その女の新機能を僕等は知りたくなかった
「あー、ちょっとリエラさんたちどこ行ってたですか!」
村に戻るとテッテが僕らを見付けて走り寄ってきた。
ぷんすかーっといった様子の彼女がぎゃーぎゃー喚きながらリエラの前でぴょんぴょん跳ねる。
両手上げてるのは何でなの?
「あはは。ごめんごめん。ちょっと所用で鉱山の方調べてたの。アホ毛コボルトが発生した原因調べようと思って」
「鉱山ですと!? で、ではアホ毛コボルトたちの発生源を特定なさったので!?」
村長が慌てたように人波割って現れた。
「ええ。なんとか……」
「で、では、では、鉱山は? 鉱山は使えるのですか!?」
「た、たぶん?」
興奮した様子の村長が鼻息荒くリエラに近づく。血走った目でふんすふんす言いながら近づくおっさんはある種恐怖だ。
「あー、と、とりあえず鉱山で出会ったアホ毛型生物は倒したけど、まだ残存してるのがいるかもだから、その辺りは他の冒険者雇って調べて貰って。一応元は断ったつもりよ」
「あ、ありがとうございますっ。ありがとうございますっ!!」
リエラの手を取り、必死に額を擦りつけるおっさん。すっごい迷惑そうなリエラ。
あとで手、消毒して洗っとこうね。
ぎゃあぁ村長鼻水っ、鼻水出てるっ!?
ぎりぎり鼻水が付く前に手を引っ込めることに成功したリエラはあははと苦笑いしながらなおもお礼を告げる村長にお礼を言われ続けて迷惑そうにしていた。
とりあえず、アカネさん現状の報告皆さんにお願い。
村の入り口から広場へと場所を移し、アカネによる鉱山での報告が始まる。
狂った男により作られた魔法生物。アカネ達に討伐されたのでもう新たにアホ毛型生物が生まれることはないだろう。
だが、犠牲者は確かにいるのだ。
最後のアホ毛となったユイアは、すぐ隣の狼さんに気付くことなく、アホ毛を揺らしながらバルスの横にずっと佇んでいた。
「はぁ、大変な目に遭いました」
リエラがまだ水滴の突いた手を振りながら僕の隣にやってきた。洗って来たようです。
あははリエラ大変だったね。
「大手柄ですね。流石ですリエラさん」
そして僕の後ろからやってくるアンサー。
おっと危ない。
今ぶつかりかけたよ!?
慌てて前に出たから大丈夫だったけどさ。ちょっと、そこ僕の居た場所なんだけど!?
仕方無いのでリエラの逆側に立つことにしました。
が、そこに現れるゴードンさん。あっぶなっ!? 弾き飛ばされるかと思った。
「よぅ、嬢ちゃん。そろそろ行こうぜ。俺らとしても急ぐ旅だ」
「そ、そうですね。アルセ。いいかな?」
「おっ!」
「でもリエラさん、結局何処に行けばいいんです?」
と尋ねたのはユイア。そもそもロリコーン共が何処に居るか分からないのが辛いところなんだけど……あれ? ユイア、そのアホ毛、そっち向きだっけ?
「のじゃ姫たちの居場所か……どこにあるのかな?」
疑問符浮かべるユイアのアホ毛が、ある方向を差したまま動きません。
さっきまでとは逆方向。僕らが向かおうとしていた方角を指し示すようにアホ毛が自己主張してる気がします。
せっかくなのでアルセの指を使って指摘してみる。
「ん? アルセどうしたの? アホ毛?」
リエラが気付いてアホ毛を見る。しかし、首をひねった。
「どうしたのリエラ?」
演説終えたアカネが戻って来る。
「アルセがユイアさんのアホ毛を指差してるんですけど、理由分かります?」
「ん? アホ毛……」
顎に手をやり考えるアカネ。何かを考え付いたようだが、確証は持てなかったようで、恐る恐るユイアを見る。
「ユイア、コルッカってどこにあるか分かる?」
「へ? いきなり言われても……」
戸惑うユイア。しかしその頭上のアホ毛はコルッカのある方向へと倒れる向きを変えていた。
それを見たアカネたちがごくりと生唾を飲み込む。
「ユイア。この村の場所は?」
「え? 場所って、えっと、ここ、です。でいいのかな?」
指で地面を指し示すユイア。しかしアホ毛はぴんっと真っ直ぐに立ってみせた。まるで目的地に到着したとでもいうようだ。
「のじゃ姫の居る場所は?」
さっき僕が気付いたのと同じ方向へと倒れるアホ毛。
間違いはなかった。
アホ毛は知っているのだ。僕等人間にはわからずとも、このアホ毛はのじゃ姫の居場所を感知している。
「ナイスよユイア! 目的地が見つかったっ。アルセ姫護衛騎士団! のじゃ姫救出に向かうわ。急いで集合っ!!」
嬉々として声を張り上げるアカネ。他の皆がまだ理解できてないけど彼女だけは気付いてくれたようで良かった。これがアホ毛を持つ者だけが使える謎電波受信という奴なのだろう。
アルセの呼び笛によりエアークラフトピーサンがやって来る。
舞い降りる空軍カモメたちにアルセ姫護衛騎士団が飛び乗り、早々に旅立っていくのだった。
なぜかアンサーも一緒に乗り込んでるんだけど、やっぱり付いて来るんだねこいつは。




