~だけど、どうしたのぉん?」

「い、いえ、何でも……ありません……お久し……ぶりです……」


 消耗しきったテルミは、図らずも妹と似た気怠い口調になっていた。

 気合いを入れて足の震えを止め、言葉もしっかり発声するよう意識し、ウサギ型のエネルギー体へと向き合う。


「それよりウサギさん達に、お渡ししたいものがあるのです」

「え~ぇん。プレゼントフォーウィーぃん? ナニナニ~ん?」

「それはですね……」


 テルミは『アンドロイドの心』をロンギゼタ達に届けようとする。が、方法が分からずに動きを止めた。


「ええと、どうやって渡せば良いのでしょうか?」

「……ロンの、おでこに……触れるだけ……簡単、ワンタッチ操作……」

「分かりました」


 妹の説明通り、指先でウサギのロンに触れようとする。

 ロンに実体は無いので、指は額を少しだけ突き抜け、止まった。

 するとテルミの体が、再びポカポカして来た。


「うぐ……」


 本来ならきっと、心地よい暖かさなのだろう。


 が、しかし。

 ただでパンツのせいで体が火照っていたのに、熱が追い打ちをかけて来る。

 まるでインフルエンザにでもかかってしまったかのよう。

 テルミの首から上は、茹でダコのように朱色に染まってしまった。


 とは言え、少年の苦難の甲斐はあった。


「…………」

「あららぁん? ウサちゃん、これはぁん……?」


 心――博士型アンドロイドがテルミに託したエネルギーは、無事にロンへと渡された。


「…………」


 ロンは届け物を受け取り、テルミに感謝するように鼻をすんすんと鳴らす。

 博士の想い。それが一体何なのかは、テルミには分からない。桜や莉羅にも分からない。

 そしてロンは、何も喋らない。


 そんなウサギの顔を見て、莉羅は呟く。


「具体的に、伝えたい事なんて……何も無かったのかも、しれないけど……でも、ただ」



 ――キミを、ずっと探し続けていた。



「それを、伝えたかったんでしょうね」

「……うん」


 莉羅は頷き、ウサギの頭を撫でるように手をかざした。

 実際には撫でられていないのだが、ロンは気持ちよさそうに目を閉じる。


 そんな少女と動物が触れ合っている隣で、


「………………あうっ」

「……にー、ちゃん……?」

「あららぁぁん、テルるん! どうしちゃったのよぉぉん!」


 テルミは身労と心労がたたり、ついに膝から崩れ落ちたのであった。


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