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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その森の守護者の賭博好きを僕らは知りたくなかった
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その教官の恐怖を彼女らはまだ知らない

「参ったわね」


 僕の横でアカネが顎に手を当て困った顔をしている。

 休憩を終えた唯野さんがリエラに教わりながらアルセを背にして誰かを守る戦いに慣れようとしているようだ。

 アルセは暇なのだろう、彼の後ろで踊りを踊りだしている。

 さっきのワーグウルフ戦だって必死に闘う彼の後ろで楽しげに踊ってたからなぁ。


「どったのアカネ?」


 暇を持て余していたらしいアニアがやって来る。

 さっきまで周囲の警戒していたけど、今は休憩のようだ。

 元来警戒とか真剣な任務に向いてない妖精だからなアニア。


 身体は大きくなっても思考回路は残念妖精のままだから警戒を解いて暇つぶしに来たらしい。

 ミーザルとかが居ないから暇潰す相手も居ないようだ。

 アニアに問われたアカネはふーむ。と唸り、周囲を見回す。


 焚火を始めたルティシャと食事を作り始めたリファインとケトルとチグサ。

 メイリャはルグスの元へ行ってにゃんだー探険隊と戯れている。

 コータとテッテは戦闘中。相手はにっちゃうのようだ。にっくんの御仲間が無慈悲に撃退されている。本日の夕飯になるようです。

 アマンダとハイネスは集めた薪をルティシャに渡し、他のメンバーは周囲の警戒。セキトリ以外は気もそぞろなんだけど、コレ大丈夫か?


「ちょっとねぇ、リファインとメイリャのトラウマがこの先ネックかなと」


「あー、あの二人かぁ。なんとかするの?」


「そうね。ショック療法が一番だと思うのよ。少しずつトラウマ克服させるのもアリだけど、私達もそこまで付き合う必要はないでしょ、だから二人はちょっとパーティーから外れて貰って別の人に見て貰おうかと」


「あれ? ってことは誰かに預けるの?」


「ええ。トラウマ克服させるためにもほら、コルッカの学園になんか厳つい教官みたいなの居たでしょ。あの辺りに預けた方がいいんじゃないかと思うのよね。闘いは思い切りだっていうし、魔物に恐がる癖を取り去るには、より恐い恐怖を与えてコレよりは恐くない。みたいな……どうかしら?」


 んー、それだったらあのおっさんに頼むより確実なのが居ると思うよ。

 僕はアルセに似顔絵を書かせてアカネに持っていく。

 唯野さんの背後から動いてたけど、彼気付いてないから問題無いよね?

 あれ? リエラさん、ちょっとお怒り気味? 御免、直ぐ返すから。アルセ返すから、ほら。

 アルセ、そんなに膨れないで。もー遊ぶんじゃないの? みたいな顔しないで。ここで踊ってていいから。ほら、木の枝だよー。

 あいたっ。投げられた!?


「アルセから貰ったの、何?」


「んー。多分アルセからの意見でしょ。私達の話聞いてた後だから、この人に頼めってことじゃない?」


「え? マジで。アカネ、コレヤバくない? 下手したらトラウマ克服じゃなくてトラウマの上塗りしちゃわない?」


「でも、これはこれでアリな気がするわね。うん。リエラー。ちょっとリファインとメイリャ借りて行くわ。しばらく二人と分かれることになるから」


「え? あ、はい」


 遠くのリエラに声を掛け、アカネがリファインたちに声を掛ける。

 トラウマを克服できるかもしれないとあって、彼女達は何の疑惑も持たずに頷いた。

 そのままアルセに呼びよせて貰った空軍カモメに乗って三人が旅立つ。


 僕が適当に選んだ人物だからなぁ。どうなるのか恐ろしくもある。

 まぁ、なんだ。死なないように祈っておくよ。

 間違っても、逆鱗には触れないように伝えておかないと恐ろしいことになるからなぁ。

 アカネが連れて行ったんだし問題はないと思うけど。




 空軍カモメからエアークラフトピーサンに戻り、アカネとリファインとメイリャは一路、マイネフラン近くの空まで戻って来た。

 そのままセルヴァティア王国近くの森へとウミネッコたちに乗って舞い降りる。

 目的の人物は直ぐに見つかった。


 アカネは地面に降りるとともに、そいつに近づいて理由を話す。

 リファインとメイリャは少し離れた場所でその経過を見ていた。

 気になって周囲に視線を向ける。

 森の中に作られた洋館。特注の物干し竿に洗濯物を掛けている女性はとても綺麗で、女の身でありながらリファインもメイリャも思わずため息が出るほどだ。

 エルフの女性はにこやかにアカネに頷き、アカネと共にリファイン達の元へやって来る。


「話は聞きました。トラウマ克服を行いたいとか。お役にたてるか分かりませんけど、これから私がお二人のトラウマ克服をお手伝い致しますね」


「あ、はい。私はリファイン。こちらはメイリャです。よろしくご指導の程を」


 優しそうなエルフの女性だ。二人はにこやかにほほ笑むエルフににこやかに笑みを返す。


「ええ。こちらこそよろしく。私はエンリカ・エル・ぱにゃぱといいます」


 あれ? どっかで聞いた名前のような? 二人は首を傾げた。

 アカネは話が終わると、終わり次第連絡するようにウミネッコの一体に告げて来た道を戻って去っていく。

 だから、誰も気付かなかった。

 エルフ女エンリカの背後に、新手のスタ○ド使いのような効果音がでているなどということには。

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