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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十二部 第一話 その残虐な仲間がいることを僕は知らない
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AE(アナザー・エピソード)・その少女が我が道を行っていることを僕らは知らない

 のじゃ姫が闘いを決意し、アルセがのじゃ姫が攫われた事を知る少し前、もう一人の少女もまた、ロリコーン伯爵に出会っていた。

 そこはとある村に向かう街道であった。


「お嬢さん、飴をあげよう」


 にこやかにほほ笑むロリコーン伯爵。王の為に数多くの幼女を集めるため、各地に出没していた彼は、道を歩く幼女を見付けて思わず声を掛けたのである。

 目の前に居るのは幼い顔立ちながら無表情の少女。

 色白の彼女には御供が一人。


 ひょろ長い男は世紀末にでも生息してそうなパンク頭の男であった。

 ロリコーン伯爵の出現に呆然としていた男を放置し、睡眠薬入りの飴を少女に差し出す。

 少女はそれに視線を向ける。しかし、動かない。


 さぁ取れ。早く取りなさい。貴方を楽園に御迎えいたしますからっ。

 しかし、少女は動かない。ただただじぃっと見つめるだけだ。

 焦れたロリコーン伯爵が無理矢理彼女の手に飴を乗せようと動いた瞬間だった。

 少女は突然スイッチが入ったようにバックステップし、何処からともなく取り出したチェーンソウをロリコーン伯爵に向け、迷うことなくエンジンを点火する。


 耳障りな音と共に無骨な刃が回りだす。

 一瞬で全身を悪寒が襲った。

 このままここに居ては殺される。

 即座に幼女を諦め一人マントを翻し消え去る。

 一瞬遅れ、幼女、ネフティアのチェーンソウがマントを引き裂いた。


「な、なんだったんだ今の?」


「?」


 なにが? とどうでもいいことが起こったとでもいう顔でチェーンソウのエンジンを切ったネフティアは隣のアキオに先行くよ。とばかりに指差し歩き出す。

 歩き出したネフティアを追ってアキオが歩き出した。


「まぁいいけどよ。何処向ってんだよ?」


 アキオの言葉に再び指差すネフティア。

 この先だけど? なにか?

 と視線が告げている。


 はるか遠くの方に村が見えなくもない。アレに向かっているのだろうか?

 アキオは首をひねりながらもとりあえずついて行くことにした。

 ネフティアは強いうえに、なぜかアキオを引っ張り回すので、なんやかんや言いながらもついついついて来てしまうのだ。


 アキオとしては自由に行動したいとは思うのだが、ネフティアからは逃げられず、逃げても直ぐに捕獲されるので、逃げるのは諦めて満足するまで付き合っておくことにしている。

 溜息吐いてネフティアの背中を追っていると、突然、悲鳴が上がった。


「ンだぁ?」


 走りだすネフティアを追ってアキオも走る。すぐに運動不足で息が上がったが、なんとかネフティアを見失うことなく追い付いた。

 幼女。ではない。お爺さんが一人、何かを持って尻から倒れ込み、驚愕の瞳で悲鳴をあげていた。


 その視線の先に居るのは……世紀末に跳梁跋扈してそうなパンク頭にレザースーツ棘付き肩パット。ナイフを持ったイっちゃってる男が一人。

 ネフティアはそいつを見て思わずアキオを見た。

 二人を何度か見直して、首をひねる。

 違いが分からない。


 あれ、兄弟?

 ネフティアが指差し視線で尋ねる。

 冗談ではない。アキオの知り合いなどでは決してない。

 老人はネフティアに気付いたようでこちらをチラ見しながらわざとらしく叫ぶ。


「こ、これは村に蒔くための種籾なのじゃぁ」


「ヒャッハーッ!!」


 ナイフに舌を這わせるパンク男。アキオは思わず目をこする。コスプレな自分クリソツの男はまるで世紀末からやって来たかのような雑魚さ加減を存分に見せている。

 なぜかアキオが恥ずかしくなった。


「とりあえず、行くか」


 これ以上偽モノを見ていたくなかったアキオはネフティアよりも先に二人の元へと飛び出した。


「おい、テメェ、何だその成りは? 俺を舐めてやがんのか? そのコスプレしていいのはこの世界で俺だけだっつの!」


「ヒャッハー?」


「ひ、ひぃぃ。ヒャッハーが二体も!?」


「違ぇ! 俺をこいつと一緒にすんじゃねぇ! ぶっ殺すぞ!」


「ひぃぃっ。御助けをっ。種籾だけは、種籾だけはぁっ」


「ひゃはっ。いいかヒャッハー野郎。ナイフを舐める時はこーすんだよぉ」


「ひゃっぁはぁぁぁ!!」


 アキオのナイフ舐めを見たパンク男は負けてはならじと対抗するように自分のナイフを舐め出した。

 その光景を見て、ネフティアは首をひねる。

 はて、どっちがアキオだっけ?

 攻撃してさっさと片付けようと思ったのだが、アキオを攻撃するわけにはいかないので戸惑う。

 とりあえず彼らを放置して老人を守ることにした。


「あ、ああ、いかん。子供がこんな所に来ては。逃げるのじゃ。儂が囮になる。じゃからこの種籾を村に、村に届けておくれっ」


 なぜか種籾の入っているらしい袋を手渡されるネフティア。これってなんだろう? アキオのように元ネタすら知らない彼女には意味が分からず首をひねるしか出来なかった。

 その間、アキオとパンク男はひたすらに自身のナイフをねぶり、唾液塗れにしていらっしゃった。

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