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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十二部 第一話 その残虐な仲間がいることを僕は知らない
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AE(アナザー・エピソード)・そのアメリス邸の居候たちが何処から来たのかを彼ら以外知らない

「ぐぉぉ~っ、ぐがぁ~っ。ふごっ……」


 雀の鳴き声と共に、アキオは不意に目を覚ました。

 まだ重たい眼を擦りながら上半身を起こす。

 部屋に日差しが差し込んでいて眩しい。


 大欠伸をしながら立ち上がると、ケツを掻きながら部屋を出る。

 村長の妻にでも食事をねだろう。と思ったのだが、居間にやってくると、無数の子供達が眠っていた。

 その中に混じってネフティアが女の子に囲まれて眠っている。

 壁に背もたれ座るように眠る少女は、こうして見ると可愛さしかない。


「なんだこのガキどもは?」


 再び欠伸しながら外へと出る。

 がらりと戸口を開いて大地に足を付け、盛大に伸びをする。


「ん~~~っ。はぁ。今日もいい天気じゃねぇか。こういう日はバイクに乗ってヒャッハーしてぇ気分だな。チェーン振りまわして逃げまどう男どもの首にチェーン巻き付けて引きずりてぇぜ」


 空を見上げていた彼はゆっくりと視線を地面に向ける。

 真っ赤だった。

 思わず出かけた欠伸が止まるくらいの衝撃的な状況を目の当たりにしてしまった。


 慌てて周囲を見回す。

 なんか見てはいけない物体がそこかしこに転がっている。

 どう見ても異常事態だ。そりゃ子供がこの家にいる訳だ。


「ど、どどど、どうなってんだこれはっ!?」


 慌てて戻るアキオ。ドアを閉めると、ネフティアが起き上がった。


「お、おいネフティア、どうなってんだ!?」


 しかし、ネフティアは答えることなく拳を握り、親指を立てる。


「いや、グッじゃなくてだな。まぁ、何があったかは聞かねぇでおくけどよ、これからどうすんだ?」


 聞くと、ネフティアは地図を取り出しコルッカを指差す。

 どうやら一度戻るつもりらしい。


「あー、そうなるよな。まぁいいか。やっぱその子供たちも連れてくのか?」


 こくり、頷くネフティアに、アキオは子供達を見る。

 結構な数がいる。30人くらいいる少女達は殆どが7歳以下の子供。7歳以上の子は二人くらいしか見当たらない。

 皆、なぜかアキオを恐れているが、おそらくまだヒャッハーと勘違いされているのだろう。とアキオは溜息を吐く。


「まぁ良いんだけどよ。まずは村からどう出るんだ? 今下手に出るとトラウマ確定だぜ?」


 しかし、それをネフティアは否定する。

 身振りで何かを伝えてきた。


「ちょ、待てや! 俺が片付けろってのか!?」


 こくり。


「ふざっけんな! 俺何もしてねェだろ!」


 ぐっ。


「親指立てんなっ!? マジかよ……」


 何を言っても意味がない。気付いたアキオは溜息を吐く。




「あー、マジ死ねる」


 お昼も近くなったころ、アキオは平野を歩いていた。

 なんとかもろもろの作業を昼前に終え、コルッカ向けて来た道を戻っているのである。

 横に並ぶのはネフティア。

 いつでも動けるようにチェーンソウは常時装備である。


 彼らの背後には30にも及ぶ子供たち。

 村の生存者全員を連れ帰るつもりらしい。

 アキオは頭を掻きながら何でこんなことになったんだろうかと溜息を吐く。


 ネフティアの突飛な行動は今に始まった事ではないのだが、今回の事はさすがに酷過ぎる気がする。いや、ネフティアがやった事なのかどうかはわからないし、ネフティアは犯人を倒しただけかもしれない。ただ言えるのは村は完全に滅びていた。その一点だけだ。

 あの場に子供達を残す訳にも行かなかったので、このままコルッカまで連れ帰ることになったのである。


 道中に出現する魔物は即座にネフティアが反応。

 数が多い場合はアキオが数匹を受け持ち、ネフティアに余裕が出るまで持ち堪える。

 いくらアキオが弱いと言っても、防御に徹するのならばそれなりに持たせることくらいはできる。


 そのまま何事もなく、まぁ魔物には結構襲われたが、致命的な事は何も無くアキオ達は無事にコルッカへと辿りつく。

 なんだか物凄く疲れた気分だ。

 コルッカに辿りつくと子供達を俺に任せ、一人アメリス邸へと駆けて行くネフティア。

 おい待て、こいつ等どうしろっつーの?


「市民証か商業許可書、あるいは冒険者証をお願いできますかね」


 ネフティアの容姿もアキオの容姿も見知っているだろう兵士さんは、しかし事務的に対応して来る。

 アキオだけなら入れるのだが、他の子供達に証明証などない。

 そのためアキオも街の入り口でネフティアを待つことになった。


 しばらく待っていると、アメリスとミルクティを連れたネフティアがやって来る。

 二人は状況を把握しきっていないようで、なんですか? とネフティアに聞いていた。

 どうやらジェスチャーを諦めアキオに説明を一任するらしい。


「アキオ、どうしたの?」


「どうしたもこうしたもあるかよ。とある村の生き残りをネフティアが保護するつもりらしい。証明できるものねーんだけど、どうすりゃいい?」


「そうね。とりあえず仮の身分証を発行して貰うのが良いわね。一週間後までに対策立てれば問題ないわ」


 アキオの質問にアメリスが答える。

 しかし、アメリスは数の多い子供達に顔がひくついていた。


 後日、とある街で近くの村の様子を見てほしいという依頼を受けた冒険者が、滅亡した村を見付け、幼女だけが消えていることを冒険者ギルドに報告。今話題のロリコーン紳士幼女拉致事件と無関係ではないとして、各地に出没しているロリコーン伯爵たちの一味に掛けられる懸賞金が跳ね上がったらしい。

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