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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その家族のすれ違いを家族は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)・その料理人が犯人なのかを彼女は知らない

 食堂にやってきたアカネ、アニア、モスリーン、レーシー。

 探すと言ってもここを四人で探索などする必要も無い。

 やるべきことは話を聞くだけなのだ。


「とりあえず、ここでやるのは料理長、食事を運んだメイド、あとその光景を見ていた執事などに聞くのが一番でしょう。なので、執事さんにアニアとレーシーで、メイドにはモスリーン、料理長は私が聞いてみるわ」


「分かりました。じゃあメイドさん探してきま……」


「メイドなら執事と一緒にここに来て貰うよう既に伝えてるわよ。待ってなさい。けっして聞きに行く振りしてセキトリの元へ行かないように」


「うぐっ」


 モスリーンの暴走が行われる前に阻止をして、アカネは一人料理人たちの戦場へと足を運ぶ。

 今は夕食のための仕込みを始めたところのようだ。


「料理長さん、ちょっといい?」


「ダメだ。少し待ってろ。今が一番大切だ」


 タイミングを計るように目の前のフライパンを見ている男が告げる。

 次の瞬間フライパンを刎ね上げ、中に入っていた肉をひっくり返す。


「っし、これ持ってけ。少し空けるぞ。ゲーテ、後は任せた」


 料理人の一人に任せ、男がやって来る。


「俺が宮廷料理人の長をやってる。何か用か? 見ての通り今から戦場になるんだが」


「だからその前に来たのよ。王様からの勅令。ジューリョ王子の死の真相を掴めってね。それで、当時の状況、こっちではどうだったか知りたいのよ。たとえば、ジューリョ王子に毒を食べさせた恐れがある、とかね」


「ンだと? テメェ、俺ら料理人が毒物を食事に入れたってのか!?」


「別にそう言うつもりじゃないわ。でも、故意ではなくとも、組み合わせが毒になることもあるし、アレルギー物質で死ぬ可能性だってあるわ」


「ふん。まぁいい。お前さんも仕事だろうしな。何が聞きたい?」


 既に何度もいろんな人に聞かれたのだろう。アカネが聞いた程度の悪意は既に我慢できるくらいには質問の嵐にあったようだ。


「まずはジューリョ王子にアレルギー、食べると発疹が出たりする食材はなかったか?」


「身体の弱い人だったからな。食事には人一倍気を使ったさ。危険だったのは昔ピーナッツ使った料理を出した時だな。突然呼吸困難に陥って焦った。あれ以降ピーナッツ関連は出してねぇ。それに……その時の状況と王子の死に際じゃ反応が違った」


「反応が、違う?」


「おうよ。つっても俺らは実際の場面見たのは王様の焦った声やら騒がしい状況に気付いて厨房から出た後だ。口元に血を流した王子が床に倒れていた。王も二人の王子も駆け寄って、近くにいたメイドと執事が青い顔してたくらいだ」


 アカネはふむ。と顎に手をやり、思案する。


「では、毒殺、ということになるのかしら?」


「分からん。あのあと何度も俺らが毒を盛ったんじゃねーかと問い詰められたが、ジューリョ王子だぞ。俺らが何であの王子を毒殺せにゃならん。いけすかねぇ第一王子や乱暴な第二王子ならともか……おっと。今のは忘れてくれ」


「探偵作業中に知りえた情報は使える情報以外守秘義務がありますから。にしてもジューリョ王子は人気があったということですか?」


「そりゃあな。王子の癖に料理がしたいとか言って時々厨房に来てやがったのさ。新人と一緒になって皿洗いして食事作って、あーでもないこーでもないと料理の配膳を話し合ったりして、ここにいる皆がアイツを家族みたいに思ってんだ。俺らが殺す訳ねーだろ。むしろ暗殺者を見つけたら生かしてここに連れて来てくれ、生皮剥いで全部自分で食わせてやるっ」


 暗殺者に対する怒りを見せる料理長にあはは。と苦笑いするアカネ。とりあえずアレルギーによる死亡説が無くなったことだけは確信できた。




 食堂で待っていたモスリーン達の元へ、執事とメイドがやって来る。

 モスリーン達に眼を止めると深々とお辞儀を行う。

 しかし、モスリーンは動かない。彼女は腐っても男爵家の令嬢。執事やメイド相手ならば例え王族の執事達であろうとも礼を返すことはしない。それが貴族というものだ。


「あれ、向こう礼してるよ? 礼を返すんじゃないの?」


「身分が同じであればそれでいいのですけど、流石に初対面の貴族でもない方々にとなると」


「それは違いますモスリーン様。私共は王族の執事とメイドであるため全員が貴族の出にございま……」


 即座に立ち上がったモスリーンがスカートの裾を掴んで貴族風に礼をする。


「いえ、貴族といえども執事とメイドですので気になさらずにと……思ったのですが」


「ぷふーっ」


 レーシーに笑われ顔を真っ赤にするモスリーン。


「せっかくだから全員で質問しましょうか。じゃあ聞かせて貰うけど……」


「あら? まだ終わってなかったの?」


 話を聞こうとした瞬間、既に話を聞き終えたらしいアカネが戻ってきた。

 分かれた意味、なかったんじゃないか? 思ったモスリーンたちだが、黙っておくことにした。

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