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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その森の守護者の賭博好きを僕らは知りたくなかった
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その魔物達の主を僕らは知りたくなかった

「う、うわあああああああああっ!!」


 少し前、襲われて死を覚悟したトサノオウ。

 思えばある意味因縁めいた相手だろう。

 土佐犬を巨大化し、化粧回しを首に巻いた魔物は、小さなおっさんが雄たけび上げたのを見下ろし、煩わしそうに片手を振りあげる。


 ブゥン。スイングと共に振り降ろされる前足を、一歩踏み込んだ唯野さんが切り裂く。

 上手い。タイミングもドンピシャ。これはいける。

 そう思った僕の目の前で、絶叫したトサノオウが突撃体勢に入る。

 あの巨体が迫るのはそれだけで恐怖だ。それに唯野さんの一撃でアレを受け止めるのは不可能としか言いようが無い。


「あ……うぅ……」


 唯野さんも突撃は流石に無理だと焦った顔をする。

 後ろ足で何度も地面を蹴ることで助走を付けたトサノオウが身体を縮めたその瞬間、彼の目に突入する砲弾一発。


「ギャオォォゥ!?」


 丁髷砲有効活用。やはり鉛玉は扱い易くていいね。


「な、何が?」


「ぼさっとしない! 相手は怯んでるわ!」


 アカネの声に慌てて動く唯野さん。

 残った前足を切り裂いた瞬間、怒り狂ったトサノオウが暴れ出す。

 衝撃で吹き飛ばされる唯野さん。手からアルセソードがすっぽ抜けるが、本人は無傷のようだ。

 無駄に丸い身体が衝撃を吸収したのだろうか。ごろごろと転がった唯野さんは足を開いて座り込んだ状態で止まる。

 頭の上にずれたメガネがなんとも不格好だ。


「は、はっ。生きてるっ!?」


 自分の無事を確認した彼はトサノオウの目の前に居るアルセに気付いて思わず焦る。

 しかし自分に武器が今は無く、先程の一撃で腰の感覚が無くなったようで立つ事も出来ない状態になっていた。回復魔弾を撃つまで戦線復帰は難しいだろう。


「アルセちゃん逃げてッ!!」


 悲痛な叫びを吐きだす唯野さんの肩をポンと叩く。

 大丈夫。アルセに傷なんて一筋たりとも負わせはしないよ。

 選手、交代だ。


「え? 今の……」


 驚く唯野さんの目の前で、宙空にアルセソードが現れる。

 ぼやけた視界を思わず擦る唯野さん。その視線の先で、宙を舞う剣が独りでに舞い踊る。

 トサノオウを切り裂きアルセから視線を逸らすと、後ろ足、尻尾、首と切り落として行く。

 相手に存在を察知されないせいで反撃が来る事も無く、僕はアルセにとっての障害をなんなく排除する。


 その頃には他のメンバーも闘いを終えており、回復魔弾を受けた唯野さんもアカネの元に寄って来た。

 未だ夢半ばな彼は思わず頬を抓る。

 宙に浮かんでいたアルセソードは既にポシェットに入ってしまったのでいくら探してもないよ?


「わっ。凄いじゃないですか唯野さん。トサノオウ倒せたんですね」


「へ? い、いえ。私ではなく……」


「アルセがトドメは刺したみたいだけど、良い闘いだったと思うわ」


「え? アルセちゃん? いや、今のはどう見ても……」


「やったわね、アルセ?」


「お?」


 アカネさんが強制的にアルセに頷かせる。分かってないながらもコクリと頷くアルセに、唯野さんも押し黙らざるをえなかったようだ。空気読める大人です。


「つーか、敵多くね!?」


「お兄ちゃん最初っからほっとんど役に立ってなかったです」


「そりゃお前だろ! 俺リュックラビット倒したぞ!」


「何言ってるです! 私だってある日のアルパカぶん殴ったりましたです!」


 なんだよある日のアルパカって。あいつか!?

 涎なのか胃液なのかを吐き散らして倒れているアルパカが一体。

 いつの間に紛れこんだのだろう。というか、森に居たんだこんなの。


「しっかし、節操無いわね。肉食草食いろんな魔物が倒れてるわよ」


「ここの主さんの性格の悪さが露呈してるみたい」


 アカネの言葉に同意するようにケトルが呟く、その瞬間、


「ちょっと! 聞き捨てならないわね!!」


 森の奥からお姉さんの声が聞こえた。

 お怒り気味なのだろう、ちょっと耳障りな声だ。

 やがて茂みを掻きわけ現れたのは、青白い肌のお姉さんだった。

 緑の髪と目をした彼女は、勝気な瞳で僕らを見る。


「ふふん。私の森に私を訪ねて来る余所の魔物がいるから実力を確かめてやっていたのよ!」


 胸を張ってふっふんと告げる女は、スタイルは抜群で、顔が幼く、胸はDからEカップ。

 なかなかにナイスバディではなかろうか。激写激写。

 あ、その、ルクルさん、僕の背後でカレーセットするのは止めてくださる?


「あ、あなたは?」


「この森、力水大森林の守護者。レーシー様よ!」


 ニヤリ、不敵な笑みを浮かべるレーシーの背後に、無数の魔物達の目が茂みから見えた気がした。


「さぁ、我が森にむやみにやって来た愚かな人間共よ。我らが森の洗礼を受けたくなければ早々に立ち去りなさい。それとも……望みでもあるのかしら?」


 クスリ、何かを期待するような眼差しを向けて来るレーシー。

 なんだか危険な気配が漂って来る。こいつは、何を狙っているのだろう。アルセ、本当にこんな人に用事があるの?

 ある日のアルパカ

  種族:魔アルパカ クラス:マギアルパカ

 ・いつもくっちゃくっちゃと口をもごもごさせてるアルパカ。基本平和主義だが、気に入らない相手には唾を吐き付ける。とっても臭い。

  蹴りつけと糞飛ばしの攻撃を行ってくるため、冒険者からは敬遠される魔物。毛皮はもっこもこしていて冬場に重宝される。

 ドロップアイテム・アルパカの毛皮、唾液塗れの薬草、臭い液体


 レーシー

  種族:妖精女王 クラス:森林守護者

 ・緑の髪と目、青白い肌を持つ女性型の魔物。ウレオロイの上位存在の一種と目されている。

  博打好きで自分の森の魔物等を賭けごとに使ったりしている。昔勇者の一人に教わった麻雀が大好き。

  女性好きな一面もあるため、気に入られるとナンパしてくる。賭けをして負けた女性を性的に襲う事もあるらしい。

 ドロップアイテム・魔物操帯、魔避けのタリスマン、麻雀牌

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