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魔王候補と勇者たち  作者: まる
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勇者(オネエさん)と少女(相棒)・1

投稿が遅くなりました…すみません。

 なんだか、妙な感じだ。

 ゴトゴトと揺れる馬車に乗りながら、わたしは向かいに座っているジェイクさんを見つめた。

 彼は肘をつきながら、窓の外を眺めている。普段はひどくつまらなそうな、無気力な顔をしているのに、今は違っていた。よく見ないと分からないけど少し口角が上がっているし、青い氷の様な目もいつもより生き生きしているように見えた。

 つまり、彼はご機嫌なのだ。こうして何もしていない時に機嫌が良い事なんて、今までなかったから物凄く違和感が沸く。ジェイクさんが機嫌が良い時は決まってはらはらしたり不安になったりする時だから、何が起こるかと警戒してしまう。


「あの、ジェイクさん。何か良い事でもあったんですか?」


 とうとう耐え切れなくなって、声をかけた。

 ジェイクさんは声をかけられたことで我に返ったようで、一瞬不思議そうな顔をわたしに向けたけれど、すぐに口元に笑みを浮かべた。にやりという効果音がぴったりな笑みに、ぞわっと悪寒が走る。


「あいつに会うのは久しぶりだからな」

「あいつ? ……オルネディア国の勇者様ですか?」


 わたしの質問に、にやっと笑うことで肯定を示してから、ジェイクさんはまた窓の外に視線を戻した。

 オルネディア国の勇者。それはこれからわたし達が会いに行く相手だ。

 確か、名前は『ハロルド・ヨーク』。ジェイクさんが会いに行くのが楽しみにしている人って、どんな人なんだろう。

 なんとなく、ちょっともやもやした気持ちになっていると、御者の人から「もうすぐですよ」と声がかかった。


「ジュージュ。頑張ロウナ!」


 肩からクーファが声をかけてくる。

 もやもやした気持ちを取り除くように、わたしは頬をぱちんと叩いて気合を入れた。


 試練もあと少し。残り二人のうち、一人の勇者と戦うんだ。


「クーファ! 頑張るね!」


 わたしの言葉に、クーファは太い尻尾を揺らして答えてくれた。




 オルネディア国のお城は、お城というよりも要塞といった雰囲気の建物だった。

 城壁は厚く、ガタイの良い門番さんが厳めしい顔つきで立っている。


 オルネディア国とギルドニア国は、あまり折り合いが良くないらしく、ギルドニア国の国王であるコウガ様から、国王には報告していないからうまく勇者と接触してくれと言われていた。なんでも、オルネディア国は軍事国家で好戦的な傾向があり、他国に攻め入って領土を広げていった国なんだとか。隙を見せたり借りをつくるのは避けるべき相手だから、すまないが国からの援助はないと思ってほしい、とのこと。

 わたしの個人的な事情で、国に迷惑をかけるわけにはいかない。むしろ、これまで協力してくれてきたことに感謝をするべきだ。コウガ様にはその旨を伝えて、こうしてジェイクさんとお城の前まで来てみたわけだけど。


「どうしましょうか……入れる雰囲気じゃないですよね、これ。ジェイクさん、行けますか?」

「いや。この国でのギルドニア国の勇者はウィナード・レインだからな。一般市民の俺は手続きをしない限り入れてもらえない」

「そうですか……」


 今まで旅してきた国の中には、国王様がギルドニア国の勇者をジェイクさんじゃなくてウィナードさんと認識している国があった。それはギルドニア国との繋がりが薄い国だ。王様同士の関係が薄い為に、国の情報をすべて伝えていないんだとか。

 まあ、それは置いておいて、問題は今の状況だ。

 恐らく、オルネディアの勇者ハロルド・ヨークはお城の中にいることだろう。どうやって接触するか、いきなり壁に当たってしまった。


「手続き、どのくらいかかるんでしょうか」

「さあな。まあ、手続きをしたところで、国王にどう説明する? 勇者に会わせてほしいと言ってすんなり許可してくれる相手じゃないと思うが」

「う……そうですか……」


 なんとなく予想はしていたけれど、この国の王様は一筋縄ではいかなそうだ。


「ちょっと! あんた」

「へ?」

「あんた、ジェイクでしょ! こんなとこで何してんのよ‼」


 悩んでいると、突然誰かが声をかけてきた。つかつかと速足でジェイクさんに駆け寄ってくる。ジェイクさんは、その相手を見るとにやりと笑った。


「よう」

「よう、じゃないわよ! あんた、まさかまたお兄さんに仕事を押し付けてきたわけ? 本当、いい加減にしなさいよ!」

「え? あの、えっと」


 戸惑っていると、その人はふとわたしの方に視線を落とした。


「あら、見ない顔ね。ジェイク、この子は?」

「連れだ」

「連れ? あんたが? 嘘でしょ?」


 最後はこっちを見て訪ねてきたので、わたしは首を振った。


「いえ、本当です。ジェイクさんには色々とお世話になってます」


 同じくらいからかわれて遊ばれてるけどね!

 そこは省略して答えると、その人は切れ長の藍色の瞳を見開いた。


「ジェイクがお世話? へえ……ちょっとは勇者としての自覚が出てきたわけ?」


 にっと笑みを浮かべると、その人は少ししゃがんでわたしと視線を合わせた。


「初めまして、お嬢さん。あたしはハロルド・ヨーク。一応、この国の勇者よ」

「は、じめまして……」


 この人が勇者。

 いや、ちょっとは予感していた。だって、ハロルドさんに声をかけられたジェイクさん、なんか嬉しそうだったし。


 ハロルドさんは、色の白い綺麗な人だった。緩く一つにまとめた、濃い紫の髪は少し癖があるけれど艶やかで、大人っぽい顔立ちをしている。左目の下にある泣き黒子が色っぽい。細くて長い手足。優雅な物腰。ハーフエルフのルークさんとは違う、色っぽさのある美人な人だ。でも。


「わたしはジュジュと言います。ええと……ハロルドさん、は、男の人? ですよね」

「ええ、そうよ! 見て分かるでしょ」


 分かりますよ! でも、なんでそんな口調なんですか!?

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