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魔王候補と勇者たち  作者: まる
31/72

勇者(きゅうこんしゃ)と王様(そのあいて)・11

 とりあえず、目的は達成できた。

 わたしの隣から、鈴さんも同じように印を覗き込んでくる。


「これで、15人中13人は達成できたわけね。思ったより順調じゃない」

「そうですね。こんなにすんなり達成できるとは思わなかったです」

「魔族の邪魔とかはなかったの?」

「……はい」


 なんとなく歯切れが悪くなったのは、本当に全くと言っていいほど魔族の人が絡んでこなかったからだ。出来損ないの魔族であるわたしが魔王になることは、彼らにとって何より避けたいことのはずなのに。


「わたしが生きていることに気付いていないんですかね」

「それはないんじゃない? 魔族は退治屋とかして稼いでるんでしょ?」

「はい。雷翔もそうでしたし」


 魔族が住んでいる黒煙の島は、生き物も植物も育ちにくい。だから、衣料品や食料を得るために、力のある魔族は人間の世界に来て、正体を隠しながら働いている。退治屋は魔物退治を生業としている職業で、魔族にはもってこいの仕事だ。

 雷翔は今も退治屋に登録している。実力主義の退治屋の中でかなり名前が売れているから、そうそう元締めも雷翔を手放さないんだろう、っていうのはジェイクさんの言葉だ。


「退治屋がどうしたんですか?」

「ほら、ジュジュがはぐれていたとき、雷翔は退治屋の情報網を使ったんでしょ? ってことは、退治屋の魔族にもその情報は伝わっているはずよね? だから、ジュジュが生きていることは気付いているはずよ」

「あ……そういえば」


 言われてみればそうだ。

 でも、だとしたら、魔族は一年くらいわたしを放置していたことになる。……どうして?


「まあ、あちらも大変なんじゃない? 魔王サマが死んじゃって、今はその席が空いている状態なんでしょ? まとめる人もいなくて、てんやわんやみたいな」


 言い知れぬ不気味さを感じて黙ってしまったわたしを気遣ってか、鈴さんが明るく話す。でも、鈴さんの言っていることはたぶん魔族には当てはまらない。

 彼らは基本的に自由に一人で行動する性格だ。魔王様がいなくても自分で考えて自由に動くことができる。……逆に、一人もわたしのところに現れないのは不自然だ。

 考え込んでいると、コンコンとノックが響いた。


「ジュジュ、鈴。いるか?」

「雷翔?」

「いるわよ~。どーぞ」


 鈴さんの返事に扉が開く。

 その先に立っている雷翔の姿に、あれ、と驚いてしまう。


「ギルドニアを発つのって今日だっけ?」


 旅支度を済ませている雷翔に慌てると、いや、と軽く首をふられる。


「次から俺は別行動するから」

「……え?」

「ちょっと気になる事があってな」

「それってもしかして、魔族の動向?」


 鈴さんの言葉に、雷翔は驚いたように目を瞬かせた。その反応を肯定の意味に捉えて、鈴さんがやっぱりとうなずく。


「今、ちょうどその話をしていたところなのよ。前に退治屋の情報網を使っているから、その時点でもうジュジュが生きていることはあちらさんに気付かれているはず。なのにどうして襲ってくる気配がないんだろうってね」

「あの時、情報網を使うかどうか悩んだんだけどな。見つからない以上どうしようもないと思って仕方なく使ったんだ。奇襲覚悟で使ったんだけど、この一年何の動きもないことが逆に不気味で。とりあえずちょっと探りを入れてこようと思ってな」

「でも、危険でしょ」


 雷翔がわたしの味方をしてくれていることは、魔族も知っている。捕まったらただじゃすまないだろう。

 わたしの不安をよそに、雷翔は明るく笑った。


「島の中は熟知してる。あいつらの癖とかもな。俺一人ならどうってことないさ。それに、ババアにも会いてぇしな」

「おばば様」


 懐かしい呼び名にどきりとする。

 わたしの育ての親のおばば様。挨拶も何もできずに島を飛び出してしまって、どうしているか分からない。予言者として、薬師として、魔族の重鎮であるおばば様だから、ひどい目に遭わされることはないだろうけど、それでもわたしという敵視している存在を育てた人物であることに違いはない。無事であることを確認したかった。


「まあ、あの妖怪ババアのことだからひょうひょうとしてるんだろうけどな。ジュジュは無事で、試練もこなしてるって伝えておく」

「あ、ありがとう」

「おう。じゃあ、そろそろいくな」

「あ、雷翔」

「ん?」

「……ありがとう」


 改めて、雷翔のおかげでここまでこれたことを噛みしめる。

 どうしてここまで協力してくれているのか、聞いてもいつもはぐらかされるけど。でも、協力してくれている雷翔の為にも頑張らなくちゃと思う。雷翔が近くにいなくても。

 雷翔は一瞬きょとんとした顔をしてから、にっと笑った。


「おう。じゃ、またな」

「……うん。気を付けてね。行ってらっしゃい」


 バタンとドアがしまる。


 雷翔と離れるのは、これで2回目。

 あの時は雷翔がいないことが恐怖でしかなかった。どこに進めばいいのかもどうしたらいのかもわからなくて、ただ不安だけが渦巻いていて一歩も歩けなかった。

 でも、今は違う。

 確かに不安はあるけれど、自分で考えられる。歩ける。


「ジュジュ。いいの?」

「はい。雷翔に頼りっぱなしでいるわけにもいきません。わたしはわたしのできる事をしなくちゃ」

「……素敵な心掛けだけど。本当にいいの?」

「え?」

「雷翔がいないとなると、ジェイクと二人旅よね。クーファがいるけど」

「…………雷翔ぁぁぁ! 戻ってきてぇぇ‼」

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