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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その森の守護者の賭博好きを僕らは知りたくなかった
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その女にトラウマができたことを彼女は知らない

「あ、はは。そりゃ勝てんわ……」


 リエラ、ローア、アカネ、唯野さんのフォローとカウンセリングにより、なんとか正気を取り戻したレーシーは、ノーテンだったアルセの牌を見て呆然と呟く。

 彼女の待ち牌だった二索と五索の全てが既にアルセの牌に揃っていた。つまり、彼女は絶対に来ない牌をずっと待っていたことになる。


 超幸運というスキル。対戦ゲーム系になるとここまで凶悪な効果を発揮するのか。アルセとはゲームできないな。

 一人勝ち大確定だよ。

 レーシーももうアルセに挑む気はないらしい。そりゃあんだけ連敗したらなぁ。しかも最低の上がり役が流し満貫。他は役満しか出してないからなぁ。勝てるかっ。


「まさか超幸運スキルに完全敗北とは。やるわねアルセ」


「おっ」


「はぁ。で、何が目的だったかしら? いいわよ。好きなもの持っていって。もうこの森は貴女の物よアルセ。森の木だろうが私だろうが好きにすると良いわ」


「お? おっ」


「え? でも……私は負けた訳だし、もうこの森の守護者じゃ……いいの?」


 どうやらアルセはこの森を貰っても迷惑だと言っているようで、このままレーシーが森の守護者になったままになるらしい。


「えーっと、じゃあアラクネに服作らせるのと、宇宙樹の実でいいのね?」


「宇宙樹!?」


「ええ。宇宙樹ヤシュチュがこの森にあるの。この娘が欲しがったのはそのヤシュチュが数千年に一度付ける仙桃よ」


 アルセ、もしかして珍しい果実食べたかっただけだったり?


「まぁ、数千年とか言ってるけど同じ場所に付くのが数千年だから実際は毎年取れるんだけどね。ちょっと待ってて。今伝えるから少ししたら届くわ。数は?」


「おっ!」


 ななつ! と言うように手を動かすアルセ。

 直ぐに了解したレーシーが近くに居た魔物に指示を出す。


「はぁ。しばらく麻雀はやりたくないわね。そこの子たち、マージャン卓ちょっと片付けといて。ええ。数百年くらい好きに使っていいわよ」


 レーシーはもはや見るのも嫌だと視界にすら入れることなく追い払うように森の魔物に伝えると、溜息混じりにアルセを見た。


「他に願いは?」


「お」


「あーそうですか。じゃあ私は帰るわよ。はいはい。森の危機とドドスコイ王国の危機には手伝うって。あーもう寝るわっ」


 疲れた顔で去って行くレーシー。もうアルセにもしばらく会いたくないといった顔で足早に去って行った。

 入れ違いにやって来るアラクネ。アカネさんが交渉を始める。

 アラクネは蜘蛛の身体に女性の上半身がくっついた姿をしていた。

 胸は残念ながら蜘蛛っぽい装甲で隠されており、目も複眼でした。惜しいっ。でも激写。


 幸い人族語が話せるようでアカネと交渉を終えたアラクネは、唯野さんから渡されたスラックスなどを見て構造を把握し始める。

 その間にアカネの指示でアルセがヒヒイロアイヴィを出現させる。

 アラクネとアカネとアルセが服作りを始めたので、他のメンバーはここにキャンプを張り始めた。


 少しして、アルセの求めていた仙桃を持って来たリュックラビットたちが袋から桃を取りだす。

 おお、普通に黄金色の桃だ。

 アルセはその一つを無造作に取ると、迷いなく一口で食べる。タネ、大丈夫?


 ごくりと食べ終えると、三つの桃をポシェットに仕舞い込み、あの、それ僕のポシェットなんだけど。まぁいいんだけどさ。

 そして残った三つのうち、一つをリエラに持っていく。


「え、私にくれるの? ありがとアルセ」


 おお、アルセがリエラにプレゼント。

 しかも今直ぐ食べて。と言った顔をするので戸惑いながらもリエラがパクリ。


「あ、凄い。これ美味しい」


「そりゃ宇宙樹だっけ? の実だからね。あら、これ種がないのね。貰っていい?」


「アルセがくれたものなのでダメでーす。はむっ」


 リエラが全部食べたのを見終え、アルセはルクルの元へと向かう。


「るー?」


 え? 私? と驚いた顔のルクルは、ありがとう。と言った顔で桃を貰う。

 アルセがじぃっと見て来るので、仕方無くその場で食べることにしたらしい。

 って、おおいっ。なんかルクルさんが光り輝いたぞ!?

 ルクルさんが存在進化したようです。なんか、セーラー服からブレザー姿になってるぞ。どういう進化? 冬服バージョン? 袖に手が隠れて指先しか出てません。


 そしてルクルが食べ終えたのを見終えたアルセは僕の裾を引いて一人皆から距離を取るように走り去る。

 えーっと、付いてこいってことかな?

 アルセが他の皆についてきちゃだめ! といったジェスチャーをしていたので、多分僕だけ来てほしいんだろうと後を付いて行くことにした。

 皆からかなり距離を取り、切り倒された樹を見付けたアルセがぴょんっと座る。

 その横を手でぽんぽんと指定して来たので僕はアルセの隣に座った。

 なんだいアルセ? 二人でデート?


 僕が座ったことを確認し、アルセが桃を渡して来た。

 食べて。と言っているように見えたので、僕もリエラやルクル同様桃を食べる。仙桃は、なぜか葡萄の味がした。

どうでもいい話

 後日、ポシェットにしまった仙桃はネフティア、のじゃ姫、パルティさんに配られたそうです。

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