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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その家族のすれ違いを家族は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)・その二人が墓に行ったことを誰も知らない

 ドドスコイ王国の会議室に、元国王、ハリッテ王、ギョージ王、唯野忠志、そして騎士団長オーゼキが座っていた。

 正直、王族に囲まれたここでは生きた心地のしないオーゼキだが、娘のために頑張っているのだと思えば緊張している暇などなかった。


「皆、忙しい中集まって貰ってすまない。緊急と言う訳ではないのだが、オーゼキから受けた報告が無視できそうになかったのでな」


「儂まで来る必要なかったのではないか?」


「まだまだ隠居はさせねぇよ親父。兄貴、続きを」


「ああ。実は、先日アルセ姫護衛騎士団が発った後にオーゼキから報告を受けたのだが、中庭にアルセイデスの蔦が群生している。しかも普通のアルセイデスの蔦よりも強度が強く、歯が断たない。どうしたものかと困惑していたのだが、忠志殿が解決策を知っていた」


「あ、わ、私が喋るのですね」


 視線で促された忠志がハンカチで汗を拭きながら、報告書を持ち読み上げる。


「中庭に存在するアルセイデスの蔦ですが、アルセちゃんが生成したということらしいので、おそらくヒヒイロアイヴィであると思われます。私の服にも使われている蔦素材なのですが、地元の武器屋と防具屋にはこれを加工する技術があり、既に武器も作成済みです。素材として使っていいとリエラさんが言っていたので、騎士団の武装に使うのが一番ではないかと」


「ふむ。つまり、アレはアルセからのプレゼントというわけか。随分と大盤振る舞いだな」


「武器屋と防具屋に依頼を出せば作成できる訳か」


「ですが、アルセちゃんはアルセ神だそうですし、普通のプレゼントなのか、それとも先を見越した投資であるのかは不明です。何を作るか、しっかりと検討すべきでしょう」


「でしたら、防具系統を所望します」


 オーゼキが、喉を鳴らしてから枯れた声で告げる。

 緊張しているせいで声がかすれていた。


「防具? 武器は要らんのか?」


「サー・リファインの特訓により今の武器でも充分過ぎる戦士に育ちまして、むしろ皆が吶喊気味なため防具が強力であった方がよいのです。できるならば無謀な突撃を控えられる防具があれば一番なのですが……」


 オーゼキの要望に皆が考える。


「でしたら、全身盾はいかがです?」


「忠志、それはどう言うモノだ? 盾と言うのはわかるが……」


 コレには忠志の方が驚きだった。この世界には全身を隠す盾が生まれていないらしい。

 そもそも闘いで動かないという戦法を取る事が珍しいので波及しなかったようだ。

 あるいは、一部地域では作られているがドドスコイ王国に伝わる程有名な防具にはなっていないのだろう。

 手持ちの羊皮紙の裏面に機動隊が使う簡単な盾の図を書いてみせる。


「こんな感じの盾ですね。全身を守りながら相手に近づく事が出来、この目線の位置にある薄膜で相手の姿を見る事が出来ます。この辺りは武器屋が薄く延ばす技術を開発してるはずなので防具屋と共同で作製可能でしょう」


「この蔦はかなり軽い。全身盾でも充分移動できるし戦えそうだな」


「では防具を数点と全身盾を……五枚程作っておくか。正面門で盾を使えば敵を門の内側に入れることなく撃退もできるだろう」


 ギョージ王子がそう言いながら掛かる費用の計算に入る。


「せっかくだギョージ、お前の防具も発注しよう」


「は? いらねぇよ。俺がダメージ食らうように見えるか兄貴?」


「忠志の一撃」


「うぐっ」


「ギョージと私の分、服に着込むタイプの防具を頼んでおこう。無いとは思うが暗殺防止だ。ついでだ、オーゼキの分も頼んでおいてくれ。騎士団長なのだ、少しくらい良い防具を着ておけ」


「わ、私には勿体無いくらいの御配慮を……」


 二人の王からのお言葉に、思わず涙が溢れるオーゼキ。

 普段の働きが報われた気分だった。


「ありがたき幸せ。私はこれからもドドスコイ王国の平和と繁栄を願い騎士団長として勤めに励みますっ」


「うむ。よろしく頼む」


「娘さん泣かすなよ」


 涙するオーゼキに二人の王が微笑みながら告げる。

 そして、ふと、ギョージは思いついたようにハリッテに視線を向けた。


「そういえば兄貴、ジューリョが育ててたストロなんとかって木知らねぇか?」


「木? そう言えば商人に頼んでたな。あんなのも育てたいだなんて末恐ろしいガキだとか商人がぼやいてたのは知ってるが? 確か熱帯地方で育つ奴だったな。シコフミが魔法で成長させて、そろそろ種が出来るとジューリョが喜んでいたのは知ってたが」


「折角だし枝でも持ってこうかと思ったんだが根こそぎ消えてたんだ。シコフミも知らないと言ってるし、親父は知ってるか?」


「そんな木があったこと自体知らんかったわ」


 初の会議が終わる。

 ハリッテとギョージは会議を終えると、さっさとその場を辞去し、二人だけで霊廟へと向かった。手には高級な酒と料理長に作らせた甘いお菓子だ。


 ここには歴代の王族と共に、ジューリョが眠っていた。

 ジューリョの墓へとやって来た二人は、墓の前にどかりと座る。

 ハリッテがお菓子を備え、御猪口を三つ。

 ギョージが酒を注ぎ、一つを墓へ供え、もう一つをハリッテが持ち、最後の一つを自分で持ち上げる。


「ジューリョ。お前の望み通り、私達は二人で国を盛り上げることにした」


「できるなら、お前には生きて祝って欲しかったがな」


「悔しいが、アルセ姫護衛騎士団が来なければ、私達はずっといがみ合っていただろう。それでも、お前の想いにようやく気付けた。もう、安心してくれ。ギョージと二人協力して、お前の願った国を平和に、豊かにしてみせるさ。もちろん、家族も仲良く、な」


「待たしちまったなジューリョ。今日だけは、兄弟だけで酒盛りだ。お前の好きな菓子も持って来た。お前が大切に育ててた木の枝も持ってきてやりたかったが消えちまってたんだ。誰だか知らんが酷いことしやがる。まぁ、なんだ。ジュースじゃねぇが、祝いの席だ、酒で我慢しろ」


「「ドドスコイの栄光を願って……乾杯!!」」

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