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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
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彼が何を思ってそこにいるのかを彼らは知らない

 翌日。宿から出て来た僕たちは、武器屋に向ってクーフと合流した。

 血塗れ状態だったので武器屋でシャワーを借りてクーフをカインとバルスで丸洗いする事になった。

 どうもこのシャワー、近くの井戸から水を引いて流すだけで日本にあるようなシャワーとは違うようだ。

 強いて言うならペットボトルシャワーみたいなもんだろう。


 タンクの代わりに井戸からの水をくみ上げ、穴の無数にあいた蛇口から水を吐き出す装置。

 ちなみに水は手動の旧式ポンプみたいな形状のモノをバルスが必死扱いて上下させる間だけシャワーから水が出る。

 そしてカインが解体した肉から血を洗ったりするためのブラシでクーフを擦る。


 洗われる側のクーフが何とも微妙な顔をしていたが、男達二人は朝一の力仕事に辟易していた。

 バズ・オークが居ればきっと率先して参加していただろうだけに惜しい。

 彼は未だに合流していない。

 一応ギルドの方で合流する手はずなのだけど……来るかな?


 ちなみに、おっちゃんからようやく出来たアルセソードを受け取ったカイン。ついでにもう一振り受け取って眼を白黒させていた。

 昨日バズ・オークが頼んでいた剣らしい。説明した武器屋の親父さんの言葉でようやく納得いったようでカインは剣を鞘に納めて二振り貰っていた。

 お金については新たにアルセイデスの蔦を売る事でチャラにしてもらった。

 アルセに知識がついたおかげかリエラがお願いすると快くマーブルアイヴィを使って武器屋の床をぶち破っていた。ちょっと親父さんが涙目だったのはないしょである。


 ギルドに付いた僕らはバズ・オークたちが来てないか軽く見回った後、ギルドの依頼を見たり討伐対象のネームドモンスターを見て時間を潰す。

 大体九時過ぎだろうか? ようやくモテ豚と肉食エルフがやってきた。

 見るからにバカップルである。

 顔を赤らめそっぽ向いているバズ・オークとその腕に絡みついているエンリカ。

 若干やつれたバズ・オークに比べ、嫌に艶々しているエンリカが僕らに気付いて手を振ってきた。


「すいません。役場で婚約届けだしてて遅れました」


「マジか!?」


 思わず僕はツッコんだ。当然他の面々は顎が床に付くほど口開けて驚いていた。

 肉食肉食と思っていたけど、行動始めたら動きが速過ぎる。なにこのエロフ、怖い。

 そして蜘蛛に絡め取られた哀れな獲物バズ・オーク。何故だろう。既に死を覚悟したようなご老人のように悟りを開いてみえる。


「こ、婚姻届って、速くないか?」


「そうですか? でも、これで私とバズ・オークさんは晴れて夫婦です。ね、あなた?」


「……ぶひ」


 鼻息に元気がない。一体彼の身に何が!?

 皆色々と思う事はあったようだが、全てスルーする方向に決めたようだ。


「さぁ、気を取り直してゴボル平原に行こうか」


「そ、そうですね。皆さんそろそろ行きましょう」


「バズ・オークとエンリカは準備は大丈夫?」


「はい。問題無いです」


「ブヒっ」


「あ、そうだバズ・オーク。これお前が頼んだ剣な」


「ブヒブヒ」


 カインから剣を受け取ったバズ・オークは、一度アルセを見る。が直ぐに視線を逸らした。

 アルセソードを自分の腰にあるベルトに鞘ごと付ける。というか、その角度だと剣取れなくないか? 自分で使う気はないとか?


 そしてゴボル平原です。

 平原に出た瞬間、僕らは即座に回れ右して町に一度戻りました。

 何故でしょう?


 答え、ゴボル平原のすぐ目の前に、一体のツッパリ様がウ○コ座りしていたからでした。

 まだ諦めてないのかよ!?

 しかもこの個体、今までみたツッパリより少し身体が大きい。

 身体中に傷もある。


 というか、こいつあの時の元番長じゃないか?

 ちょっと黄昏るようなその姿はなぜか哀愁をそそる。

 アルセに敗北したことで自慢のリーゼントは黒に戻ってしまっていた。赤に変化するのはきっと彼の自信が取り戻された時なのだろう。


 というか、リーダー不在になったツッパリたちはどうなるんだろう? やっぱり次の頭が赤くなった個体がリーダーになるんだろうか?

 ちょっと興味深くはある。


「ちょっと、なんでまだツッパリがいるのよ!」


「それなのですが、どうも本日未明にあそこに座りこんでまして。近づいても動きを見せないので危険はないようです。そのまま通り過ぎて貰って構わないかと」


 と、ゴボル平原側の衛兵さんが告げて来た。

 彼らもツッパリとアルセのガンつけを見ていたのでツッパリの目的は理解していたようだ。

 通過するだけなら冒険者に被害はないと判断したのだろう。


 多分、またアルセ待ってるはずだ。

 ああもう、やられる前にやっちまえ。だね。アルセ、いくよ!

 と、僕はアルセの肩を掴んでツッパリのもとへと向うのだった。

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