魔王候補(わたし)と愛姫(わたし)・3
投稿が遅くなったうえに短いです……(/―\)スミマセン……
島の近くを通る船の荷物に紛れて乗り込み、途中から泳ぐという荒業で上陸した(魔族の間では普通の移動方法らしいけど……)雷翔は、魔族を避けながらおばば様の家に向かったらしい。でも、おばば様の姿はなくて。隠れながら周囲の人のやり取りを盗み聞きしていくうちに、おばば様は白亜様に魔王城に連れていかれた、という事を知りここまでやってきたのだそうだ。
「おばば様がここにいるの?」
「まあ、噂だけどな。城に潜り込んだのも今朝だし」
頷く雷翔に不安が膨らむ。
島の重鎮であるおばば様に無体な事はしない、とは思う。でも、何もわからない状況のせいで確信が持てない。黙り込んでしまうと、ふいに頭にぽんと何かが触れた。
「ジェイクさん……?」
何の気もなしに置いた手かもしれない。でも慰められた気がして驚いた。
ジェイクさんはわたしの頭に手を置いたまま、雷翔の方を見ている。
「それで、これからどうするつもりだ? そのおばばとかいう奴を探しに行くのか?」
「あ、ああ。島の奴らじゃ話をする前に襲ってくる可能性があるからな。正しい情報を手に入れるにはばばぁに話を聞くのが一番だ」
「居場所は?」
「そこまでは分かんねぇけど、多分どこかの個室に軟禁されている状態だろうな。一応この島で魔王に次いで一目置かれている存在だから、牢にぶち込むなんてことはされていないとは思う。まあ、牢でも飄々としていそうでは」
話していた雷翔がぴたりと口を噤んだ。
ほぼ同時に、ジェイクさんがわたしの頭から手を下ろして、その手でわたしを自分の背中に押しやった。
「なんだ、この感じ?」
「……」
珍しく困惑した雷翔の声。顔は見えないけれど何だか警戒した様子のジェイクさん。
「雷翔? ジェイクさん? どうした――……」
言いかけた時だ。
ざわり、と全身をおぞましい空気が撫でていった。突然襲ってきた気配のあまりの気持ち悪さに膝が震える。
「何? この感じ……」
「――戻ったか」
ふいに、この場にはいないはずの人の声が響いた。
未だに全身にまとわりつくような気持ち悪さは消えていないけれど、その声だけははっきりと聞こえた。
雷翔もジェイクさんも、わたしが感じたこの不気味な気配に気を取られていたんだろう。いつの間にか倉庫に姿を現した人物にさっと身構えるのに、多少の動揺を感じた。
そんな二人には目もくれず、彼は無表情にわたしを見つめていた。
一年前と変わらない、わたしを酷く落ち着かなくさせる氷の目。
覚悟はしていた。だけど、こんなに急に現れるなんて。
「白亜様……」
口からこぼれた声は、酷く喉に絡みついた。




