AE(アナザー・エピソード)その幼女の味方を僕等は知らない
ロリコーン侯爵はその光景を信じたくなかった。
自分と同じロリコーン紳士の亜種でありながら幼女に迷惑を掛ける五人の偽人たち。
その行為はあまりに下劣。あまりに非道。あまりに、許しがたい。
嘆き悲しみ、ステッキを振るう。
お前達を許しはしないと、血涙流しロリコーン侯爵は一人敵対を宣言した。
五人のロリコーンたちも彼が自分たちとは違うと気付いたようで、ステッキを取り出す。
ロリコーン皇帝だけが仁王立ちして睥睨し、ロリコーン伯爵が率先してロリコーン侯爵へと対峙する。
「邪魔立て無用にお願いしたい」
「全ての幼女を解放なさい。それ以外、貴様等に救いの道はありませんぞ?」
「ならば実力で取り返せ。貴様程度にできるならばな!」
「では、押し通ると致しましょう」
ロリコーン侯爵対ロリコーン伯爵。
不敵な笑みを浮かべる伯爵に、侯爵は踏み込みと同時に杖を突きだす。
ばさり、伯爵はマントを取り外し侯爵の一撃を華麗に躱す。
「ふふ。マタドールはご存じか?」
「っ!?」
「そなたは言わば猛牛。私はそれをマントで華麗に避け、力尽きた身体に杖を突き立てる者。さぁ、闘牛を始めよう。そなたの死という名の決着のために!」
侯爵は踏み込みと共に杖を打ち放つ。
しかし、マントを盾のように扱いひらりと避ける伯爵。
必死に攻撃を行うが侯爵の攻撃は見事に外されてしまう。
幼女たちが見ているのだ。負ける気はないし、今も実力は上限無く上がっている。
その筈なのだが、一向に伯爵との実力差が埋まる気配が無い。
そして、気付いた。
「ま、まさかお前達は!?」
「ふふ。気付きましたか。そなたは我々から幼女を守るために限りなく強くなる。我々は取り戻しに来たそなたから幼女を守るために限りなく強くなる。すなわち、差は一向に縮まらない。そなたは初めから我等には勝てんのですよ!」
次の瞬間、初めての反撃。
ぎりぎりハーフ・ヴォルテで回避する。
さらにファンデヴエスパーダで反撃。
しかしこれはマントにより回避されてしまった。
「面倒な!」
「実力的に伯爵と侯爵ならば拮抗しているようなモノ。我等に勝利できると思うな若造!」
「我が幼女の為に、負ける気はないッカスタムバルカンストライク!」
「っ!?」
とっさにマントで身体を隠した伯爵に、連撃の嵐が襲いかかる。
マントが物凄い音と共に何度も貫かれる。
だが、マントが落下した先に、伯爵の姿は存在しなかった。
「なんと!?」
「残像ですぞ?」
背後に出現した伯爵は上半身を全裸にした状態から杖を振るう。
殺った。と思った瞬間だった。
突き刺したロリコーン侯爵の姿が消え去り、燕尾服だけが落下する。
「これは!?」
「ボンナバンッ」
残像ですぞ? で回避した侯爵の一撃。側面から食らった伯爵が吹き飛ばされた。
襟首を正し、ロリコーン侯爵がその場で容姿を整える。
「残念でしたな。姫に忠誠を使いし私と木っ端の伯爵風情では、上昇値が違いましたな」
「ほぅ、伯爵では勝てんか」
「なれば我らが!」
ペドコーン、ショタコーン、ネクロコーンが一斉に打ちかかる。
しかし、その杖が穿ったのは、ロリコーン侯爵のYシャツだけだった。
「まだまだですな」
三人の背後に出現していた上半身全裸のロリコーン侯爵が不敵に微笑む。
驚く変態紳士三人に、カスタムバルカンストライクの連撃が襲いかかった。
「これは驚いた。流石は侯爵となっただけはある」
最後にじっと闘いを見ていたロリコーン皇帝がついに動き出す。
手にするのは仕込みステッキ。
すらりと引き抜かれた致死の武器に、ロリコーン侯爵もまた、ステッキの仕込みを取り出した。
「キングクラスと闘うことになるとは、長生はすべきではなかったやもしれませんな」
今までは格下相手の闘いだった。だが、こいつだけは違う。ロリコーン侯爵の上昇値などものともしない上昇率を誇るロリコーン王にして皇帝。幼女を守ることに関して、彼ほど強力な存在は居ないだろう。
例え、のじゃ姫の忠誠変態侯爵スキルが発動していたとしても、ロリコーン侯爵では荷が重い存在に思えた。
「Rassemblez! (ラッサンブレ)Saluez!(サリューエ)」
互いに礼をする。
「En garde!(アンガルド)」
互いに構える。
「「Etes-vous Prets?(用意はいいか?)」」
侯爵と皇帝が同時に尋ねた。
「「Allez!(アレ!)」」
互いに飛び込み突きの一撃。
コントルアタックとなった一撃を互いに避ける。
攻撃速度はほぼ互角。
攻撃力も回避速度もほぼ互角。
しかし、全ての上昇値が徐々に二人の実力を変化させていく。
「くっ!?」
「ふはは。どうした侯爵。ずいぶん遅くなっているな! 違うか? 私が速くなり過ぎているらしい」
同じ幼女を守る者同士、上昇値は侯爵よりも皇帝の方が高い。そのためいくら侯爵が強化されようとも、皇帝の強化力には及ばないのだ。次第実力差が開いて行く。
「くたばれ侯爵!」
「まだですっ!」
懇親の一撃がスラックスを貫く。
しかしそこにロリコーン侯爵は存在しなかった。
だが、皇帝もそれは気付いているようで、即座に振り向き突き出されたステッキを弾く。
全裸のロリコーン侯爵の一撃は軽くいなされてしまった。
「三段強化か。だが、既に貴様はそれ以上上がるまい?」
「かもしれませんな。だが、それがなんだと?」
「気付いてないのか? 私はまだ三度の変態を残しているのだよ」
「っ!?」
そう、侯爵は気付きたくない事実に目を見開いた。
彼の目の前で皇帝がその衣類を脱ぎ捨てる。勝敗は、既に決まっていたのであった。




