その王子が行おうとしていたことを王族は知らない
「本当に、分かったのか、リエラ殿」
円卓に皆が集まっていた。
アカネが王族を集めたのである。
ハッケヨイ、シコフミ、シコナ、ハリッテ、静代、レーバンス、デイジー、アニア、チグサ、ケトル、モスリーン、セキトリ、マクレイナ、アカネ、リエラ、アルセ、ルクル、ローア、テッテ、コータ、ハイネス、アマンダ、レティシャ、隆弘、唯野さん、沙織、エスティール、ギョージといった順番で座っています。
レーシーさんはめんどくなった。と言って帰っちゃいました。
ルグスはアラクネさんと一緒ににゃんだー探険隊のはぐれた一匹を捜索中。なぜか一匹、また一匹とはぐれているらしく、必死になって増える行方不明者を探している最中です。
ちなみに最初の行方不明者である一匹はテッテの頭の上でぐにゃーんと寝そべっている。
レーバンスとデイジーという執事とメイドさんは、今回関係ないっちゃ関係ないんだけど、ジューリョ王子殺害犯がわかったということで、是非にと国王に直訴して席を貰ったようだ。
別に横に立っててもいいと思うんだけど。まぁいいか。
「はい。ジューリョ王子殺害犯は分かりました。ソレを発表する前に、いくつかお聞きしたい事がございます。皆様、嘘、偽りなくお答えください。それだけで、きっと犯人はおのずと分かります」
「……どう言うことだ?」
国王が怪訝な顔をするが、リエラは気にせずアカネに視線を向ける。
「ダメよ。今回は探偵役はあなたに譲るわリエラ。ちゃんと教えた通りにやりなさい」
「うぅ……分かりました」
はぁ。と息を吐き、まっすぐにハッケヨイ王を見る。
「まずは、国王陛下にお聞きします」
「う、うむ」
「四人の王子、ジューリョ王子が生きていたとして王にするならば誰だと思っていましたか?」
いきなり何聞いてるんだ。と護衛の兵士達がにわかにざわめく。
「ジューリョだ。これは王子全員が知っている。君にも伝えた筈だが?」
「はい。これは周知していただくための質問ですので。お答えいただければ問題はありません」
次に、とギョージ王子に視線を向ける。
「ギョージ王子、王に成りたいと言っていてましたね」
「お、おう? そうだが?」
「あなたはなぜ王に成りたいと言っていたのでしょう? 国王陛下はジューリョ王子をと考えていたようですが?」
「ああ、それは……」
ギョージ王子は一瞬沙織を見て、決意を固めてリエラに視線を向けた。
「初めは親父の言葉で、兄貴が腑抜けになっちまったせいだ」
「何だと? 私がいつ腑抜けた!?」
驚き声を荒げるハリッテ王子を、リエラは手で制する。
「話は最後までお聞きください。これは重要な証言になります」
「む、いやしかし……わかった」
納得いかない様子のハリッテ王子が座るのを見届け、リエラは話を促す。
「俺はジューリョの意志を聞きに行った。まだ8歳だ。国王に成れる訳が無い。そう思って辞退するように告げに行ったんだ。ジューリョは幼いし兄貴は腑抜け、だったら俺が王になるしかねぇじゃねぇか。だからジューリョに告げたんだ。俺が王になる。お前が無理に王にさせられる必要はねぇってな」
「ギョージ、お前、まさかジューリョが邪魔になって……」
ハッケヨイ王が驚愕するが、ギョージ王子は気にせず話を続ける。
「あいつ、王になる気はないって言ったぜ親父」
「何っ!? そんなバカな!?」
「本当はな、兄貴が成るのが一番だからと辞退するつもりだったらしい。だが、兄貴が腑抜けだっていう俺の言葉を聞いて、俺が王になるっつったらよ、あいつは……僕が兄さんに足りない素養を教えるから、立派な国にしてね。そう言ったんだ。そこからは、あいつに王の仕事を教わった。だから親父、王にするなら腑抜けの兄貴じゃなく俺にしとけ。まして王の仕事を教わって来なかったセキトリじゃ王にはなれねぇ」
自信満々に告げるギョージ王子。その隣にいるエスティールさんが徐々に彼に近づいている気がします。あの人、もしかしてセキトリ君からギョージ王子に乗り換えるつもりか?
「待てギョージ。お前……お前もジューリョに習ってたのか!?」
「は? お前もって……まさか兄貴もか!?」
「あ、それは……」
慌てて口ごもるハリッテ王子。
そんなハリッテ王子に、リエラは視線を向けた。
「次はハリッテ王子。あなたが王を目指す理由を、教えてください。きっと、それはあなたが押し黙った理由でもあるはずです」
「い、いや、しかし……」
「お話し下さい。それが、きっと犯人に繋がります」
「お、おい待て。じゃあ、まさか兄貴が……」
「違うっ、私じゃない。私がジューリョを殺すものか!! あいつは私を王にするために尽くしてくれていたのだぞ!!」
「はぁっ!?」
ハリッテ王子の言葉にギョージ王子が意味がわからんっとばかりに驚きの声を上げた。




