その男の言葉に込められた真実を彼女は知らない
「ゆ、ユイア?」
戸惑いながら装置から出てきたユイア。
その容姿は合成される前とほとんど変わっていない。
コボルトの身体が合成されているわけでもない。
耳は人間のものだし、四肢も犬ではい。毛並みもないし、尻尾も生えてない。
コボルト要素は全く合成されていなかった。
ユイアはユイアのまま、変化らしい変化は一つだけだった。
それが……アホ毛だ。
ユイア・イレップス
種族:アホ毛 クラス:アホ毛
アホ毛:アホ毛型生物
アホ毛:アホ毛専用クラス
装備:烈攻の杖、藍色ローブ、ウッドサークレット
スキル:
ラ・ギ:火魔法Lv1
ラ・ギラ:火魔法Lv2
ラ・ギライア:火魔法Lv3
バム・ド:広範囲火魔法Lv1
バム・ドラ:広範囲火魔法Lv2
恋する少女の魂:恋する乙女魔法使いに出現する魔法。
青き轟炎:特殊火魔法・極
常時スキル:
詠唱速度Lv3
状態異常無効
アホ毛:本体が破壊されない限り死亡することはない。
変わらぬ角度:アホ毛が風などの何かによって位置が変わる事が無くなる。
種族スキル:
魔術の心得:魔術を扱う心構えを習得した証。クラスが魔法使いになる。
奉仕Lv2:甲斐甲斐しい世話を焼ける能力。
……あー。
魔物図鑑を通してみれば、成る程、確かに合成されてます。
つまり、アホ毛コボルトとユイアを合成すると、アホ毛ユイアになった……と。
ぴょこぴょこと揺れるアホ毛が今はユイアの本体だそうです。
思わず皆がアホ毛に注目する。
風もないのに揺れるアホ毛がなんか気になる。
ユイアもその視線に気付いたようで頭上に目線を送るが、流石に自分では見る事が出来なかった。
「ユイアさん、それ……」
思わず震えた声で告げるリエラに、ごくりとユイアは覚悟する。
「な、何? リエラさん、私、どうなっちゃったの?」
そんな彼女にアルセが笑顔で魔物図鑑を見せた。
ユイア自身のステータスを見せられ、その決定的事実に彼女は戦慄する。
ユイアの種族もクラスも完全にアホ毛に浸食されていた。
「う、嘘……そんな。私……種族、アホ毛?」
どさり、尻から崩れたユイアに思わずバルスが駆けよる。
隣に近づいて来てしゃがみ込んだバルスに、ユイアは思わず縋りついた。
「どうしようバルスぅ、私、私……」
「だ、大丈夫。大丈夫だよ。ユイアはユイアだからっ」
必死に慰めようとしたバルス君。しかし、目の前でぴょこぴょこと揺れるアホ毛に視線が向かう。
ぴょこぴょこ、ぴょこぴょこ、ぴょこぴょこ……うずっ。
あ、ダメだ。バルス君がなんかうずうずしてる。
「人間じゃ、なくなっちゃった。私、これからどうしたら……」
泣きだしたユイアを優しく抱きしめるバルス。
「大丈夫。大丈夫だよユイア。僕がいる。僕がユイアを守るから。他の誰にも傷付けさせないよ。君は……僕の獲物だ」
え? っと思わず顔を上げるユイア。
それに気付いたバルスが慌てて彼女に視線を合わす。
「ば、バルス、それって……」
「あ。いや。今のは……その」
「……ありがと」
顔を赤らめバルスの胸元に顔を埋めるユイア。
彼女にとってはついに幼馴染が告白してくれ、バカップル誕生。という想いなのだろう。
だけど、彼女は気付いていない。バルス君の視線は常に彼女の頭の上で揺れるアホ毛に向いていることに。
なぜならば、彼は今、アホ毛バスター。アホ毛を狩ることこそが彼の生き甲斐。
そして、手を伸ばせば届く場所に、アホ毛が無防備に揺れている。
彼にとって、彼女はまさに、自分の獲物なのである。
思わず手を伸ばし掴み取ろうとした自分を必死に押さえ、バルスはユイアの肩を掴んで引き離す。
その顔は必死に欲望を鎮めようとしているようで、より真剣さが醸し出されていた。
まさに愛の告白でもしそうな顔である。
「ユイア。ユイアは僕が守るから。だから、絶対に他の誰にも狩らせないっ。僕だけの獲物だからね!」
「バルスっ。うん。うんっ。私、私一生バルスの女でいい。大切にしてね?」
「あたりまえだよ! 絶対に大切にするっ」
二人の意味合いの違う確約を、本人達以外が白けた目で見つめていた。
「くそ、ど、どうしてこんな……話が違うぞ。俺たちは最強だったんじゃ……」
あ、あの野郎逃げる気だ。
まだ生きていた男が逃げようとしてたのでストロファントゥスの種から作った毒液を取り出し名刀桜吹雪を漬け込んでから男を一閃。
小さな傷を付けてから刀をしまう。
皆がユイア達に視線を向ける中、自称勇者の男が一人、人知れず命を散らして行った。
うん、とりあえず此処の施設は全部破壊しとくか。アルセソードで切っちゃえば壊れるよねきっと。いや、もうそれより全弾放射で爆散させちゃおう。
と、言う訳で、アカネさんに一肌脱いで貰って魔弾連撃で完全破壊して貰いました。




