表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十一部 第一話 その新たな出会いがあることを僕らは知らなかった
891/1818

AE(アナザー・エピソード)その防具が作れるのかを彼は知らない

「無理ですね」


 防具屋のお兄さんは、私のYシャツを見るなり溜息を吐いて言った。


「無理? えーっと、この蔦を素材にする事が?」


「確かにそれもありますが、それ以前にこの服が問題です」


 鍛冶屋で注文を終えたアカネさん達と共に私は防具屋にやって来ていた。

 ここでもアルセちゃんの蔦を素材に防具を作成するつもりのようだったのだが、私の装備に関してオーダーを始めると、お兄さんが困った顔をし始めた。


「まず私共の技術ではここまで緻密な服を作ることは不可能です」


 Yシャツの生地と糸の付け方が問題らしい。

 彼らでは再現できない緻密な作りであったらしい。


「ここまで緻密ですと人間では作成不可能でしょうね。可能性があるとすればアラクネあたりでしょうが、彼らは魔物ですからねぇ。モンスターテイマーでもなければ難しいでしょう」


「ふむ。じゃぁ、とりあえず私達の防具と針だけでも作ってくれない? こちらでいろいろ探してみるわ」


「了解致しました。蔦の針ならば直ぐできますので少々お待ち下さい。防具の方は二日程頂きたく思います」


 少し待ち、蔦の針だけ貰ったアカネさんが外に出る。

 店の前から少し歩いた場所で私たちは作戦会議に入った。


「あの、別に私はムリに作っていただかなくとも……」


「乗りかかった船よ。せっかくだからいつも着ている装備で居たいでしょ。アラクネとかいうのにアルセのテイムを炸裂させるわ。それでこの針とアルセの蔦で服を作って貰いましょ」


「そろそろ街の前に屯ってる皆さんも待ちくたびれているでしょうし」


「アルセがどっか行きたそうにしてたよな。ついでに行きません?」


 セキトリ君がようやく口を開く。

 今まで口を出していなかったのは、おそらくアカネさんに絡まれたくなかったからだろう。


「そうねぇ。じゃぁ戻りましょうか」


「あの、唯野さん、もし御暇でしたらもう数日ご一緒しませんか? 闘いに付いても色々お教えできると思いますし、なんだかここで分かれるのは忍びないというか」


 あはは。とリエラさんが言葉を濁す。

 分かっております。今、あなた方と分かれれば、私は確実に路頭に迷うか、城に戻って泣き寝入りしか出来ないでしょう。

 でも、私は決意と共に出て来たのだ。魔物を倒す術を持たなくとも倒した瞬間吐いてしまって役に立たない存在であったとしても、せめて彼らに教わって、生きる術だけでも身につけたい。


「皆さんがよろしければ、私の方から是非、お願いいたします」


「はい。では今日から頑張りましょうね。お互いに、大切な何かを守れるように」


 大切な……にこりと微笑むリエラさんの顔が、一瞬、在りし日の静代の笑顔に重なった。

 とても綺麗な彼女と結婚する事になった時、あの日静代が言ったのだ。二人で幸せな家庭を作ろうと。そしてソレを守れるようになろうと。誰にも知られずとも、私は静かに決意する。ああ、守ろう。もう、これ以上家族をばらばらにはさせられない。


 アカネさんに付いて行き、私達は街を出る。

 皆さんと合流し、アルセちゃんを先頭にして歩き出す。

 今回の目的はアラクネの捕獲、私の防具作成、アルセちゃんの目的場所への到達、最後に、新人の戦闘指導。だそうである。

 最後の新人の戦闘指導には私も含まれている。


「ひぃっ」


 アルセソードという武器を渡され、それなりに丈夫なアルセイデスのアイヴィアーマーという武装を装備した私は、リエラさん達の目の前で無様に転んだ。

 目の前に居るのは一体の魔物。耳掻き狐である。

 二頭身くらいにデフォルメされた狐で、二足歩行で自分の耳にボンボン付きの耳掻きを突っ込みながら歩いている。


 時折、とれたぁ。といった様子でまあるい目玉を潤ませて喜んでいる姿が可愛いらしい。

 ただ、攻撃時は耳掻き用に使っていた棒を振り回して来るのでそれなりに強い。

 今回も、私に向って耳掻き棒を振り回しながら迫って来ていた。


 剣を振るだけのはずだったのだが、やはりにっちゃうとは違い攻撃してくると分かってしまうと恐怖が身体を支配してしまう。

 ひぃっと身を竦ませたその瞬間、リエラさんが割って入って耳掻き狐を切り裂いた。

 娘くらいの年頃の少女に守られる53歳の男。我ながら泣けてくる。


「大丈夫ですか?」


「しっかりしろよおっさん。怯えてたら殺されるだけだぜ」


 同じく一人で耳掻き狐と闘っていた少年コータが私をなじる。事実その通りなだけに反論など全くできない。彼も散々に打ちのめされていたのはなかったことにしているようだ。

 しょげかえり肩を落とす私に、処置なしか。と言った顔で溜息を吐く少年。


「うーん。怯えなくするにはどうしたらいいのかなぁ?」


 リエラさんも困り気味だ。だが、仕方無いではないか、私は50年間殺し殺されるなどといったことなく企業戦士として闘っていたのだ。

 そもそもがこの身体で魔物と闘うというのがおかしい話なのである。

 そうだ、私が出来ることならむしろ内政の方が……


「リエラ、ちょっと……」


 アカネさんに招かれリエラさんが離れる。

 私には闘いは向いていない。そう告げるタイミングを逃してしまった。

 アカネさんの元にチグサさんも集まり、アルセちゃんやルグスという名の骸骨の魔物、ローアさんまでが円陣を組んで内緒話を始める。


 彼らは仲がいいのか? いや、そうでもなかったように思う。

 少ない時間ながら観察していた私からすれば、ルグスさんは基本猫の世話、ローアさんはセキトリ君に構っていたし、チグサさんはケトルさんとほぼ共にしていた。

 では、彼らが集まり話し合いを始めるのはどういう理由からなのだろうか? ああ、いや、そうだ。彼らは私のように異世界から来たメンバーだ。同じ境遇な彼らが意見を出し合い私にあった育成方法を考えてくれているのだろう。

 やがて、話を終えた彼らが散って行き、リエラさんだけが私の元へとやって来た。

 耳掻き狐

  種族:魔狐 クラス:ミニフォックス

 ・いつも巨大な耳掻きを持っている二頭身の狐。目が大きく、耳掻きをするのが大好き。大きいのが取れると、眼を潤ませて「とれたぁ」みたいな顔になる。

  耳掻きを攻撃手段に用い、棍棒のように使う。耳掻きは、上がボンボン型とコケシ型の二種類がある。

 ドロップアイテム・狐肉、狐の毛皮、耳掻き


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