勇者(にもつ)と女性騎士(うんそうや)・4
船から降りてすぐ、国にはそれぞれ空気があるんだと言う事が分かった。
ギルドニアは、落ち着いた雰囲気があったと思う。レンガでできた道に、茶色が基調となった建物が並んでいて、どこか歴史を感じさせる町並だった。
クルウェークは、それに比べて明るい感じだ。
2階か3階建ての白い建物が並んでいて、淡くて明るい色で薄めの生地の服を着ている人が多い。
そんな中、ひときわ目立つ銀色。
町の人達は全く気に留めていないようだけれど……あれ、すごく目立つんですが。
「あの、あれは?」
思わず、ジェイクさんに声をかけてしまう。
ジェイクさんは、わたしの視線を追いかけて、ああ、とうなずいた。
「騎士団の連中だな」
「騎士……ですか」
まあ、そうでしょうね。
でも、でも。なんかすごく浮いているように見えるのはわたしだけですか?
ジェイクさんが「騎士」と言った人……人? は、銀色の甲冑を着ている。いや、着ているというより、もはや甲冑そのものだ。手足も甲冑に包まれているし、顔も銀色の兜で覆われている。兜に至っては、顔の所が鳥のくちばしみたいにとがっているし、なんだかもう、新しい生き物みたいに見えてくる。
ギルドニアの騎士団の人達も鎧は着てたけど、こんな全身を覆うような感じじゃなかった。
「なんか、重そうだな。あんなんで動けるのか?」
「機敏な動きは難しいだろうな。魔法対策はしているらしいけどな」
「魔法対策?」
「本当かどうかは知らないが、クルウェークは魔力に溢れている国とか言われている。まあ、確かに魔法使いの輩出率は高いな。それに、この国に生息する魔物も魔力を持っているものが多い。で、あの騎士のあの甲冑には魔法での攻撃に対する衝撃を和らげる術が組み込まれているらしい」
「つまり、ここじゃ物理的な攻撃より魔法で攻撃を受ける確率が高いってことか」
「まあ、そういうことだ」
ジェイクさんは、珍しくきちんと説明をしてくれている。
それを聞きながら、わたしの中に不安が膨らんでいくのがわかった。
クルウェークでは魔法が多く使われているってのは分かった。つまり、そこの勇者であるエリオットさんも、魔法を使える可能性が高い。
そして、その相手と戦う。
どうしろと!?
魔法の知識なんてないですよ! 対策なんて思いつきませんよ!!
思わず渋い顔になっていると、ぽんと頭の上に手が置かれた。
顔を上げると、わたしを見下ろす青い目と目が合う。
「ジェイクさん……」
もしかして、励ましてくれてる?
「さっさと城に行って、エリオットに会うぞ」
なわけないですね。
早く戦いたいんですね。わかります。すごい楽しそうな、邪悪な笑みが浮かんでましたからね!!