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姉(←大魔王)、妹(←超魔王)、長男(←オカン)  作者: くまのき
第十三章 ドライブ、きょうだい、異、
149/200

114話 『姉は恋する異世界乙女のお手伝いをする』

 其の十七。再び。



 こんにちは。

 恋する乙女。愛の奴隷。レア・レアーイ・レアインです。


 前回までのあらすじ!


 聖王レアレアと魔王(せいたん)。光と闇の覇権をかけた闘いから数千年……

 レアレアの生まれ変わりである私は、親友面したブス女に裏切られ、王子様を寝取られてしまった。

 そこで私はブスに天誅を与えるべく、黒魔術で魔王(せいたん)を召喚。

 光と闇が、久方ぶりに邂逅す。



 世界が、震え出した……!



「何ぶつぶつ言ってんのよ。さっさと要件済ませて、あたしを元の世界に戻しなさい」


 と文句を言っている『喋る指』が魔王(せいたん)

 私の片割れ。分身。(いにしえ)の好敵手。


「誰が片割れよ、うざったいわねあんた。何であたしをセータン? って呼んでんのかは知らないけど、とにかく急げって言ってんの!」

「ぶへっ」


 魔王(せいたん)が、私の鳩尾に力強い体当たりをしてきた。

 これが闇のフレンドシップ、スキンシップってヤツね。


 私は思わずゲロ吐いちゃいそうになるのを堪え、魔王(せいたん)を呼び寄せた理由を説明したわ。

 あのクソゲロ女に、闇の裁きを与えよ! ってね。


 すると魔王(せいたん)は「ふーん」と興味無さげな声を上げたわ。

 ちょっぴり失礼な態度。ツンデレってわけね。


「復讐ねえ。ただの八つ当たりな気もするけど……まあ別に良いけどさ。でもそんな回りくどい真似するより、直接その王子様(せんぱい)とやらに夜這い掛けちゃいなさいよ」

「夜這いですとぉ!?」


 唐突な提案。

 さすが悪魔の王。ピュアな私は思いもつかなかったような、極悪非道のアイデアを出してくれるわね。


「誰が悪魔の王よ?」

「ぶへえっ」


 再び鳩尾への攻撃。

 まったく悪魔は照れ屋だぜ。


「ぐへへひひへ。でも夜這いかあ。なるほど、それは話が早そうでよろしいわね」

「そう。気に入って貰えて嬉しいわ。じゃあ早速」

「そうね、早速……! うっひゃひゃひゃ!」


 そして、我が意中の先輩宅へと向かったの。


 刻は深夜。町全体が眠っているように静か。

 私達は街灯と懐中電灯の明かりを頼りに、先輩んちに辿り着いたわ。

 先輩も、もう眠っているはずよ。

 彼はスポーツマンで朝練があるし、部屋の窓も真っ暗だからね。


 さて。

 先輩の部屋を見上げながら、私は魔王(せいたん)に伝え忘れていた事があったと気付いたわ。


「先輩は最近ストーカー被害に苦しんでいるらしく、自宅の戸締りが厳重になってるのよ。この前も扉をこじ開けようとしたら、けたたましいブザーが鳴って警備会社の人が駆け付けて来たんだから」


 まったく、ストーカーなんて最低ね。

 どこのどいつか知らないけど、私の先輩に手を掛けようとするなんて身の程を知りなさいよね。


「そのストーカーってあんた……いや、そこまで深入りはしないけど」


 魔王(せいたん)は何故かゲンナリとした口調で、そう言ったわ。

 久々のシャバで、もう疲れちゃったのかな?


「とにかくさっさと済ませましょう。要はホームセキュリティが作動しないようにして、鍵を開ければいいのよね?」

「その通りよ魔王(せいたん)。何か良い方法ある? 魔法でパパッと解決してくりゃ~」

「セータンじゃないけど、そうね……あたしがテルちゃんの部屋に突入する時にたまに使う、『開錠能力』が役に立つわね。それにセキュリティ対策として、電気能力を付加させれば……」

「開錠! オゥ、良いねえ」


 私が喜びの声を上げると、魔王(せいたん)はドアノブの上にちょこんと乗ったわ。

 猿の足指みたいな魔王(せいたん)

 こうして小高い場所に乗ってるのを見ると、ちょっと気持ち悪いよね。えへっ。


「おだまりストーカー女。とにかく開けるわよ、オラッ!」


 魔王(せいたん)が叫ぶと、一瞬、先輩宅がバチンッと火花に包まれた。

 そして先輩宅の灯りが全て消える。

 それだけでなく、ご近所さん宅や街灯なんかも軒並み消灯。

 辺り一帯が停電になったの。


 そして暗闇の中で、次はバキンっと金属が弾けるような音。

 懐中電灯で照らすと、先輩宅の扉が破壊されて開いていたわ。

 停電しているからか、それとも魔王(せいたん)の電気ショックで機器が壊れちゃったのか、警備員達にも連絡が行っていないみたい。


「やっぱり侵入はこの手に限るわね。手じゃなくて足の指だけど!」


 魔王(せいたん)が自信満々に言い放ったわ。


 さすが魔王(せいたん)

 こんなアッサリとセキュリティを突破するなんて、魔法って凄い!

