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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その森の守護者の賭博好きを僕らは知りたくなかった
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その新人育成が実戦だったのを彼らは知らなかった

「はぁ……」


 大きめの切り株を見付けたのでおっさん、もとい唯野さんに座って貰った。

 いろんな体液はしっかりと水で洗って拭いて、新しい紋付き袴を着て貰っている。

 服装は替え一杯あるからね。殿中でござるの遺体からはぎ取った衣類をポシェットに詰め込みまくってるし。


 折角なのでアルセを使って唯野さんのアイテムボックスに着替えを何着か渡しておいた。

 野営地も作れたので今は唯野さんの服と粗相に染まった紋付き袴を洗って干している。

 丸洗いしてくださったのはルグス先生であります。敬礼!


 野営地を拠点にして、今はルグスとにゃんだー探険隊、唯野さんが休憩中。

 アルセはそんな彼らの前で踊っております。それ何の踊り? 鶏か鳩のモノマネ?


 リエラさんは新人四人の指導にアカネさんとチグサさんとで実戦教習。

 ふむ。パーティー戦としてはバランスの良いパーティーだよね紫煙蜉蝣。

 リファインさんとメイリャさんは相変わらず魔物と闘うことになるとトラウマ発症して行動不能になるようで、しばらく実戦に付き合っていたけどアカネさんに戦力外通告されていた。


 とぼとぼと戻って来た二人は溜息混じりに唯野さんが腰掛ける切り株の横にあった切り株に座って行く。くたびれたサラリーマンっぽいのが三人に増えた。

 そんな彼らを放置して、コータとテッテが先頭、ルティシャさんが中間に位置して上手く前衛と後衛の仲立ちを行い、後衛にアマンダとハイネス。


 敵対するのはこの森でよく見かける耳掻き狐である。

 殆ど攻撃は行って来ないので実戦させるには丁度良い敵のようだ。

 彼らが戦闘訓練をしている間、セキトリとアニアとケトルが周囲の警戒。

 本来はモスリーンたちも警戒して貰いたかったのだけど、彼女らはセキトリに気に入られるのに必死だ。むしろお荷物化していらっしゃった。


 あれ? そう言えばレーニャどこ行った? あ、居た。

 丁度張り終わったテントのすぐそばの木蔭で眠ってやがった。

 尻尾だけがうねっているのがちょっと癒される。

 しかもその横には白い宝箱が一つ。ミミックのミーちゃんだそうです。


「いっくです!」


 耳掻き狐に飛び込むテッテ。先制攻撃の拳は、しかし耳掻き狐にひらりと避けられる。


「外してんじゃねェか!」


 悪態付きながら剣を振るコータ。しかし耳掻きで器用にいなされバランスを崩す。


「うわっ」


 コーンっとコータの頭に耳掻きを打ち込みダメージを与えた耳掻き狐は、迫るテッテのお腹に耳掻きを突き出す。

 うわっ、もろに喰らったぞ!?


「あいたっ」


「おふっ!?」


 女の子が出していいような声じゃない声を吐き出し、腹を押さえて崩折れるテッテ。

 だが、耳掻き狐の優位はここまでだった。

 アマンダの雷魔法が発動し、耳掻き狐に襲いかかる。


「ラ・グっ」


 ぎりぎり避けるが放電に引っ掛かって麻痺状態。そこにハイネスの風魔法が襲いかかる。


「行きます! シェ・ズルガ!」


 一人だけ強力だ!?

 あの程度の魔物ならシェ・ズで充分な気がするんだけど、わざわざ大魔法を使わなくても……


「ふっ。また詰まらない魔物を屠ってしまいました」


 カッコつけてるとこ悪いんだけど、どう見ても過剰攻撃だったよね。効率考えたら一番最初に役立たずになるパターンだと思うんだけど……

 予想通り、三戦目が終わると魔力が付きたハイネス君が悔しそうに戻って来た。

 うん、こいつは頭が良いのにおバカさんだ。


「ハイネスくん、魔法って他に使えないのかな?」


 気を利かせたリエラが聞いて来る。ハイネスってばさっきからシェ・ズルガしか使ってなかったからなぁ。


「使えますよ。風魔法はシェ・ズもシェ・ズルも、地水火風雷魔法は二段階。光と闇は一段階まで使えます」


「ええ!? じゃあどうしてさっきからシェ・ズルガばっかり。魔力の消耗激しいでしょ?」


「え? 何を言ってるんですか。大魔法を打ち込んでトドメを差す。格好良いじゃないですか!」


 うわぁお。真顔で言ったハイネスにどうしようと言葉に詰まるリエラ。アカネさんも側で聞いていて頭を抱えていらっしゃる。


「ったく、無防備に突出するからそうなるんだぜ?」


「煩いですっ。お兄ちゃんだって剣躱されて反撃喰らってたじゃないですか」


「うぐっ。そりゃまさかあんな反撃が来るとは思ってなかったし、次は負けねぇよ!」


 いや、他の魔物なら次はないからね。真剣じゃなくて耳かき棒でよかったね。


「あらあら」


 唯一問題らしい問題を起こしてないアマンダはルティシャと共に苦笑いしている。

 ルティシャさんはさすがにベテランなので四人が致命的な失態をしないように動いてただけで殆ど討伐に参加はしてなかったけど、彼女に言うことは何も無いだろう。


「これは前途多難ねぇ」


 アカネさん。お気持ち分かります。

 まぁ、時間はたっぷりあるんだし、気長に行こう、ね、アルセ?

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