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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その救出者が来ているのを僕らは知らなかった
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AE(アナザー・エピソード)その忠犬の想いを僕等は知らない

「ワオォォォォォン!!」


 ようやく見つけた。

 そいつはのじゃ姫の姿を見つけた瞬間、思わず声を上げていた。

 ずっと探していた。本気で探していた。

 自分だけでは敵わないと気付いた彼は、自分のつてを頼って仲間を集い、そして今、ペリルカーン達と共に自分の鼻だけを頼りについに此処に辿りついた。


 倒れたロリコーン侯爵やまだまだ死なぬわ達を見て、ギリと歯を鳴らす。

 やはり、自分だけで来なくて良かった。

 たった一人で探しても、おそらくロリコーン侯爵の横に並ぶだけになっていただろう。


 不甲斐ない自分を認めたくはなかった。

 主を守れない弱い自分だと認めたくなかった。

 仮にも魔王なのだ。この程度一人で解決してみせる。そんな自己満足に縋らなくて、よかった。


 みっともなくても彼は頼った。

 仲間たちに縋りついたのだ。

 そして彼を救おうと四人の男女が立ち上がってくれた。


「ワンバーちゃんを泣かせたのは……お~ま~え~ら~かぁ?」


 ワンバーカイザー。

 魔王にしてのじゃ姫のペットとして存在するレイドボスの一人。

 その力は迷いなく言える。強力だと。

 だが、彼は慢心などしなかった。のじゃ姫を連れ去られた事実を踏まえ、仲間を集って救出に来たのである。


 仲間は四人。彼の嘆きに逸早く反応して着いて来てくれた最高の友、にして宿敵、プリカ。

 彼女と共に集ってきてくれたのは、同じく暴食仲間、パイラ。

 そしてアルセ姫護衛騎士団を寿退団したが、嘆く仲間の為に立ち上がってくれた夫妻が来てくれた。


「全く紳士の風上にもおけん奴等だな」


「ふぇっふぇっふぇ」


 そう、デヌとGババァ夫妻である。


「な、なんだ貴様等は?」


 流石に驚きを露わにするロリコーン皇帝に、デヌがニタリと笑みを浮かべた。


「友の嘆きが俺を再び戦場に呼び戻した。貴様等は少々派手に動き過ぎたのだ」


「何が友の嘆きか! 幼女以外に何が闘うべき動機となろう。貴様らなど一捻りにして我が王国を建国してくれようぞ!」


 デヌが皇帝へと走る。

 影からニンニンにトドメを差そうとしたネクロコーンにはGババァが光の速さで突撃し側面から体当たり。

 反応すら出来なかったネクロコーンが壁にめり込んだ。


 さらにプリカとパイラがショタコーンとペドコーンに突撃する。

 涎塗れで襲いかかって来る女達に全裸の紳士たちは顔を青くしていた。

 攻守が再び逆転する。


「バカな!? なんだこの力は!?」


「ぎゃぁぁ!? そこは食べるものではないぞ女っ!? 噛みつくなァっ」


 男達の悲鳴が轟く中、ロリコーン伯爵と対峙するワンバーカイザー。

 彼だって理解している。自分はデヌ程の実力はない。だから皇帝に敵うと思っていない。だが、伯爵相手ならば、勝つか負けるかはともかく、時間稼ぎは出来るだろう。

 時間さえ稼げばプリカかパイラが相手を倒してこちらにフォローに来てくれる。そう信頼して、ワンバーカイザーは自分の最善手で動き出す。


「ふん。犬風情が私の相手ですか」


「グルルルル、ガゥッ」


 走るワンバーカイザーにステッキが襲いかかる。

 ずぶりと脳天に突き立つステッキの感覚に不快を覚えたが、ワンバーカイザーにとってそこはただのパンである。

 即座に巨大化して大口を開く。


「なんだと!?」


 ステッキを突き刺して勝利を確信したロリコーン伯爵は、ダメージを喰らった様子のないワンバーカイザーに驚きを浮かべる。

 ぱくりと口に含まれ、物凄い勢いで吐き出される。

 人間魚雷と化した伯爵が壁に頭から突き刺さった。


 さらにピクルスブーメランが彼に襲いかかる。

 すんでのところで壁から身体を引き抜き回避。

 ステッキを投げつけるが、ワンバーカイザーは自身が貫かれるのに構わず突進して来る。

 巨大なワンバーカイザーの突撃に、慌てて回避するロリコーン伯爵。

 転がった先に牢屋があったためにワンバーカイザーが突進を躊躇う。


「幼女を盾にするのはあまり好みませんが、反撃と行きますよ!」


 肉体言語とばかりに突撃した伯爵が飛び上がり、ワンバーカイザーの頭上からかかと落とし。さらに拳の連打に回し蹴り、ワンバーカイザーの体力が一気に消えて行く。

 最後の一撃とばかりに振るわれた切り裂くような蹴りの一撃でワンバーカイザーの巨体が二つに切り離された。


「のじゃぁ!?」


 悲鳴を上げるのじゃ姫。自分の為に必死に闘ったワンバーカイザーが負けたことで思わず悲鳴がでたようだ。

 幼女の悲鳴に心を痛めるロリコーンたちだが、自分たちの国の為にと心を鬼にして闘いを続ける。


「ふぅ、ついつい殺してしまいましたか。幼女を悲しませるとはわたしもまだま……」


 ワンバーカイザーに背を向け脱ぎ捨てた服を手にしようと中腰になった瞬間だった。

 最後から放たれたトマトカッターが尻に突き刺さった


「はおぅっ!?」


「ワォォォォォ――――ンッ!!」


 怒りの咆哮と共に再生を終えたワンバーカイザーが突進を開始した。

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