 完全に力技にも見えたけど!


 なーんて私が感動してると、


「停電かしら?」

「それより何だ、今の音は……おい、ドアが開いてる!? 誰だ、そこにいるのは!」


 先輩のお母さんとお父さん。

 つまり私の義理の両親が、懐中電灯を手に持って現れたわ。

 でも魔王(せいたん)が、


「ややこしくなるから、これ以上新キャラ増えんな!」


 と咆哮。


「うああ……?」

「ふぁぁ……」


 その声を聞いただけで、両親はあっけなく気絶しちゃった。


「超能力で眠らせたわ。今の内に先輩(ターゲット)の元へ急ぐわよ」

「さっすが、頼りになるぅ!」


 私達は二階に上がり、先輩の部屋に侵入。

 彼は健やかなイケメンフェイスでスヤスヤとお休み中だったわ。


「ぐっひひひ。よう眠っとりますわぁ」

「それじゃ、後はレイプでも妊娠でも好きにしなさいアホ女」

「あざーす! ウヒヒヒヒ」


 私は先輩の掛布団に手を掛けたわ。

 でも魔王(せいたん)が「あっ、ちょっと待ちなさい。ヤる前に……」と声を割り込ませたの。


「ここまでお膳立てしてあげたんだから、そろそろあたしを元の世界に返してくれないかしら?」

「元の世界……魔界ね。良いけどどうやって?」

「魔界じゃないけど、呼び寄せた時と同じ方法でよ」

「な~る~」


 同じ方法というと、『箱』に私の血を飲ませるってワケね。

 私はバッグから、金属製の呪い箱を取り出したわ。

 ここで断って悪魔を怒らせても損だし、ノリノリで手首を掻っ切って血を出したの。


「うわ……一切の躊躇も無くリスカしたけど……あんたもしかして、いつも……いいえ、深入りはしないけど」


 魔王(せいたん)が若干引いてるけど、何やら誤解しているみたいね。

 でもメンヘラ扱いはお門違いなのだけれどね。

 私はただ、自分の血を固めて先輩の下駄箱に入れたりしてるだけの、純粋な乙女よ。

 ああそうだ、今もせっかく手首切ったんだし、寝てる先輩に直飲みして貰おうっと。えへへ。


「……ああ、これ以上あんたに関わってると気が狂いそうだわ。じゃあね、バイバイ」

「バイバイ魔王(せいたん)。また何かあったら呼……」

「もう絶対呼ばないで!」


 そして魔王(せいたん)は、スッと消えた。

 どうやら本当に魔界へ帰っちゃったみたい。


 不思議な体験だったわね。

 まあでも、今は悪魔の余韻に浸っている場合じゃ無い。

 だって目の前には、憧れの王子様が無防備に眠っているんだから。


「……ぐっひゃひゃひゃ……しぇんぱぁ~い、今結ばれましょうねぇ……」


 私は先輩の布団を剥ぎ取った。

 彼ったら上半身裸で寝ちゃってる。マッチョな腹筋がセクシー。

 さて下半身も確認しないと……と、私は先程リストカットで使ったナイフを、先輩のズボンに当て……



「わ、わあああああ!」

「うぎゃ!?」



 突然、背後で女の叫び声が上がったわ。

 そして私の後頭部に妙な衝撃。


 振り返ると、裏切り者がそこにいた。

 私の元親友。そして先輩と付き合っている、エロ女。

 手にずっしりとした厚手の鉄鍋を持っている。


 頭が熱い。痛い。

 この女、もしや……


「私を……親友の私を、殴ったなああああああっ!?」

「あ、あんたこそ、私がトイレに行っている間に……そのナイフは何よ!? その血は何よ!? 私のカレシに何をしたの!?」


 そう言ってアホビッチが、今度は私の横っ面を殴りやがった。

 

「うぐあああっ!」


 重い鉄鍋のインパクト。頬骨が砕け、歯が吹き飛ぶ。


 この馬鹿女、何か勘違いをしているみたい。

 というかコイツ、どうしてパジャマを着ているの?

 もしかして、両親公認でお泊り会でもやってたというの?


「やっぱり、てめえを殺すべきだった……殺す、殺……す……せ、魔王(せいたん)、来て……」


 猿の小指を呼び出す私。

 でも魔王(せいたん)は、もう二度と私の前に現れなかった。


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