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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その家族を守る英雄がいることを彼らは知らなかった
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その女の怒りを兵士は知りたくなかった

「あはははははははははははは――――っ」


 メイリャさんの狂った笑い声が響く中、僕らはただただ視線を彷徨わせるしかなかった。

 いろんな意味でやっちゃった。預かったメンバーの中で既に三人に致命的な変化が出てしまってます。

 どうするアカネ?


「あー、まー、その、そろそろ国に戻りましょうか。武器も出来てるだろうし、セキトリの方も王城に向った方が良いでしょ。時期的にもそろそろ馬車で到着する程度の日付になってるし」


「そうですね、コルッカからここまでですからそろそろ付いていても違和感はないくらいの日付でしょう。覚悟は出来てます。行きましょう」


「と言っても流石にその服だとアレよね。王国に行けそうな衣装は?」


「構いませんよ。これで充分です。俺は俺のままで行きます、そもそも俺はそういうのが好きなので国から出て来たようなものですし。向こうが勝手に呼び出したんですから服装まで揃える必要はないでしょう」


「冒険者というか、召喚師ルックでいいんだ。まぁ、それでいいならそのまま行きましょうか」


 そう言いながらアカネはそっとメイリャを流し見る。

 なんかさらに凶暴になってる気がするのは気のせいか?

 あちらの表現はしないでおこう。普通に吐きそうだ。


「誰か、あの狂戦士バーサーカー連れて来てくれる?」


「私が行こう」


 立候補したのはリファイン。巨大な剣を引き抜き肩にひっさげると、毅然とした足取りでメイリャの元へと向かって行く。


「メイリャ曹長、敬礼ッ!!」


「はっ!?」


 慌てたように一瞬で直立不動から敬礼を始めるメイリャ。


「遊びは終わりだ。往くぞ」


「はいッ!!」


 ばさり、マントを翻しこちらにやって来るリファインさんと彼女の後ろを血塗れでちょこちょこっと付いて来るメイリャ。

 その顔に先程までの狂気はない。いつもの如くちょっと弱弱しい感じのする普通の女の子に見える。といっても、普通の女の子は血だらけにはなってないけどね。


「なぁルーシャ……」


「なーにサーロ?」


「迷惑、掛けないようにしような……」


「うん。ああは、なりたくないね」


 サーロとルーシャにまで言われてるよエンリカ、やっぱりやり過ぎだって!


「アレが、エンリカさん。リファインたいちょーがここまで変わる軍隊式訓練、すっごく気になります。お兄ちゃん、一緒に受けませんか?」


「絶対嫌だ」


 テッテはエンリカが凄い人だと感じたみたいでやる気を迸らせ、コータは俺を巻き込むなとばかりにテッテから距離を取る。


「さぁ。折角だ隆弘も一緒に行こう」


「え? でも、僕城に戻らないと。一応王様の護衛だし……」


「あら、どうせ私達も城に向かうんだから道中は一緒よ。それにアンタの護衛居ないのに一人で帰るの?」


「そ、それは……そうだけど」


 少し困った顔をする隆弘くん。その顔は人が多過ぎてちょっと苦手といった様子が見て取れた。


「ま、嫌なら付いて来なくていいけどね。さ、行きましょ」


 今回はフルメンバーで国に向うようです。サーロとルーシャとは分かれました。あの二人はもう少し狩りするそうだ。まぁ、別にどうでもいい二人なので僕らは放置しました。釘も刺したみたいだし問題は……たぶんないだろう。

 レーニャとかレーシーあたりで一悶着ありそうな気がするけど、まぁいいか。


 しばらく森を歩くと、やがて開けた場所に出る。

 さらに少し歩いた場所にあった街門へと向かうと、兵士達が目敏く隆弘とその父親を見つけて慌てて駆け去って行った。

 あの、門番二人とも走り去ったらここの門ヤバいんじゃないの?


 呆然と見ていた僕らは直ぐに起動して門の前へと向かう。

 一人もいない。予備人員とか近くの兵舎に詰めときなよ。なんで誰もいないのさ。

 誰も出て来る気配の無い兵舎を覗くが、兵士の姿が無い。

 普通に通ることは出来るのだけど、その後何が街に入ってきても関止める人がいないので、仕方無く僕らは門の前で兵士が帰って来るのを待つことにした。


 やがて、何人もの兵士と隊長と思しき者が駆け付けて来る。

 それを見ていた僕らの中から、リファインが颯爽と前に出る。

 あ、嫌な予感。


「はぁ、はぁっ。すいませ、そこの方々、あの、勇……」


「全員整列ッ!!」


「はいっ!?」


 ザンっと石畳に巨大な剣を突き刺し、その柄を両手で持って仁王立ちしたリファインが叫ぶ。

 突然怜悧な声を掛けられた兵士達は、なぜか慌てて整列した。


「あ、あの、いきなり何を?」


「黙れ駄犬。畜生風情が咆えるな」


 おそらく隊長か何かだろう男を一喝で黙らせ、リファインは全員を見まわした。


「貴様等、何をしている? お前達は何者だ?」


「え? あの、ドドスコイ王国の兵士、ですが?」


「違うッ、門番だろうがっ。門番が門を守らずして何が門番だ。二人揃って門を放棄するとは何事かッ、恥を知れ愚劣で低脳な猿共が!」


 そこでようやく気付いた門番二人が青い顔になる。


「お、お待ちください。お怒りはごもっとも。しかしこの二人は新人で……」


「ド阿呆がッ! 新人ならば門を放棄して良いというか! 魔物や盗賊が来てもそう言えるのか? 街の住民が死んでもそう言えるのか? 国が滅んでもそう言えるのか? 国を守っている自覚をしろ! 貴様等は兵士など片腹痛い。これなら自警団に任せた方がまだマシだ。門すら守れんというのなら国から出て行け。高給取りの役立たず共がッ」


 リファインさん……言い過ぎです。

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