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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
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その彼らがどうなったのかを僕らは知らない

ぼぉっと書いてたらバズ・オークが大変(うらやましい?)なことに!?

「え? デート!?」


「ち、ちちち、違います。今日はこれから暇でしょうからバズ・オークさんと一緒に町を回りたいなと思っただけで、その、ダメですか?」


 全員が揃ったところで、エンリカがついに行動を開始し始めた。

 凄いアクティブだな。まだ出会って一日と経ってないのに。

 これだけ行動派だと逆にバズ・オークが哀れになって来る気もする。

 エンリカさん、ちょっとストーカー要素入ってませんか?


「どうするカイン?」


「俺はこれから教会で身体を見てもらう。その後はちょっと休みたいから宿かな」


「そうねぇ。クーフは?」


「今日も解体作業をする。我の柩にはまだまだ死体があるからな。速めに処分したい」


「リエラはどうする?」


「そうですね。暇潰しに家に戻ってみよっかな。お父さんに今までのこと報告して来ようかと思います」


「あら。だったら私も一緒に行っても良い? アルセもどう?」


 リエラに同行すると聞いたアルセは笑顔を返してきた。問題無いらしい。


「こっちは問題無しかしら。多分何も無ければバズ・オークはクーフに付いて行くんだろうけど」


「私達も問題無しよエンリカ。バルスは訓練所の方で貰った武器試すみたいだし私もこの武器使ってみたいから」


「ぶ、ぶひっ!?」


 皆がデート賛成みたいな流れになっていたので当事者のバズ・オークが慌てたような鼻息を鳴らして何故かアルセに詰め寄っていた。

 アルセは何を言っているのか理解していないようで、こてんと首を横に倒していた。


「なんて言ってるのエンリカさん?」


「えーっと、何か嫌な予感がするので付いて来てください姫様。とかそんな感じですかね。嫌な予感ってなんですか。酷いです」


 ぷんぷん。といった感じで可愛く怒るエンリカ。

 ネッテに歩み寄り内緒話を始める。

 おい、本気ですかエンリカさん。それ、本気でするのネッテさん?


「うん、まぁ、何より面白そうだから許す! んじゃ、デート行っといで」


「はいっ!」


「ぶひぃっ!?」


 慌てるバズ・オークの腕を引っ張り、エンリカが部屋から出て行った。

 なんか、俺には幼馴染がぁ。とか心の叫びが聞こえた気がした。


「なぁネッテ、今耳打ちしてたけど何言われたんだ?」


「ん? 今日一日だけ、宿を変えてほしいんだって」


「……おい、それまさか」


「エルフとオークのカップルとか、なんか面白そうだし、本人乗り気だから良いんじゃない? バズ・オークも嫌そうにしながらも抵抗してないし。本気で嫌だったらあの腕振り払っていたでしょ?」


 ……バズ・オークの貞操がヤバい!?

 僕はアルセを連れて慌てて二人の後を追った。

 それにリエラが気付いたが、まぁいいか。といった顔で見送るのだった。


 ギルドを出たところでバカップルのようにくっつく二人に追い付いた。

 初めに気付いたのは意外にもエンリカだ。

 アルセの姿を見付けた途端明らかに舌打ちしていた。


「どうしたのアルセちゃん」


「ぶ、ぶひぁ!」


 助けてくれとでもいいたそうにバズ・オークが声を出す。

 ってこら、こんな美人に胸押しつけられて助けてとか、あれ、なんかイラッと来たぞ?


「んもぅ。仕方ないですね。まぁ今日はデートというよりは一緒に町を歩いて親睦を深めたいなと思っていましたから、いいですよ、一緒に行きましょアルセちゃん」


「ぶひぶひ」


 なんかバズ・オークから感謝された。

 そして二人は武器屋へ向う。

 何故武器屋?

 バズ・オークは武器屋でいろいろ説明を始めそれをエンリカがおやっさんに訳して、なぜかアルセソードを一つ頼んでいた。

 カインが頼んでいた分が出来てたらしいが後で本人に取りに来させるとエンリカが訳して会話が成り立っていたのである。

 この二人、本当に相性はいいな。


 その後はアルセがいるせいかバズ・オークも少し安心してデートを楽しんでいた。

 ふと、思うんだ。アルセ子供だからさ、この取り合わせ、ただの家族旅行じゃね? って。

 そう思うと、心配して来た自分がなんだか馬鹿らしくなってくる。


 そして夕方。

 そろそろ帰る段になるころにはバズ・オークも警戒を解いており、ごく自然にエンリカと恋人握りしていたりする。幼馴染はどうしたバズ・オーク。

 これはもう、これから先の結末を教えてやる必要が無い気がしてきた。

 そうだよな。二人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるだけだ。


「あの、そろそろ帰るんですよね?」


「ぶひ」


「あ、はい。私も楽しかったです。それで、ネッテさんたちにお礼が言いたいので付いて行っても良いですか?」


「フゴッ」


 というわけで、何も知らないバズ・オークが了承する。

 その刹那、エンリカが確かに笑った。そんな気がした。

 そして二人で宿に戻る。

 アルセはここまでだ。部屋に入るバズ・オーク。その背中にアルセの腕を操り手を振っておく。


「ありがとアルセちゃん。あなたのおかげよ」


 それに気付いたエンリカ。何故かお礼を言われた。

 エンリカがバズ・オークの後を追うようにして部屋に入る。

 カチャリ。扉の鍵が内から掛けられた。


「ぶひっ!? ぶひぶひっ」


「ネッテさんたちなら、今日は宿を移っていただきました。助けは誰も、来ませんよ?」


「ぶひっ!? ぶひぁ、ぶうぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――っ」


 僕はアルセと共にそっと宿屋を後にした。

 その後、彼らがどうなったのか……僕は知らない。

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