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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その救出者が来ているのを僕らは知らなかった
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AE(アナザー・エピソード)その戦闘狂の闘いを僕等は知らない

「ダクネムロート!」


 デヌの一撃を涼しい顔でロリコーン皇帝が弾く。

 皇帝の実力は初めこそデヌに圧倒されていたものの、瞬く間に実力が反転していた。

 もともと王になった時点で幼女を守る際のステータス上昇率が物凄いことになっているのだ、デヌの実力を追い越すのに時間はかからなかった。


「クソッ、なんて強さ」


「幼女を守る時、我等は無限に強くなる」


「だが、強敵である程燃える展開だ、これこそ俺が求めた戦場ということか。お前を倒して魔族の強さを知らしめる」


「貴様を倒し、幼女の楽園を作ってみせる」


 二人の男が激突する。

 半裸男のデヌの拳を受け止める全裸の皇帝。

 構わず打ち込むデヌの連撃を、片手で防いでいく皇帝。今では完全に遊んでいるように見える。


「どうしたどうした? 時間をかければかける程我等は強くなるぞ? まぁ、貴様程度ではこれ以上の上昇は見込めんようだが、充分だ」


「抜かせっ!」


 最初はデヌの方が遊び感覚だったのに、思わず唇を噛むデヌ。

 実力は完全に逆転している。

 既に勝てる気がしない。

 最初に様子見などせずに全力で倒しに向かえば勝てなくはない存在だったのに……


「そら、反撃行くぞっ」


 ステッキの一突き。

 視認すらできなかった。

 気が付けばデヌの腹部にステッキの底が突き刺さっていた。


「ごはぁっ」


 唾が飛ぶ。想定以上のダメージで壁に向かって吹き飛ばされ、激突と同時に腹の痛みが襲いかかった。


「がぁ……クソ」


 倒れた身体はあまりに重く、腹の痛みに呻きが漏れる。

 手で腹を押さえながら、なんとか立ち上がる。

 たった一撃で膝が笑っていた。


「マジか。この俺が……」


「フォッフォッフォ。次の一撃で終わりそうですな」


「クソ……」


 ロリコーン皇帝。流石に王を自称するだけあってその実力の上昇値が想定以上だ。

 これは、勝てないかもしれないな。漠然と思いながらもデヌは未だに闘うワンバーカイザーを見る。

 自分よりも強くなっている伯爵相手に必死に食らいつくその姿は、負け犬などでは決してない。

 彼に、頼まれたのだ。愛しき主を救いたいと。手伝ってほしいと、必死にお願いされたのだ。

 その思いを、彼がまだあきらめていないのに、自分一人が先に諦めて良い訳が無い。


「マリスフェザーッ」


「フォッフォッフォ。破れかぶれでは勝てはしませんぞ?」


「やってみなければわからんだろう。行くぞッ」


 走りだすデヌにステッキを構える皇帝。

 ふと、接近するデヌに注目しながら皇帝は先程生み出されたマリスフェザーがどこに行ったかと疑問を浮かべる。

 迫るデヌの付近にあった気がするが、今気付いた時には既に消えていた。


 だが、その疑問は直ぐに消えた。

 考える余裕を与えないとばかりに迫り来たデヌの拳が襲いかかる。

 すっと避けて反撃を打ち込んでやろうとした皇帝。その視界の端に、黒い球体が掠めた。

 咄嗟に身体を捻り避ける。

 ぎりぎりで魔法を回避、そこへ打ち込まれる更なる打撃。


「フォっ!?」


 ステッキで受けた瞬間デヌの背後から現れたマリスフェザーが脇腹に直撃した。

 「おっふ」と思わず声を漏らす。


「貰ったぞっ」


 ぎきゅっと地面を鳴らし、デヌ渾身の回し蹴りが皇帝の側頭部に突き刺さった。

 吹き飛ばされる皇帝は地面に転がりごろごろと回転する。

 被りを振るって立ち上がった。


 油断した。まさか自分を目隠しとして使って来るとは想定していなかった。

 強者故の油断であったと自身の驕りを認め皇帝はデヌをしっかりと見定める。

 彼を強者と認めよう、これ以降、手抜きは無しだ。


「本気で行く」


「こっちは既に本気なんだがな……」


 ここからが勝負か。

 思わずデヌは冷や汗を流す。

 全身が武者震いに震える気がする。


 全身が猛っていた。強者の本気の視線を前にして、闘えることに不覚にも喜びが生まれたのだ。

 デヌはうずっと動きそうになる身体を押し留め、ワンバーカイザーを見る。

 今回は、強者相手に全力で打ちかかり破れていいわけではない。

 知略を巡らせこの強敵を倒さなければならないのだ。


「行くぞ、皇帝!」


「来るがいい宿敵ともよ!」


 マリスフェザーを唱え、再び突撃。

 しかし、同じ技は通じない。それくらいはデヌだって理解している。

 新たに魔法を唱え、拳に乗せる。

 暗黒色に染まる右拳を握り、全力を込めた。


「くらい、やがれぇっ!!」


 渾身の一撃に反応するようにマリスフェザーがデヌの背後から襲いかかる。

 皇帝は身を捻ってデヌの一撃を避けようとして、マリスフェザーの連撃が先に来ると気付いて素早くそちらの回避に集中。デヌの一撃をステッキで受け止める。


「っ!? これは!?」


 拳がステッキに当った瞬間だった。

 闇が弾けた。

 散弾と化して皇帝に襲いかかる。

 勝った! デヌが自分の勝利を確信した、その瞬間。

 目の前にいた皇帝が霞みのように消え去る。


「っ!?」


「残像ですぞ?」


 デヌの後頭部に衝撃、デヌの意識が刈り取られた。

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