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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その女に起こった悲劇を僕らは知りたくなかった
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その女がどうなったのかを僕等は知りたくなかった

「むぅ?」


 炭鉱の奥の奥。

 アホ毛生物たちが無数に襲って来たが、その全てをバルス君が嬉々として狩り取ってくれたので殆ど無傷で辿りついた。

 人工の灯りが見えたので警戒しながら近づくと、一際大きな部屋に、そいつはいた。


「ほぅ、これは珍しい。冒険者か」


 そいつは白衣に身を包んだメガネの男だった。

 見るからにマッドサイエンティストなそいつの黒髪には、アホ毛が一つ。


「あ、あなたは!? なぜここに!」


 リエラが警戒した様子で剣の柄に手を当てながら告げる。

 ユイアも魔法使えるように姿を現し既に魔法を唱え終えた状態で待機している。

 他のメンバーは角で相手に見えないように待機。二人に何かがあった場合のフォロー要員だ。

 というか、ルクルさんがバルス君を押し留めるのに必死です。

 バルス君、あの男のアホ毛まで狩ろうとしてるし。


「ふふ。なぜここにいるか? よくぞ聞いてくれた!」


 キラリと光源がランタンだけなのにメガネを光らせ、男は嬉々として説明を始める。


「私は女神に選ばれし勇者なのだよ! この世界に来て好きに生きろと告げられてね! やはり異世界に来たからには、素敵なスキルを手に入れたからには、やりたい事をすべきだろう! だから、見よっ!!」


 ばっと男が背後に掌を向け、皆に見るように促す。

 そこには、不思議な機械で出来た装置があった。

 山型というべきか、二つの円筒形の装置とそれを繋ぐように中央に一際大きな円筒型の筒。

 左右の円筒型容器は人が入れるほど大きなもので、片方にはアホ毛コボルトと思われる存在が入っている。

 村を襲ったコボルトと違うのは黒色なことくらいか。おそらく種類が違った御蔭でアンサーの全体攻撃の被害を受けなかったのだろう。


 中央の容器は中身が見えないようになっているのだが、なんとなく、似たような装置をゲームとかで見た気がする。真ん中は円筒型機械じゃなくて魔法陣だった気がするけど。そう、あれは……邪○の館だっ。

 ってことはまさか、これは魔物同士を合成する機械ってことか!?


「ククク、見たまえ! 我が英知の結晶を! これが人魔融合機。そしてそちらにあるのが劣化コピー製造機だ!」


 左の壁際にある機材を差して得意げに告げる男。

 その瞳には狂気が宿っていた。


「つまり、貴方がアホ毛コボルトたちの製作者。そういうことですね!」


「肯定しよう! だが、ならばどうする気かね?」


「捕縛してしかるべき場所に連れて行きます! あなたのせいで村が襲われたんですよ!」


「村ぁ? 知らんな。第一、異世界であるこの世界の住民の事などどうでもよい。貴様等も所詮は実験動物よ。くく、ははは。そうだ! 今まで機会がなかったからおこなっていなかったが。貴様らで試すとしよう。さぁ、人魔融合を見せてくれ!」


 ガパリ、人魔融合機のスイッチを男が一つ押した瞬間、アホ毛コボルトが入っていない方のカプセル容器が開き、吸引を開始する。

 驚きながらも歴戦の感か、咄嗟に剣を引き抜きその場に突き刺し簡易の柱にして吸引に耐えるリエラ。

 アルセも即座にヒヒイロアイヴィを発動し、皆が吸引されないように風避けの蔦で邪魔をする。

 だけど……


「きゃあぁっ」


 一足遅かった。

 足場も風を避ける場所もなかったユイアだけは、吸引の風により人魔融合機へと吹っ飛んで行く。

 慌てて飛び出したバルスは、しかしヒヒイロアイヴィが邪魔になりユイアの手を掴み損ねた。

 僕らの目の前で。ユイアが人魔融合機へと消えて行く。


「一人だけだったか。まぁいい。そぉれスイッチオーン」


「ゆ、ユイアァァァっ!?」


 バルスの悲痛な悲鳴が無慈悲な機械音に打ち消される。

 男の勝利の嘲笑だけが響いた。

 いや、でもさお兄さん。あんた肝心なこと、忘れてるだろ?


「ライジング・アッパー」


 そう、機械が吸引を止めた以上、リエラさんは自由の身、即座に男に近づき、怒りの一撃を叩き込む。


「なぁっ!? しまっ」


 無慈悲に打ち上げられた男に、飛び上がったリエラが追撃を叩き込む。


「雷鳥瞬獄殺」


 無数の連撃を叩き込み、ストライクバスターでトドメの一撃。

 弾き飛ばされた男が無様に地面に落下する。

 一度バウンドした瞬間、着地したリエラの更なる連撃。


「弾指那由他斬」


 男は一言すら答えられなかった。

 悲鳴すら上げられず倒れる男に、リエラはまだ止まらない。


「角龍乱舞ッ!!」


 リエラさんやり過ぎです。

 ボロ雑巾のように倒れる男と、機械の中央部分が開かれ、融合された存在が姿を現すのとは、同時だった。

 ユイアとアホ毛コボルトとの融合体。その姿は……


「ユ、ユイア?」


「ば、バルスぅ……私、どうなっちゃったのぉっ!?」


 機械から現れたのはユイアだった。

 ただ、一つだけ、違う物。それは……ユイアの頭に生えた、アホ毛が揺れていることだった……

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