AE(アナザー・エピソード)その絶望に響いた声を彼等は知りたくなかった
ロリコーンたちが驚くものの、仕方ありませんな。とペドコーンとショタコーンが近づいて来る。
ロリコーンである伯爵と皇帝は幼女を傷付けることはしないが、8歳以下を好むペドコーンと少年を好むショタコーンならば幼女が相手でも普通に闘える。つまり彼らを無力化できるのだ。
雄叫びと共に突撃して来る少年たちをペドコーンが、少女たちをショタコーンがステッキ一突きで黙らせていく。
幼女が倒れて行く、その姿に伯爵と皇帝は悲痛な顔で見守る。守りたい。そう思いながらも自分の理想郷の為、彼女たちの涙をあえて無視する。
その光景を、ロリコーン侯爵もまた、見せつけられていた。
唇を噛み、血塗れの指で土を引っ掻く。助けたい。今すぐにでも助けに向かいたい。
なのに、自分の体はもう、動いてくれないのだ。
ああ、幼女たちが、倒されていく。
同じロリコーン紳士を冠する筈の亜種たちが、本来守るべき存在に手を掛けて行く。その、なんと冒涜的で悪魔の所業であることか。
血涙流し、侯爵は彼らを睨みつけた。
「ブゥアッ!」
拳を握りペドコーンへと殴りかかるリーバ。ショタコーンが彼女の首根っこを掴み引き寄せ地面へと叩き付ける。
ぶっひ。と悲鳴をあげながらも、必死に抗おうとする彼女の頭を踏みつけ、懐刀で切りつけて来ようとしたのじゃ姫の腹へと拳を打ち込む。
ペドコーンは隆弘の脇腹に蹴りを叩き込み、しゃがみ込んだ彼の髪を掴み上げ無造作に投げ捨てる。泣きながら隆弘に駆け寄ろうとしたミズイーリの背中を蹴り飛ばし、ババァは死ね。とばかりに手酷い一撃を叩き込む。
サフィーアを守るように二人を睨みつけるトパーズァ。しかし、彼らの抵抗空しく子供たちの防衛戦は一瞬で瓦解してしまった。
喉輪を掴み上げられたトパーズァが足をばたつかせる。
サフィーアのやめてぇっという悲痛な叫びが洞窟内に木魂した。
幼女たちが嘆いている。
幼女たちが悲しんでいる。
幼女たちが死に瀕している。
幼女たちが見ているのだぞ! ここで命を掛けず。いつ掛ける?
ロリコーン侯爵は答えるように吠えた。
必死に咆えて立ち上がる。
「負けん。貴様等のようなロリコーンの風上にも置けぬ奴等には……負けてなるものかァッ!! 幼女が、見ているのだぞォォォ――――ッ!!」
猛る思いのまま走る。
トパーズァの喉輪を掴むペドコーンに。倒れようとしたのじゃ姫の髪を掴み上げるショタコーンに。貴様等の血は何色だと叫ぶように、侯爵は己の命を賭して突撃した。
だが、彼の前に、皇帝が立ちはだかる。
絶対的な強者が彼の想いを踏みにじる。
力こそ正義だと。幼女は屈服させて従えてこそ映えるのだと、侯爵の理想を圧倒的な力でねじ伏せる。
再び地に伏した侯爵が叫ぶ。
もうやめてくれ。心からの叫びは、しかし誰にも届かない。
絶望的な光景に、彼は必死に祈り、叫ぶ。
「ああ、幼女の神よ。ロリコーン神よ。もしも本当に、本当にいらっしゃるというのなら、このような非道を許してはなりません。我らがロリコーン紳士たちは幼女を見守り、傷付けることなく、健やかな成長を見守るべき存在。己の欲望を満たし幼女たちを泣かせてはならないのに、神よ、貴方に慈悲はないのかっ」
「ふっ。ふはははは。何を言っているのだ侯爵。ロリコーン紳士たちは誤解しているだけなのだよ。幼女を見守り悦に入る? それで貴様等は何を得る? ただの自己満足だ。だから私も自己満足に幼女を侍らすのだよ。ロリコーン神がいるというのなら、この私の行為を止める訳が無いだろう。幼女の愛で方が違うだけなのだからなっ!!」
「おのれ……おのれロリコーン皇帝ッ! 貴様、安らかに死ねると思うなっ。必ずや非業な最後を……」
叫ぶロリコーン侯爵の顎を蹴りつけ黙らせる。
全裸の皇帝は高笑いを浮かべ、侯爵を見下ろした。
「我こそが皇帝、死など恐れぬわ。幼女を侍らし豪遊し、太く短く消えるのみ! 死ぬ時のことなど考えてどうする? 幼女は今、この時、手を伸ばせば届く場所にいるのだぞ!!」
「黙れ……黙れっ! 紳士としての振る舞いを忘れた貴様は王でもなんでもないっ。ただのアクリコーンだっ」
「貴様ッ、我をそこまで愚弄するか!」
満身創痍をロリコーン侯爵を掴み上げ、膝蹴りを叩き込む。
嗚咽を漏らす侯爵を投げ飛ばし、倒れた幼女たちに視線を向けた。
「そう言えば貴様、のじゃ姫を救いに来たと言っていたな。ならば喜べ、今ここで、貴様の目の前で、あの者を我が番いにしてくれよう」
「なっ!? や、やめろっ。やめろぉぉぉ――――――っ!!」
ショタコーンが掴んでいた髪を引いてのじゃ姫を無理矢理立たせる。
復活したワンバーカイザーが皇帝の足に噛みつく、必死に主を助けようとする彼を引きずりながら、皇帝がのじゃ姫の前へとやってきた。
恐怖に怯えるのじゃ姫を抱えあげる。
「やめてくださいッ! 誰かっ、 誰でもいいから、もうこんな酷いことやめさせてぇ――――っ!!」
トパーズァがペドコーンの拘束を振り切り泣き叫ぶ。
絶望が支配する洞窟に、それは無意味な叫びだった。その、はずだった。
「トパアァァァァァァ――――――――――――ズァァァァァッッ!!」
神は、見捨てていなかった。




