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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その真なる王の出現を僕は知りたくなかった
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その帝の実力を彼は知りたくなかった

「絶対王政・真。幼女を見守りし戦士たちよ、望まぬ戦いを即刻中止せよ!」


 ロリコーン至高帝が告げる。

 その瞬間、血涙流しながらアルセ姫護衛騎士団と闘っていたロリコーン紳士達が動きを止めた。

 自由に動く身に驚き、戸惑い、そして喜びだす紳士たち。

 慌てた皇帝が立ち上がる。


「貴様等! 何をしている! 絶対王政、我が意のままに振る舞え! 奴らを倒せ! 幼女の為の千年王国を作るのだ!」


 だが、紳士たちは動かない。

 紳士の群れが攻撃を仕掛けなくなったことでアルセ姫護衛騎士団も闘いを止め、一人ロリコーン紳士に突撃しようとしたメイリャがエンリカにより沈められた。

 そのままクルルカの指令を無視したメイリャへの説教が始まっていたが、あっちは放置の方向で、戦鬼と化したメイリャさんもリファインさんを鍛えあげた師匠であるエンリカからの説教とあって素直に聞いてます。


「な、何故だ? どうして……貴様か侯爵!」


「侯爵? 違いますな皇帝よ。吾輩は幼女たちに認められしロリコーン紳士たちの真なる王。ロリコーン至高帝エンペラーである。頭が高いぞ僭称王!」


「なんだと貴様ッ! 我が僭称だと!? 我は正真正銘幼女から国王になることを認められたのだ!」


「ならばなぜ、その幼女がここに居ない? 貴様は幼女を見守り続けていないのか?」


「それは……我が幼女は空へ旅立った。我に好きに生きよと告げて天へと昇ったのだ! ならば、もう幼女を失うことで悲しむ者を作らない王国を立てて何が悪い! 我のような悲しみを背負う者はもう沢山だ!! 幼女を手厚く保護し、我等の監視下の元健やかに……」


「貴様に幼女は微笑んでいるか?」


 皇帝の言葉を遮り、至高帝は彼へと近づいて行く。

 ゆっくり、一歩づつ、近づくごとにタキシードを、Yシャツを脱ぎ去っていく。

 歩みは遅いが、確実に近づいて来る脅威に、皇帝は知らず後ずさる。


「何だと?」


「吾輩の後ろを見よ。ここにいる幼女たちは、お前の行為を肯定し、微笑んでくれているか?」


 スラックスが宙を舞う。トランクスがふぁさりと地面に落ちた。

 裸蝶ネクタイとなった至高帝が最後の衣装を脱ぎ去る。

 皇帝の視線の先、幼女たちはただただ皇帝を睨んでいた。

 だが、王国を作る為にそれは仕方無いことだ。皇帝は涙を飲んで王国を作ると決めたのだ。


「我は……」


「幼女の微笑みこそが我等の宝。それを忘れ、あまつさえ涙を流させ幼女を虐げるなど外道の極み。見ていたか、自分がなした行為を! 幼女が、幼女が泣いていたのだぞッ!!」


 喝っと怒りの表情となった至高帝が踏み出す。

 来る。それが分かっても、リエラよりも強いステータスを持っていたとしても、皇帝には彼の動きに付いて行くことが出来なかった。

 白薔薇が舞う。無数に乱れ咲く白薔薇の乱舞の中、全裸の皇帝の顎をくぃっと持ち上げる至高帝。全裸の男達が白薔薇に包まれ消えていく。


「ぐ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――――――――――――――っ!!?」


 皇帝の悲鳴が轟いた。白薔薇乱れ舞う内部で、僕らの分からない攻撃の応酬があったのだろう。

 白薔薇が散る。狭間から現れる二人のロリコーン。


「貴様に幼女は微笑んでいるか?」


 至高帝が呟き、ゆっくりと歩き出す。その背後で、皇帝が膝から崩れ、倒れ伏した。


「がはっ、まだ、まだだ……幼女が、幼女が見ているのだ。我は、幼女の笑顔の為に……千年王国を……」


「その幼女は、何処にいる? 千年王国を求めし幼女は、その笑顔は、何処にある?」


 皇帝は考える。反論しようとする。

 だが、居なかった。

 周囲を見回しても、皇帝を認めようとしてくれる幼女はいなかった。

 皆がもう立つな。そんな顔をしている。


「なぜ……我は、幼女と紳士が笑顔になる王国を……」


「ただの自己満足だ皇帝よ。見守る事を忘れた紳士は紳士ではない。ただの罪人だ」


 見上げる皇帝の額に、至高帝のステッキが添えられる。

 いつでも撃ち抜ける。下手な動きは見せるな。そんな至高帝の見下げる視線に、悔しげに皇帝は呻く。

 既に彼も気付いていた。至高帝となった侯爵の幼女を見て上昇するステータス上昇値、それは皇帝の上昇値を軽く上回っている。

 今でも敵わず、どれ程強くなろうとも決して上回れない。攻守は完全に逆転し、更なる逆転はもう、出来そうになかった。


「貴様にも、きっと分かる。我等は見守るだけではだめなのだ! 幼女を保護せねば! そして我等は幼女と添い遂げることが至高の……」


「それはおろかな選択だ皇帝。我等は見守る存在だ。彼女達が認めてくれたならばよい、だが我等の意思で幼女に介入することは、幼女を不幸にするだけだ。我々の目的は幼女が健やかに安全に成長する事を見守ること。決してその人生を捻じ曲げてはならんのだ。最後まで笑っていられるように彼女達を見守る。それが紳士の嗜みだということを忘れるなっ」


 至高帝のステッキが、皇帝の額を打ち抜いた。

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