その透明人間がいついなくなったのか彼女らは知らない
「す、すごい、アンブロシアを持ってるなんて……って、そういえばバルスさんが出会いがしらアンブロシアツリーを持ってましたね。もしかしてアレの?」
アルセを使って頷くと、合点が行ったと二人は納得したらしい。
けど、伝説級のアンブロシアが目の前にある。その事実に二人は自然、身体を震わせていた。
コリータが鑑定。と呟く。
アンブロシアがアンブロシアであることを鑑定で確認したらしいコリータの口からブツブツと言葉が漏れる。
種族寿命が一年伸びるとか、魔物への副次効果で知識の芽生えとか。なんか凄い単語が聞こえるんだけど、これは聞かなかったことにしたほうがいいのかな?
「あ、あの~、コリータさん?」
「はっ!? す、すいません。この実の凄さについ呆然としてました。あの、いくらでお譲りいただけますか!?」
「と、透明人間さん、この実隠して下さいっ!!」
眼が血走っているコリータさんに危険を感じたリエラが慌てて叫ぶ。
その剣幕に僕は慌ててアンブロシアをポシェットにしまった。
コリータさんが突然消え去ったアンブロシアにああああ。と嘆いていたが、まぁ奪われるよりいいよね。これはリエラにでもあげるか。僕が食べてもあまり意味なさそうな気がするし。
寿命が一年伸びるだけとか、知恵はあるから意味ないしね。
「ふぐぅ。仕方ないわね。こればっかりは、仕方ないわ。仕方ない。うん仕方ない。ギルド常時依頼でアンブロシアツリー討伐、討伐部位はアンブロシアで出しとこうかしら」
「冒険者の死人が増大しますから止めてください。私達が戦った時だって透明人間さんがにっちゃうつう゛ぁいを連れて来なかったら全滅してたんですよ!」
「カインさんたちがですか? かなり危険な魔物じゃないですか! その話詳しく!!」
「えええっ!?」
なんか……二人きりで話を始めてしまったので暇になってしまった。
アルセも手持ちぶたさで指をしゃぶりだしたし、リエラに任せず武器は僕とアルセが持っていくとしよう。
二人に気付かれないよう武器を全て収納し、そっとアルセと共に部屋を出ることにした。
ああ、リエラにあげたゴールドダガーだけはリエラにあげたままだけどね。
アルセと共に医務室に向う。
ギルドマスターと出会うまでの廊下は覚えているので後は適当に施設内を覗きながら探索して行った。
給湯室とでもいえる場所ではガレットっぽいお菓子を食べて談笑している女性が二人。おそらく休憩中だろう。アルセが指しゃぶっていたので見かねたようにガレットを一つくれた。
アルセの顔に笑顔が戻ったのは言うまでもない。
ああ、カインの持ってる写真機みたいのが欲しい。
アルセの笑顔を激写したいです。
と、思った瞬間だった。何かカシャッて音がした。
なんだ? と思っていると、脳内に写真のアルバムみたいなものが……あ、これアレだ。ゲームとかしてると時々目にするCG閲覧とかそんな画面だ。
その栄えある一枚目に笑顔で僕を見上げながらガレットを頬張るアルセがCGとして登録されていた。
……これ、もしかして新能力? ついに僕にも謎の能力が付き始めたようだ。
うん、まぁこの能力はまんまCG閲覧能力だな。あ、でも端っこの方にゴミ箱とかあるし、編集可能らしい。
なんだろうこの謎能力?
まぁ、なんにせよ面白能力だし、自分が楽しむ以外の使い道は無いんだけどさ。
……そうか、リエラとかのシャワーを覗き見てこれを使えば……
ひぃっ!? 今、何処からともなく殺気が来たような?
危険だ。調子に乗るのは止めとこう。
アルセと共に医務室へと辿り着く。
丁度カインが目覚めたところだった。
ネッテがカインの傍らに座り熱心な看病。
眼を開いたカインに柔和な笑みでおはよう。と告げていた。
ちょっと、あの顔はいいな。カシャッ。
うん、ちょっと待って。CG閲覧の能力がちょっと邪魔かもしれない。
というか、これ僕が見た景色だけしか使えないのね。この角度からのネッテは余り意味が無いです。映すならカイン目線のネッテであって欲しかった。ゴミ箱に移しとこ……おおおう!?
ネッテの写真が変化した。
カインが見ただろうネッテの顔だ。
これはもはや衝撃的だと言える。笑顔が眩し過ぎます。
自分のことを心配してくれている感がひしひし伝わってくる一枚だった。
自分の新能力にちょっと恐怖を感じます。
なんなのこのCG閲覧能力? 僕は本当に日本人でいいのだろうか? 実は一度死んでこの世界に転生した存在とかじゃないだろうな。
そんな感じで僕が一人戸惑っている間に、カインが起き上がり、バズ・オークやクーフが無事か? と告げ始めていた。
どうやらカインは葉っぱ人間の奇襲を受けて気絶したらしい。
そんな皆へと向けて、多数の武器を持たせたアルセと共に歩み寄る。
さぁ、皆受け取ってくれ、アルセからのプレゼントだよ!




