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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その救出者が来ているのを僕らは知らなかった
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AE(アナザー・エピソード)その肉食達の闘いを僕等は知らない

「ガルァっ!」


 涎塗れで大口開き、プリカという名の肉食獣が襲いかかる。

 ペドコーンは戦慄しながらステッキで迎撃するが、その悉くを人力を凌駕する加速力で回避され、想定外の所から反撃が飛んで来る。

 油断すれば身体に噛みつかれ、肉をごっそり持っていかれる。

 先程は肩をやられた。


「ボンナバンッ」


「るがァっ」


 渾身の一撃を避けられたうえに顎に衝撃。地面に両手を付いて身体を逸らしたプリカの蹴りが叩き込まれたのだ。

 衝撃で一瞬身体が浮いたペドコーンに、更なる逆足の追撃。

 顎を襲う二連撃に思わず意識が明滅する。


 地面に背中から倒れたペドコーンは、本能で真横に転がった。遅れて飛びかかってきたプリカがペドコーンの喉があった場所に噛みついて来る。

 一瞬でも遅れれば今ので仕留められていただろう。


 冷や汗かきながら立ち上がるペドコーン。

 しかし、次の瞬間接敵しているプリカ。

 驚くペドコーンに接射の一撃。

 突然取り出された弓から放たれた一撃を腹に喰らい、呻きを漏らすペドコーンの腹部へプリカの飛び膝蹴り。


「ごぱぁっ!?」


 崩折れるペドコーンに真上から両手を組んだプリカの一撃。

 まさに圧倒的戦力によりペドコーンが沈んだ。


「よし、次」


 残ったショタコーンかロリコーン皇帝に向かおうとしたプリカだったが、その足をペドコーンが掴み取る。


「あれ? まだ意識あったんだ?」


「幼女王国を作るために、幼女を守る。我こそは、ペドコーンなりっ! 幼女が、見ているのだぞ――――ッ!!」


 プリカを引き倒し立ち上がったペドコーンは全力でジャイアントスイング。

 足を持たれたプリカはなすすべなく回されふっ飛ばされる。

 だが、壁にぶち当たる瞬間身体を入れ替え壁に足から着地。

 勢いを反発に変えてペドコーンへと飛びかかる。


「ルガァ!」


「そろそろ、追い付きますよッ!」


 プリカの一撃を避けるペドコーン。

 今までとは一段階上がったペドコーンの実力にプリカの攻撃が少しずつ外れ始める。


「あ、あれ? これはちょっと、マズい?」


「残念でしたな。我等ロリコーン紳士系偽人は幼女を守る時こそ真価を発揮するのですよ。時間を掛け過ぎたあなたの負けです」


 事実上の勝利宣言。

 実際プリカの攻撃は当らなくなり、次第ペドコーンが押し始める。

 驚くプリカだが、さらに力を付けて行くペドコーンの実力に、徐々にダメージを負い始めるのだった。




 パイラを相手にしたショタコーンは戦慄していた。

 開始早々相手は一物向けて大口開けて食らいつこうとして来たのだ。

 おそらくただのロリコーンなら容姿的に幼女体型のパイラに喜んで差し出していただろう。

 ショタ好きだった彼だからこそ必死に逃げた。結果、食い千切られることを回避できたのだが、迷いなく男の尊厳に向かって来たパイラに戦慄を覚えざるを得なかった。


「残念。食事……」


「なんて破廉恥な娘だ。やはり幼女など害悪、ショタこそ最高の生物ではないですか!」


「心外」


 突撃するパイラが大口開いて飛びかかる。

 直線的だったので身を捻って避けるが、その腕をパイラに掴まれる。

 マズい。と思わず防御にステッキを使ったのがさらにマズかった。

 ばくり。ステッキが食い千切られる。


「んー、金属質」


 ばりぼりごきんと音を鳴らして咀嚼するパイラに戦慄する。

 この女は何でも喰うのだ。文字通り、ステッキも、ショタコーンも、何もかもをだ。


「このような存在に、我がショタ千年王国を邪魔されてなるものか!」


「いくらでも強くなれ。強くなったのを食べる方がおいしい」


 ショタコーンもペドコーン同様パイラを越えて強くなる。

 しかし、強くなれば強くなるほどなぜか恐怖が増して行く。

 ギラギラと好物を見付けた肉食動物の目で見つめて来るパイラが少しずつ獣化していっているのだ。

 涎を垂らし、唸りを上げ、腹の虫を盛大に鳴らす。

 暴食の七大罪がその真価を発揮しようとでもいうように。

 ショタコーンは気が気ではなかった。少しでも油断すれば確実に喰われる。


「ふ、フオォォォォッ!!」


「いざ、実食っ」


「く、来るなァァァ!!」


 半ば半狂乱でパイラから逃げまどう全裸男。

 変態が逆転したような逃走劇が始まった。

 投げ捨てたステッキの残りが喰われ、途中で拾ったタキシードもスラックスも食い千切られ、帽子すらもパイラの口へと消えて行った。


 一度や二度、噛みつかれたせいで左腕の一部と尻に歯形が残っている。

 もしも速攻引きはがさなければ肉ごと持っていかれていただろう。

 今も歯型に血が滲んでいるのだ。本気で踊り食いしようとしているのは明白であった。

 こんな敵とは闘いたくない。ショタコーンは必死に逃げながらパイラを倒す術を考えるしかなかった。

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