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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その女に起こった悲劇を僕らは知りたくなかった
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その獅子奮迅の活躍を僕等は知りたくなかった

 まさに超幸運が仕事したとはこのことか?

 アホ毛コボルトが現れた場所に、運良くバグってアホ毛バスターとなったバルス君がいたのである。

 全て壊れろっとばかりに剣を振るバルス。

 その一撃が広範囲のアホ毛を刈り取って行く。

 あ、村人のアホ毛も一緒に狩られたぞ!?

 お兄さんが僕の髪の毛!? とか言ってたけど、まぁ尊い犠牲と言うことで。


 今まで無敵を誇っていたはずのアホ毛コボルト達が、一気に消えて行く。

 まさに獅子奮迅、万夫不当とはこのことか。

 バルス一人で物凄い数のアホ毛コボルトがアホ毛だけになって行く。


 その動きで冒険者達も気付いた。

 コボルトではなくアホ毛が本体であるということに。

 皆が雄たけび上げながらコボルトの頭上でピコピコ揺らめくアホ毛を切り裂いて行く。


「バルス、凄いじゃないっ」


 エンリカもバルスの激闘を見て思わず称賛する。

 でもねエンリカ、ついさっきまでバルス君が活躍する筈じゃなかったんだよ?

 きっとそのうち誰かが気付いてこんな感じになってたと思うんだ。

 まぁ犠牲者はかなり出たかもだけど。


 その点を言えばバルスがバグったことはむしろ幸運だったのかもしれない。

 それに、アンサーも負けじとアホ毛コボルトのアホ毛に一撃を叩き込む。

 幸運はさらに続く。アンサー王子のスキル、全体攻撃が自動で発動し、同一チームだったらしいアホ毛コボルトたち全員がアホ毛を散らして消滅した。


 ああ、今の一撃のせいでバルスの闘いが一瞬で霞んだよ!?

 アンサーも自分の一撃でアホ毛コボルトが全滅したことに、切り裂いた状態を維持したまま眼を見開き呆然としていた。

 間違いなく、一番アホ毛コボルト狩ったのはアンサーである。

 多分だけど此処に居たアホ毛コボルトだけじゃなく同じ種族として存在していた奴等全員が一瞬で死んだな。今ならこいつ等のいた炭鉱って無人になってるんじゃないかな?


 勝利貢献で大人気になってるアンサーを放置して、僕はリエラの腕を引っ張る。

 リエラもまだ終わってないと気付いたようで、素直に付いて来た。

 ところでルクルさん、さっきからずっと僕の背後付いて来てるけど、何処まで付いて来るの? まぁいつも通りにスト―キングですよね。知ってます。


「リエラさん、何処に行くんです?」


「リエラ?」


 バルスとアカネが気付いて駆けよって来る。

 アンサー王子が注目を浴びる中、僕に腕を引かれたリエラとバルス、そしてアカネが冒険者たちの輪から離れて走り出す。

 それに気付いたアルセとユイアも付いて来た。


「リエラさん? どこに行く気?」


「わ、分かりません。ただ、まだ何かあるみたいです」


「バルス、あとユイアも、とりあえずリエラに付いて行きましょう」


 走る彼らを引き連れ、僕は炭鉱へと向かった。

 アルセが追い付いて来て僕の裾を掴んできたので引き上げて抱き上げる。

 今の、凄く速かったねアルセ。


 炭鉱へとたどり着いた僕らは、ようやく何処に向っていたかを理解してくれたようで、アカネが頷き説明を始めるのを聞いていた。


「ようするに、アンサーの一撃でアホ毛コボルトだっけ? が全滅してるはずだから、このダンジョン内には今、誰も居ないはずなのよね。原因、探すのね」


「そ、そうですね。折角ですし、原因が分かれば何かしらの対策が打てるはずです」


 急造パーティーはアルセ、リエラ、ルクル、アカネ、バルス、ユイアの六人です。

 アルセが発光して周囲を照らし、リエラ達がゆっくりと暗がりの炭鉱へと足を踏み入れる。


「皆さん、警戒はしておいてください。何が居るか分かりませんから」


「……結構暗いわね。アルセが発光してなかったら何も見えないくらいよ」


「それはいいんだけど、バルス、なんか、凄かったわね、珍しく」


「え? あ、うん。まぁ……」


 ユイアに驚かれて照れるバルス。頭を掻きながら俯く。


「ギャオッ」


「っ!?」


 最初に反応したのはリエラだった。

 ヒヒイロアイヴィソードで前方を切り裂く。

 アホ毛の付いたゴブリンが悲鳴を上げてのけぞった。


「アホ毛ゴブリン!?」


「リエラ! まだ来るわ!」


「アホ毛っ!!」


 次に動いたのはリエラではなくバルス。

 先程リエラが切り裂いたアホ毛ゴブリンのアホ毛を刈り取る。


「やっぱり、こいつ等アホ毛が本体だ!」


「アホ毛が本体って、それ何なの!?」


「アホ毛型生物?」


 ユイアの言葉に自信無げにバルスが告げる。

 いや、まぁそれくらいしか言いようが無いんだけどさ。

 にしても、何なんだろうねアホ毛型生物?

 こんな生物群が大量発生してるとか、意味不明なんだけど。


 アホ毛ゴブリン、アホ毛オーク、アホ毛猿と様々なアホ毛シリーズをアホ毛狩りしながら、僕らは炭鉱を奥へ奥へと向かって行く。その背後に、もう一人の足音があったことを、この時の僕らは誰も知らなかった。

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